1.南海電鉄紀見峠駅~越ヶ滝
南海電鉄難波駅で南海高野急行「橋本」行きに乗って42分、紀見峠駅に到着した。独り歩きは自分だけのようで、他に3グループが下車した。すでに歩き始めている2つのグループの後を、やや距離をおいてスタートする。女性5人組はまだ準備中のようだ。
駅を左に進むとすぐに踏切があり渡る。その先の三石山と岩湧山の道標を右折する。
前のグループと少し距離が縮まった。先頭は男女の二人連れ、その後を男性4人組が行く。南海高野線の紀見峠トンネルを見て、道は左へ曲がる。
そうだ、このあたりは金剛生駒紀泉国定公園だった。ここからしばらく、渓流・根古川沿いを歩く。
舗装された越ヶ滝林道を進む。左下に渓流の音、道ばたにはドクダミが白い花をつけている。
小さな橋を渡って根古川は右に変わる。先日来の雨のためか流れが速い。もう一度、小さな橋を渡る。
賑やかな道標だ。ダイトレ(ダイヤモンドトレール)標識の上部には、「経塚、第十七番経塚」の他に「葛城二十八宿への道」とも記されている。帰宅後にネットで調べてみると「役小角が法華経八巻二十八品を埋納したとされる経塚」とある(Wikipedia)。和泉山脈から金剛山地の山や、その付近の寺社を中心に二十八ヶ所の経塚があるそうだ。
越ヶ滝の休憩所小屋に着いた。この近くに滝があるのだろうが、今回は見送って山側へ入って行く。
2.三合目~根古峰~五ッ辻
さっきライトブルーの青年が走り抜けてビックリしたばかりだが、今度はグレーのお兄さんが挨拶して駆け抜ける。おおッ、ため息が漏れますなぁ。車のスリップ止めを施した道をかなりゆっくりしたペースで進んでいた皆さんは、彼らを羨ましそうに眼で追っている。
階段になって、いよいよ三合目までの急坂が始まった。高度差は200mばかり、男性4人組が休憩モードになったので自分もいっしょにひと休み。信州の山歩きのことなど古い話に花が咲いているのだが、それにしても休憩時間がちっと長すぎない? ああ、とうとう後発の女性5人組がやって来て追い越していった。
曇ってはいるが緑が美しい。それに見入っていたのだが、そのまま時間が止まりそうなので、男性4人組には「お先に失礼!」。いきなり、溝にゴロ石が重なる坂が待っていた。
続く梯子のような階段、そして急な木段
それから15分、やっと追い越していった女性連の背中が見えてきた。休むことなく、ゆっくり粘り強く登る姿を前にすると、女性には敵わないと素直に思う。追いついて5分ばかり、次の道標が見えてきた。
ついに三合目に到着した。残す標高差は約250m、これを水平距離3kmでこなすのだから楽な筈。先着の女性たちは立ったままで、何やら勢い込んで食べている。やがて男性4人組もやって来た。自分はチョコレート一片を口に放り込んで、お先に~!
先ほどよりやや緩いが長い階段が待っていた。苞が枯れたマムシグサが一本、もうしばらくすると少々気味悪い赤い粒々の実をつける。
三合目から合流したダイヤモンドトレールは、とてもよく整備されていて歩きやすい。先々の疲労を心配しなければ駆け出したいようなコースである。所々にベンチが設置されていて、道標も分かりやすい。
ウォーキングモードでも速度が上がる。しかし、こんなヤマアジサイに出会うとしばらく足が止まる。
標高749mの根古峰に着いた。北側に三角点があるはずだが、時間に余裕を残しておきたいのでパスして直進。時刻は11時37分、青空が広がってきた。
迷いそうな分岐もあるがさりげなく立つ道標。これを見落としてはならない。そこここに御影石に刻んだ「ダイヤモンドトレール」の石柱が立っている。
これは迷いやすい分岐の一例。よく見ると右肩に道標が立ち、上の道に導いている。
舗装道路に飛び出して右折の道標。大きなバイクが3台駐車していて山スタイルの挨拶。バイクジャケットに身を固めたライダーが休憩中で、間もなく手を振りながらスタートしていった。
岩湧山と南葛城山の分岐を通過する。その先の岩湧山の道標を再確認して、やや薄暗い道へ入って行く。
杉林を縫って細道が延びる。白いのはアカショウマだろうか。
階段の向こうに「五ッ辻」の標識が立っている。標高754mのスペースにはベンチが設置され、東西のトレールに南北3本のルートが合流している。
3.東峰~岩湧山山頂
ここまで周囲をくまなくウォッチしていたが、ようやくその時が来た。進行方向右手の木の前に、ピンクの花が咲いている。ついにササユリと対面だ。
その先にも別の1本。光線の関係で写真は白くなってしまったが、紛れもなく淡いピンクのササユリである。何とも可憐にして優雅な姿である。カメラを構えている後を、先の女性5人組が追い越して行く。何本も道標が立っている場所に差し掛かった。
「いわわきの道」への分岐である。右折側に「岩湧寺」の表示がある。木立の間から、その方向に河内長野市、富田林市を展望できる。
杉林に延びる平坦な山道を行くと右側に展望台らしき場所があったが、木立に閉ざされて眺望はきかない。
ダイヤモンドトレールの石柱があり、丸太の長~い階段になった。オヤッ、上の方をさっきの女性5人組が登っている。
ひっそりとフタリシズカの姿。緩やかな階段をもうひと登りする。
階段の間で踏みそうになったのはタツナミソウかな? 東峰に着くと、くだんの女性たちがリュックを下ろして休憩中。やっと追い抜いたぞ!
急坂の下に屋根が見えてきた。下りると、そこは東峰と岩湧山山頂を結ぶコルになっていて、山小屋かと思った建物は立派なトイレだった。
山頂へはススキの丘をひと登りする。茅で覆われている尾根や山腹は山岳用語で「カヤト」と呼ばれるが、この一帯はまさしくカヤトの丘である。文化庁が「茅の森」の解説板を設置している。
山頂に至る階段はササユリのオンパレードである。終わったもの多いのだが、まだ蕾のものも。最高の時期に訪れることができてハッピー!
茅の間から、負けずに咲いているオカトラノオとアザミの花。
花に囲まれて疲れを覚えることもなく山頂に到着した。三角点にタッチする。
ハイカーたちは西隣の山頂展望台でくつろいでいるので、山頂はとても静かだ。北側にはパノラマが広がっている。
ダイヤモンドトレールの岩湧山標石には滝畑まで4.0kmと刻まれている。道標を滝畑方向に進めばすぐに山頂展望台だ。
4.山頂展望台~カキザコ~新関屋橋登山口、そして帰路に
360度の大パノラマが広がる展望台。大勢のハイカーが集い、あちこちで湯を沸かすガスバーナーが音を立てている。ガスに霞んではいるが北の遠くにPL平和祈念塔が見える。
北東に連なる金剛山地を眺めながら、5時起きで用意してくれた愛妻弁当を開く。
昼食が終わったころ男性4人組がやって来た。食事が終わったら三合目まで戻り、そこから別ルートで天見(あまみ)方面へ下山するとのこと。自分は滝畑へ下りることを告げ、エールを交換して別れる。
西下に滝畑方面が見えるので、滝畑ダム湖へズームで寄ってみた。ほんのわずかな距離に思えるのだが・・・。
岩湧山頂の標石をカメラに収めて滝畑へ下りにかかる。
素晴らしい山並みの風景。秋ならカヤトが黄金色に包まれるのだろうが、この季節の緑も実に美しい。ここから滝畑への下りもダイヤモンドトレールが続いている。正面の遥か向こうに見えるひときわ高いのは三国山だろうか。階段を、駆け出してしまわないように下山開始だ。
これは何だろうか。山道の一角、南西側にリフトが設置されていて遥か下までケーブルが延びている。近くの道標の下には「ハバヤマボクチおよび山野草の保護にご協力を」のプレートが取り付けられている。
余談ながら、ハバヤマボクチ(葉場山火口)は秋になるとアザミのような花をつける。アザミと違って花を下向きにつけるのが特徴。葉の裏にはえている綿毛が、火打ち石から火を移し取るホクチ(火口)として使われたのが名前の由来とか。
その近くにウツボグサを発見! 走りたくなるような階段を快調に下りて行く。
見通しの良い場所に出ると前方を何人も下りている。杉林に着くと、皆さん同じグループの人らしく、10人ばかりが最終メンバーの到着を待っている様子。「お先に!」と通り越す。カヤトが終わり、その先からは根っ子が張りだした杉林の道になる。
しばらく進むが、まったく人の気配がなく道標にも出会わないのでいったん停止する。しばらくすると女性二人連れがやって来て、滝畑からの往路を引き返しているのでこの道に間違いないと聞き安堵する。先ほどのグループは別のルートに向かったとのこと。しばらく進むと、コースのチェックポイントと考えていた送電鉄塔に着く。
送電線路に沿ってジグザグに下りて行く。このルートも途中何カ所かにベンチが設置されていて、小休止しながら歩くことができる。
山道の左に茅の茂みが現れ、見送るように咲いているササユリ。そしてまた杉の道に突入だ。
ダイヤモンドトレールの石柱が立ち、根っ子道が現れ、左が切り落ちた細道に変わる。足を取られないように気をつけながら急ぐ。そしてカキザコに到着した。この地点は直進してしまわないように注意していたが、その心配はなかった。直進方向には進入禁止のロープ(禁止と書かれてはいないが、黄と黒を撚り合わせたロープ)が張られていた。ここを右折して、滝畑への進路は北に変わる。
何やら分かり難い写真になってしまったが、これはホタルブクロだ。その先で、後を歩く女性二人連れを待ち、山の話などをしながらゆっくりと下りる。岸和田市から車で来て、よくこの周辺の山々を歩き回っているらしい。そのうち川の流れが聞こえてきて、やがて路面が舗装に変わった。
この先、ダイヤモンドトレールはゴールの施福寺がある槇尾山へと続く。我々3人はアジサイが咲く新関屋橋の登山口へ下り立つ。二人と別れ、予定よりかなり早く着いたので、滝畑観光農林組合の喫茶に落ち着いて冷たいコーヒーで喉を潤す。
時間を見計らってバス停へ移動する。新関屋橋の下を流れる石川の河原にはテントが並び、家族連れやグループがキャンプを楽しんでいる。バス停は緩い左カーブの路の向こうなので、余裕をもって10分前には移動を始めた方が良い。
滝畑ダムバス停に着いた。ハイカー十数人が乗車して定時の16時19分に出発する。
カヤトが終わったあたりから別ルートに消えた10名ばかりのグループが、しばらく先のバス停で乗り込んできて満員状態。約50分で河内長野駅に到着した。
<まさかのハプニング>
すべてが予定どおりにはかどって余裕の帰路、大阪駅の売店で入手したちょっとハイグレードな缶ビールを抱えて、18時30分の新快速に乗車した。ところが、次の尼崎駅でアナウンスが流れて「六甲道駅で人身事故が発生して運転を見合わせます。運転再開は19時40分頃の予定です」。毎回、なんでこんなに事故と遭遇するのだろう。グイッと飲むはずのビールをチビチビと喉に流しながら、辛抱強く1時間は車中で読書タイム。
予定どおり運転再開したが、西明石から姫路まで各駅停車に変更となり、再び長~い読書タイムの継続。結局、姫路駅からの最終便で帰ることになった。いつ、どんな状況でも楽しく過ごせる準備はしているのだが、ハードな歩きの後に遭遇する事故には、ホトホト疲れました。