
1.乗鞍高原へ向けて
昨日の雨が嘘のようだ。好天に恵まれてルンルン気分で出発。
新島々に到着するとかなり寒く、シャツにベストだけではふるえてしまう。
8時5分発の白骨温泉行きシャトルバスに乗りこみ、発車前の車内で急遽着替え。最後部座席で下着1枚になり、あらためて長袖のTシャツを着込んだ。相棒も手際よく1枚追加だ。
初めての訪問地であることに加えて、バスが到達できる国内最高の海抜であり未体験ゾーンであることから期待が高まる。
バスが出るとすぐ、右側に旧島々駅舎が見えた。


かくして快調に出発。
ところが、道中で車掌の外部連絡が急に頻繁になり、何か様子がおかしい。
しばらくするとアナウンスがあり、昨日の雨で山頂への路面が凍結しているため、乗鞍高原観光センターから畳平へのバスが運行を停止しているとのこと。周囲からため息がもれる。
その後も逐次無線連絡が入り、10時発の山頂行きが出発できるかどうかは9時20分頃に分かるとのアナウンス。
乗鞍高原観光センター前には9時頃到着。バスを降りると乗鞍岳がはっきり見える。
外気は5℃前後で岡山なら冬の寒さだ。今回の旅では始めて、リュックの奥の上着を取り出して着込む。
結局10時発の便は運休となり、11時の便も10時半にならないと分からないとのこと。
タクシーで出発している人たちがいたので、付近で情報を収集する。「タクシーで行っても凍結した場所のかなり手前で止めることになる。紅葉を楽しむのなら十分だけれど登山はムリだ」と運転手が説明している。
畳平が目的なので、これではどうにもならない。
見込みが立たないバスを待ってはいられないので、後半に予定していた乗鞍高原散策を前倒しすることにした。もし昼過ぎまでに凍結が解除されるようであれば、13時の便で上がればいい。


2.乗鞍高原散策
事前に散策ルートを調べていたのだが、熊の出没注意が出ており予定を変更。白樺の小径を歩くはずが、車道とサイクリングロードを選んで歩くことになった。もちろん、二人とも熊避け鈴を付けてである。


色づき始めた木々がとても美しい。一の瀬園地に向かっていると時々車とすれ違うが、歩く人の姿はまったく見えない。熊注意報が原因ではないかと思わず身構える。


観光センター前から40分ほど歩いて一の瀬園地入口に到着。中部山岳国立公園・乗鞍高原国民休暇村の表示がでている。
初秋の風景が広がる素晴らしいエリアだ。それにしても人がいない。

一の瀬園地に入っていくと「ネイチャープラザ一の瀬」があった。ゆっくりとコーヒーなどをいただきたい雰囲気なのだが、時間が限られているので横目で見送る。

時が静止したような美しい小川と木立だ。

一の瀬園地を歩む途中で、立派なカメラをかついだ何人もの人に出会い、車道沿いの紅葉が素晴らしいのでぜひ行くといいと勧められる。この出会いが縁で、予定のコースから外れた場所で、秋を先取りした紅葉の風景をゲット。人からのホットな情報は大切だ。二日がかりで撮影しているという御仁から、昨日の一雨で色づきが進んでいっそうきれいになったと教えられる。




白樺の林の向こうに乗鞍岳が見える。次第に気温が上がっているので、きっと山頂まで行けるだろうと期待が膨らむ。

すぐ近くで、相棒はケータイで風景をねらっているようだ。


ゆっくりと紅葉を楽しんで元のコースに戻り、次のポイントである「あざみ池」に向けて小梨の小径を進む。
ところが、進路の左に見えるはずの池が右側に現れた。標識で「あざみ池」に間違いないことは確認できたが、どうも変だ。
しばらく進むが、しだいにコースから外れていくように思えてくる。ガイドブックのマップに記載されている標識やコメントから、見当違いの方向(おそらく一の瀬キャンプ場)に入り込んでいるらしいことがわかり引き返す。


あざみ池から牛留池の方へ周回したかったのだが、けもの道のような細道しか無いようで、熊出没を考えるとそちらへ進むのは問題がある。
時刻が正午に近づいていることもあって、結局、安全なもと来た道を引き返すことにした。
しかしその途中で、ペンション風の建家の庭に熊がいるのを発見して立ち止まる。数百mの距離があったので、双眼鏡で観察するがいつまで経っても動かない。近づいて剥製であることが判るまでの長い時間と恐怖、冗談にしてはひどすぎる。
観光センターに到着すると、11時の便から運行可能になっており、13時の便に乗るべく往復乗車券を購入。センターの食堂・喫茶で、ざる蕎麦の昼食をとる。山菜を細かく刻んだ薬味が絶妙だった。
3.乗鞍畳平〜魔王園地
乗鞍スカイラインは紅葉の真っ盛り。これはもう、息を呑む美しさだ。
たくさんのサイクリング車がスカイラインを駆け下りてくる。カメラやビデオを持っている人たちも多く、こんな撮影方法があったのかと唸ってしまう。絶景ポイントではカメラの砲列ができている。頂上から下りながら、あるいはバスを途中下車して撮影しているのだろう。最終的には途中のバス停で乗車しなければならないのだから、満員なら次までやり過ごす覚悟がいるわけで、これは敬服ものである。




頂上に差しかかると、まず鶴ケ池が目に入り、続いて畳平バスターミナルと周辺の建物が見えてくる。


これが畳平バスターミナル。2009年9月19日午後2時半頃、ここにツキノワグマが現れ観光客を襲って9人が重軽傷を負った。
こんなところに出没するとなれば、安全な場所なんてないのでは?クマッたことだ。

限られた時間に精一杯歩きたい。魔王岳の方にたくさんの登山者が見えるので、そちらへ向けてレッツゴー!


階段を上っていくとどんどん高さを稼げる感じで、10分ほどでこの通り。


さらにもう5分ほど登ると魔王園地(標高2,761m)。ただ、畳平の標高が2,702mなので、登ったのは差し引き59mだった!

そしてここは魔王岳(2,764m)の手前なのだけれど、魔王園地で十分満足。右のコースを少し登れば魔王岳だが、岩にしがみついている姿を見ると、もうここでいい〜!

魔王園地からの眺望は絶景。下には畳平が広がり、左には富士見岳、中央遠方に3,026mの乗鞍岳剣ヶ峰が望める。
焼岳や穂高も見えると聞いていたが、その方向はガスに覆われていて視界がきかなかった。

左には乗鞍岳の峰々(剣ケ峰、蚕玉岳、朝日岳)、右には魔利支天岳の乗鞍コロナ観測所が見える。

乗鞍スカイラインを走るバス。かなりガスがかかって来た。

4.乗鞍畳平と帰路
魔王園地から降りて畳平で落ち着く。有名なお花畑はシーズンオフなので今回はパス。

ガスがかかってきたので、取り急ぎ周辺の建物を撮影する。一万尺売店では、木製の絵はがきとお土産少々(味噌とネギ味噌せんべい)を買った。




建物を写した3分後にはこの有様。にわかにガスがやって来て急に視界が悪くなる。


15時5分のバスを待つ間に、乗鞍食堂で「おやき」を買う。寒い中でバスを待ちながら、熱々野沢菜が入ったのをかじる。これは最高に美味い。
そして帰りの車窓からは、色とりどりの紅葉風景に眼を奪われる。






バス停がある標高2,500mの位ケ原山荘で、数人の登山姿が乗り込んできた。こんなところに宿泊してゆっくりできたら最高だろうなぁ。

車窓からの最後の2枚はピンボケだが、ナナカマドの紅葉が心に焼き付いた。

