栽培ことはじめ |
◆◆◆ これから栽培を始められる方はぜひご一読を! ◆◆◆
野菜づくりの楽しさ
育てる楽しさ
自分の育てている野菜が成長していく様子を見るのは、とても楽しいものです。蒔いた種から芽が出る、陽光を浴びてすくすく育つ、葉を広げ花が咲き実がなる。その生命力にはしばしば感動させられます。発育が旺盛な時期には日々目に見えるほど成長するので、毎朝・毎夕の観察が楽しみになります。
収穫の楽しさ
言うまでもなく収穫の喜びは格別です。収穫の適期を見極めるのが難しい野菜もありますが、試し採りや時期を見定めての収穫。鮮度の高いトマトのみずみずしさや、取り立てのトウモロコシの美味しさは例えようがありません。自分が育てたという満足感もさることながら、太陽・土・水・風など自然の恵みに感謝したくなるのが収穫です。
工夫して試す楽しさ
野菜が育ちやすいような環境を維持する、問題が起きたときの対処方法を考える、大きさや収量を増やすための対策を練る等々、栽培については様々な工夫の余地があります。工夫をこらし成果を期待する、そして実際にどうなるかを確かめるのも楽しいものです。まったく新しい野菜を栽培して、その育ち方や収穫・味を期待し試してみるのも、私的な栽培の楽しさと面白さです。
なぜプランター栽培なの?
いきさつ
2006年のはじめ、書店でNHKのテキスト「コンテナ菜園を楽しもう」を手にしたのがきっかけです。その昔、庭に小さな菜園を造ろうとしたのですが、大きな石ころが多くて手に負えず諦めていた経緯がありました。それが、プランターを利用すればすぐにも野菜づくりを始められる、私にとってこれは大発見でした。このテキストの講師は藤田智さん。前年に放送したものだったので、肝心のテレビ講座を見ることはできなかったのですが、テキストの内容は大変参考になりました。
当時は仕事に追われていて、とても野菜づくりどころの状況ではなかったのですが、生き生きとした作物の姿(写真)が頭から離れない。結局、テキストに書かれた内容をもとに、用土や必要な資材の購入など、近所のホームセンターに足を運ぶことになりました。
メリットとデメリット
まずメリットから。何といっても始めやすいことが一番でしょう。日当たりと風通しのいい場所さえ確保できれば、プランターや鉢ひとつから栽培を始めることができます。そして、毎回新しい土を準備するなら、同じ野菜を繰り返し栽培すると問題になる「連作障害」も気にする必要がありません。さらに、ポータビリティがいいので環境に応じてプランターごと移動して、日照時間の調整や台風などに対処することが可能です。近場で栽培すれば観葉植物のように楽しむこともできるでしょう。
反面、小さな容器で栽培するため地力に制約を受けます。つまり、栄養不足などにならないよう育成の規模やサイズを調整することが必要です。また保水力が弱いので、水不足が起きないよう注意することも必要になります。
私の栽培環境
岡山県南に位置しており、雨や雪が少なく晴れの日が多い地域です。温暖で、種蒔き時期の地域分類では「中間地」にあたります。寒地や暖地で栽培する場合には、種蒔きや植え付けの時期に注意してください。
そんな地域の、大規模住宅団地に立地する小さな家の小さな庭が舞台です。芝生と雑草が共生する庭に、レンガを置いて水平を出し(地面のデコボコや傾きを補正して)、その上にプランターや鉢(ポット)類を設置しています。
街路や家々の庭に樹木が多いので、小鳥がたくさんやって来ます。それは嬉しいのですが、スナップエンドウなどの新芽をついばむので油断できません。
野菜づくりの準備
場所選び
先にも述べましたように、日当たりと風通しがポイントになります。多くの野菜は十分な日照時間(6時間程度)が必要になります。しかし葉菜類では、柔らかく育てるために半日程度が好ましいものもあります。これを見極めて場所を決めましょう。
風通しの良否は病虫害の発生に関係します。風通しが悪いと害虫が繁殖しやすく、病気にも罹りやすくなります。できるだけ風通しの良い場所を選ぶと同時に、栽培時には必要以上に枝葉が繁らないように剪定することも大切です。
道具・資材揃え
ここでは必要最小限の道具と資材を掲げておきます。
①容器
軽くて移動しやすく安価なプラスティック製がお勧めです。栽培する野菜に応じて、標準プランター(用土量15L程度)、深底プランター(同20~25L)、10号丸鉢(径33cm深さ27cm)などを使い分けます。標準プランターのサイズは、長さ65cm奥行22cm深さ18.5cmですが、私は少し幅が短く底の深いもの(55x24x25cm、底サイズ50x16cm)を標準としています。また深底プランターとしては50x26x30cmのものを使用しています。
用土量が大きいほどゆったり大きく育てることができますが、重すぎて移動できないようでは困ります。またプラスティック製の他に、木製や素焼きのデザインの良い容器もあります。発泡スチロールの箱に排水用の穴をあけて使うと生育が良いという話も聞きますが、まだ試したことはありません。
②スコップ
プランターに土を入れるためのものと、植え付け穴を掘ったり溝を付けたりするための小さな園芸用のものがあれば便利です。
③ハサミ
葉や枝を切り取ったり、実を切って収穫する時に使います。切れ味の良い清潔なものを用意しましょう。
④水やりホース
庭に沢山のプランターを並べて栽培する場合には、これがあると助かります。
⑤ジョウロ
水やりに使います。
⑥鉢底石
鉢底石の使用については要・不要の議論もあるようですが、水はけを良くして根腐れを防ぐのが目的なので準備しておきましょう。1袋に5Lとか10L入ったものが販売されています。
⑦誘引ヒモ
枝を真っ直ぐに成長させるため、あるいは枝どうしが絡み合わないように誘引するために使用します。麻ヒモがあると便利です。
⑧支柱
支柱にはさまざまな長さのものがあります。個々の野菜の支柱づくりを参考に準備してください。およそ50cmくらいから2mを超えるものまであります。苗を植え付けて間もない頃は、風などで倒れないように丈の短い仮支柱を立てて麻ヒモで誘引します。仮支柱には、長さが50cmぐらいの細竹を準備しておけば重宝します。
⑨ふるい
主に用土のリサイクル作業で使用します。使用済みの土から石や根っ子などの残滓を取り除くための道具です。
⑩種蒔き用資材
エンドウやゴーヤ、ソラマメなどの種はポットに蒔いて育てると発芽率が良くなります。ここで重宝するのが9cmのビニール製の角形ポットで、縦横6x4個、合計24個が連なっています。価格は100円前後で、これといっしょに収納トレイを購入しておくと、管理が楽になります。
さらに、「タネまきの土」などの名前で販売されている(1袋2~5L入り)種蒔き用土の利用をお勧めします。消毒済みで清潔であり、保水性・排水性を考慮した土類が調合されているので発芽率が向上します。
土つくり
栽培でもっとも大切なのが土の準備です。簡単なのは「花と野菜の土」など市販の栽培用土を購入する方法です。あらかじめ生育に必要な肥料なども含まれているので、手間をかけずに済みます。
しかし、野菜の種類によってピッタリな土を準備できれば、より良い生育を期待することができます。個々の野菜づくりについては、どのような用土を準備するかを示しています。これには次の種類があり、それぞれのブレンドの目安を示しておきます(これは先のNHKテキストに準拠しています)。
①葉菜用土
・赤玉土 50~60%
・腐葉土 30~40%
・バーミキュライト 10~20%
・石灰と化成肥料 用土1リットルあたり1~2g
②根菜用土
・赤玉土 50~60%
・腐葉土またはバーミキュライト 20~30%
・砂 10~20%
・石灰と化成肥料 用土1リットルあたり2g
③果菜用土
・赤玉土 40~60%
・腐葉土 30~40%
・バーミキュライト 10~20%
・石灰と化成肥料 用土1リットルあたり3g
④イモ類用土
・赤玉土 40~60%
・堆肥 20~30%
・腐葉土 20~30%
・バーミキュライト 10%
・石灰と化成肥料 用土1リットルあたり1g
以上は新しい資材を利用する場合の基準です。いちど使用した土を再利用する場合は、「用土のリサイクル」に従います。
用土のリサイクル
収穫が終わったプランターや鉢の土は、根や残滓などを取り除いて再利用します。資源のリサイクルという意義もさることながら、用土の費用を低減するためにも重要です。手間のかかる作業ですが、次の野菜づくりに向けた準備と位置づけて頑張りましょう。
リサイクルについてはいろいろな方法がありますが、私は前出のNHKテキストに掲載されている内容にしたがっており、次の手順で進めます。
①乾燥と分別
株を抜き、大きな根やゴミを取り除いてから「ふるい」にかけて残滓や石などを取り除く。
②改良材の混合
ふるった土に米ぬかや油かすを10%程度加え、しっとりとするぐらい水を加えながらよく混ぜる。
③太陽消毒
②の土をビニール袋に入れて密封し、日当たりのよいところに置いて1~2カ月放置する。この間に、土壌微生物によって細根などが分解され、太陽熱で土壌が殺菌される。
④再利用
この用土と新しい用土(玉土など)を1:1に混合し、化成肥料と石灰を1リットルあたり3gほど施す。
こうして、栄養分と土壌酸度を調整してから使用する。
※試行錯誤を繰り返しています!
再利用を手がけると、「土つくり」で示した配合にどう近づけるかかということが問題になります。
決定的な方法はありませんが、配合比率を参考に腐葉土やバーミキュラを適宜混合しながらやっているところです。大切なのは「水はけと通気性のよい土」を作ること。フカフカした香りの良い土づくりを目指しています。
栽培の基礎
種から育てる
苗から育てた方が楽なものも沢山あります。例えばトマト・キュウリ・ナスなどで、これらを種から育てようとすれば温度や水の管理が大変です。時期になると店頭に並ぶ元気の良い苗を買って植え付けるのが無難かと思います。
しかし、ホウレン草・シュンギク・リーフレタス類などの葉菜類や、エンドウ・ソラマメ・ニガウリなどの果菜は種から育てることをお勧めします。手間はかかりますが、発芽から苗に成長する過程に感動すること間違いなし。ある程度まとまった量を育てる場合は、費用的にも割安になります。
プランターの土に種子を直接蒔く場合、次のような蒔き方があります。
・すじ蒔き
板きれなどを押しつけて溝をつくり、手で種子を溝に均等に蒔きます。
・点蒔き
ペットボトルのキャップなどを押しつけてくぼみをつくり、そこに3~5粒ずつ蒔きます。
・ばら蒔き
種子をできるだけ均等にばらまきます。
すじ蒔き、点蒔きではどの程度の深さにするかが野菜の種類によって異なります。また土をどの程度かぶせるかも異なります。これらは個々の野菜の栽培情報を参考にしてください。
水やりの方法
まず種蒔き後の水やりですが、土の表面が乾かないように1日数回水を与えます。ジョウロでやさしく散水しますが、小さな種子に土を浅くかぶせている場合は、表土が散らないように霧吹きで水やりします。
苗の状態に成長してからは、表土が乾いたらたっぷりと、底から水が流れ出るくらいまで水やりするのがコツです。根を深くしっかりと張らせるためには、水が底まで浸透している必要があるためです。また表土が乾かない状態での水やりはやり過ぎになり、過湿による根腐れの原因になるので注意します。
プランター栽培では用土の量が限られていること、さらに水はけのよい土を使うので水不足になりやすいことに注意しましょう。夏の暑い日には1日に2回の水やりが必要なこともあります。
肥料の種類と使い方
大きく分けると有機肥料と化学肥料があります。
有機肥料は腐葉土や魚かす、骨粉、油かす、米ぬかなど有機質を含むものです。土壌改善効果もあるため元肥として使われます。じっくりゆっくり効く緩効性ですが、1カ月ほどで吸収されてしまうので追肥が必要になります。
化学肥料は効きが早いのが特徴です。チッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)を各々8%ずつ含んだ8-8-8や、15%ずつ含んだ15-15-15などがあります。粒状で追肥に利用します。株が小さいうちは株のまわりに追肥し、株が大きくなると根も広がるので株から離れた位置に追肥します。
葉菜類はNの多い肥料、根菜類はKの多い肥料、果菜類はバランスのよい肥料が適しているので、N・P・Kの配合比率が異なる肥料を選ぶこともできます。また速効性のある液体肥料を500~1000倍に薄めて使用する方法もあります。
プランター栽培では水やりによって養分が流出しやすいので、栄養不足にならないように追肥しなければなりません。いっぽう化成肥料のやり過ぎは「つるぼけ」などの症状を起こしやすいので、『施肥は生育状態をよく観察しながら行う』ことが大切です。
病害虫予防と対策
この点はもっとも対応が遅れています。積極的に対応しているのは、
・日当たり、風通し、水はけをよくすることで病気に罹りにくくする
・虫は見つけたら捕殺する
といったことだけです。昨年はアブラムシの繁殖がひどくて手に負えなくなり、初めて住友化学園芸のベニカマイルドスプレーを使用しました。「食品から作られた野菜や花に安心して使える自然派志向の殺虫殺菌剤」というキャッチフレーズに納得したからです。
寒冷紗などの防虫ネットで物理的に害虫の侵入を防ぐ方法は、費用と手間の関係で手つかず。無農薬を旨としているので、上記のことは例外であり、もっぱら箸や粘着テープで捕殺するのみの状況です。
栽培関連用語
・間引き
発芽後に、混み合っている苗を抜いたり切ったりして苗間を広げる作業。
・定植
その後は動かさない場所に植え付けること。
・支柱立て
ツルを誘引したり茎を固定したりするための支柱を立てること。30cm程度の仮支柱から、キュウリなどは2mの長いものも用いて、用土にしっかり固定する。
・わき芽欠き
枝の途中に出る芽を切り取ること。
・摘心