1.私市(きさいち)駅から岩場の階段へ
JR河内磐船駅から京阪高野線・河内森駅へ移動して乗り換え、およそ2分で私市駅に到着した。
駅の正面に道標があり「月輪の滝、くろんど池」の方向に向かって歩き始める。
今日の暑さは半端でない。ビリビリするような日射しに傘をさす女性も! しばらく道標がないので不安になりながらも前進し、途中に出会った近辺の人に確認して一安心。
私市駅からおよそ20分、車両通行止めのバーのようなものを越えて左折すると、岩場を登る階段が待っていた。
2.尺治川から渓流を渡って府民の森事務所へ
岩場の階段を登る。いきなり良い雰囲気になってきた。
交野市内の山で「カエンタケ」という猛毒キノコが見つかったそうである。触るだけで皮膚がただれるので要注意だ。尺治川を渡りさらに登って行く。「尺治の翠影」と呼ばれるにふさわしい風景が展開される。
巨大な岩が現れ、それを巻くように頑丈な階段が設置されている。階段の半ばから振り返えると、巨岩が動物の顔のように見える。
引き続きよく整備された階段を登りながら、月ノ輪ノ滝を通り越してしまったことに気付く。登っていく先々で渓流に出会うと、渓流が下から上へと付いて来ているような、不思議な感覚になる。
湧水が岩場を滑り落ちている。その先の道から奥まったところに洞窟がある。
岩場へ踏み込んで初めての道標があり「くろんど池」へと進む。鬱蒼と樹木が茂る道は快適だ。
これは砂防堰堤だろうか? 落ちる水の音が涼やかだ。くろんど園地に近づくとカラフルな道標が立っている。「月輪滝」「京阪交野線私市駅」と、歩いてきた方向を指している。
石積みの階段を登る。黄色い可愛いのはミツモトソウのそっくりさんかな? ミツモトソウは裏の萼片がはみ出して見えるはずなので、しかとは判らない。
平坦な道に出るとすぐ、方々を向いた道標が並び立つ。ここは直進する。
すいれん池に着いた。大きな鯉が泳いでいる。小さいのもいっぱいいて、これはウグイだと同行のMさん。ちょうど睡蓮の花が咲いていた。
府民の森事務所(くろんど池休憩所)に到着した。オープンスペースにベンチやテーブルが並び、先客で賑わっている。間もなく正午、その一角で弁当を開く。
3.くろんど園地を抜けて交野山山頂の観音岩に立つ
先に出発した10人ばかりのグループに続いて出発する。彼らは道標を右にとって「くろんど池コース」へと消えた。われわれは直進する。
ところでこの「くろんど」、律令制下で天皇の秘書的な役割を果たした蔵人(くろうど)が訛ったものらしい。そもそもくろんど池は、平安時代嵯峨天皇の頃の蔵人職の別荘庭園として造られたものであり、名はそれに由来するとの説がある。
木陰がなくなったので日射しをまともに受けながら進む。ここでも道標がにぎやかに並び立ち、キャンプ場の方へ向かうが暑さで足取りが重い。
カーブの道をショートカットして歩いていたら、花期を終えようとしているアジサイが精一杯咲いていた。府民の森事務所から25分ばかりで「くろんど園地」に着いた。管理棟へ行ってコースのことなどを確認する。
ここには清潔なトイレがあり、周辺はキャンプ場になっている。立派な炊事棟が建っている。あたりは野外活動を楽しむ子供たちで賑やかだ。
少し進むと、橋板を稲妻のような形につなぎかけた「八ツ橋」がある。一帯には落葉高木のラクウショウが自生している。湿地なので、呼吸をするための呼吸根(気根)がニョキニョキと頭(?)を出している。
くろんど園地のゲートを抜けて再び自然歩道を行く。この辺りが傍示峠のはずだ。木陰があるのはほんの一角だけで、間もなく灼熱の中を歩くことになる。
暑いとは言え、まだ田園風景ならば我慢できる。高山里山クラブの案山子が愛想を振りまいているので、我慢して歩く。
車道に出てからがいけない。道標が無いのか見落としたのか、現在地がおぼつかないし、頭上とアスファルトの照り返しのダブルパンチに見舞われながら、水分補給だけを忘れないように前進する。
携行のスポーツドリンクも生ぬるくなり、冷たいものが恋しくなる。そのことばかり考えながら、土地の人から教えてもらった交野カントリークラブ側からのアプローチ道を淡々と歩く。
立派なクラブハウスを横目で見ながら前進、三宝荒神の赤鳥居が見えてきた。これをくぐって山頂へ向かう。
階段を登っていくつも赤鳥居をくぐると、最後の急階段と梯子が待っている。さぁ、登りましょう!!
交野山山頂に到着した。石碑に「交野山古代岩座址」と刻まれている。いわゆる原始神道における磐座と思われるが、それが観音岩を指しているのであれば、ハーケンが打ち込まれているのには驚きである。仲間たちはすでに登って下界を見渡している。
観音岩に立つと、あべのハルカスが見える、比叡山も愛宕山も見える。それに見とれて、シャッターを押すのを忘れてしまった。かろうじて移した1枚は、メタリックなラインが延びる第二京阪道路周辺。
山頂から東に見えるのは、緑に囲まれた交野カントリークラブのクラブハウスとグリーン。
4.いきものふれあいセンターに立ち寄りJR津田駅へ向けて下山
わずかに小休止をとって下山を開始する。いきものふれあいセンターへ向かうのだが、最初は急坂の下りが続く。
ふれあいセンターへの道標があり、10分ほどでコンクリートブロック舗装の道に出た。
ふれあいセンターまで250m、イタドリの小路を進む。途中に、交野山の姿の変遷を示す地形がある。眼前の崩壊は、貫入岩が入り込んだ地層に木の根が入り、雨水が滲み込んで崩れたもの。交野山は長い年月に渡る浸食と崩壊の繰り返しで現在の姿になったという。また観音岩は、約8千万年前に地中で固まったマグマが、地殻変動で約2百万年前から徐々に押し上げられたものだそうだ(以上、写真手前の解説板を要約)。
間もなく白旗池を通過して、いきものふれあいセンターに到着する。二階で交野の地下水「星のしずく、きらり」が入手できると知り購入。冷たいのを、いくつも設置されているベンチで飲む。体に浸み入る旨さ、深呼吸をしながらほとんど飲み干してしまった。怠りなく水分補給してきたつもりだったが、それ以上の量を体が求めていたことを思い知らされた。
ここは絶好の休憩場所で、向こうの方ではゆるりと語らう女性が三人。こんな暑い日には、ここで十分休息することをお勧め。歩き始めると、すぐ先に交野山の地殻変動を示すもう一つの跡が残っている。断層面がこすられてできた粘土層を、すべすべした岩肌(鏡肌と言われるらしい)が挟んでいる。長い期間をかけて繰り返した地殻変動の証と言えよう。
この後、道を国見山の方へ進んでしまい、方向が違うと声かけするが間に合わない。ようやく全員がそろった頃にハイカーが通りかかり、下山路を尋ねる。ここから下山するなら源氏の滝を見て下りるのが良いと言われるが、時間が急いていたこともあり、とにかく津田駅に一番近い道をと話し、サワガニの小路を下りることになる。
当初計画では、ここから源氏の滝を訪ね機物神社へ参拝するはずだったが、この時点で以降の計画はご破算となる。
途中で美しいガクアジサイに対面し、急な坂を下り進んでおよそ15分で車道に下り立つ。
車道に下りてから津田駅までの体感距離は1時間をはるかに超える。またしても炎天下を、水分補給のことだけを考えながら歩く。車が頻繁に通り過ぎる。実際は30分ばかりで駅に着いたのだったが、近くのコンビニに飛び込んで缶ビールを買い、木陰で飲み干して正気を取り戻すまで、時間の感覚を失っていた。
今回の山行、尺治の翠影を始め豊かな涼を感じる場所もあったが、コースの多くは厳しい日射しに曝されてのウォーク。このコース、酷暑は避けるか、近辺まで車を利用すべきと感じた次第。