1.弁天岳登山口へ
高野山へ向かうには南海電鉄の『高野山・世界遺産きっぷ』がお得で、これを難波駅で買った。片道特急券付きの往復切符が4,220円で約17%オフ、高野山内バス2日間フリー乗車券と拝観等の割引券がセットになっている。
極楽橋駅からケーブルカーに乗り換えると、高低差330mを約5分で登り、標高867mの高野山駅に到着する。
高野山駅は耐震補強と改修工事で変わり果てた姿。到着は予定時間より1時間の遅れながら、接続待ちの南海林間バスに乗り込んで出発。7~8分でスタート地点の女人堂に着いた。
かつては「高野七口」と呼ばれ、高野の七つの入り口に建っていた女人堂の唯一の残存建造物だそうで、むかし、女性はここから山内に入ることは許されなかったとのことである(和歌山県教育委員会・案内板)。
その先には「高野山」「金剛峯寺」の大きな石灯籠。女人堂から道を挟んで、これまた大きな大きな銅造りの地蔵「お竹地蔵尊」が鎮座している。穏やかで慈しみに満ちたお顔だが、「お竹」の名前の由来については定かでない。案内板には「安政大地震で亡くなられた人々のために建てられた」と記されている。
弁天岳の登山口は女人堂の向かい、「お竹地蔵尊」右隣のバス停裏にあり、頂上まで0.9kmの道標が立っている。
ここから弁天岳を経て大門までの道は、かつて女人禁制で山内に立ち入ることが許されなかった女性たちが巡った「女人道」の一部である。
2.弁天岳山頂に向けて
バス停裏の階段を登ってスタートすると根っ子道から始まる。山に踏み込んだとたんに「熊出没に注意」の看板があり、このあたりには人気がまったく感じられなく、慌てて熊鈴を取り出す。
根っ子道を7~8分登ると、両側が笹藪に被われる。
間もなく緩やかな道に変わって、「谷上女人堂跡」の案内板と出合う。
谷上女人堂跡を過ぎるとやや急な木段が続く。
短いが急な階段を登ると、弁財天の鳥居が見えてくる。ここが弁天岳の山頂だ。登山口から25分での到着。
弁財天にお詣りして行程の無事を感謝する。傍らに道標があり、大門までの下りは登りと同じ0.9kmと記されている。
山頂からは北の展望が良い。葛城山をはじめとする大阪と和歌山を分かつ山並みを遠望できる。紀ノ川流域の町並みにズームで寄ってみた。
そして三角点にタッチ。付近に萩の花が美しい。ここでにぎやかな熊鈴を外す。
三角点の近くに、アマチュア無線用のレピーターが設置されている。パワーの小さなトランシーバーなどが、広範囲で通信できるようにするための中継局として機能するものだ。
3.弁天岳からの下山
大門へのゆるやかな尾根道を南に向かうと、右手に重畳たる山並みが広がる。
開いたばかりのススキの穂が道ばたを飾る。急坂になると半分だけが木段の道、これは歩きやすい。
途中にはいくつもの鳥居が立っている。急な下り坂をどんどん下りてゆく。
かなり下りたあたりに、鳥居が重層する幽玄の美。そのすぐ先にも「熊出没注意」の立て札があった。
4.大門から奥の院参拝
最後の大きな鳥居をくぐって下り立つと、高野山の総門である大門がそびえている。二階二層門で、高さは25.1mもある。
大門の仁王像(金剛力士立像)は奈良県東大寺の仁王像に次ぐ大きなもの。右側に立つの阿形像は京都の仏師・康意の作、左側に立つ吽形像は京都の仏師・運長の作である。高さはどちらも550cm前後もある。
時刻は13時55分。1時間の遅れを20分までに縮めたが、このまま歩いたのでは帰りのバスに間に合わない。部分的にバスでショートカットせざるを得ないなと考えながら、大門から東の通りに足を運び、愛宕前の交差点を渡る。
壇上伽藍に向かう大門東部の道路を進み、金堂前バス停からバスに乗って奥の院口で降車する。金剛峯寺や御影堂・金堂・不動堂、それに金剛三昧院の多宝塔などを、今回はしかたなくパス。これらはあらためて訪れることにしよう。
一の橋を渡って、司馬遼太郎の文学碑から始まる表参道を足早に歩く。杉の木立におびただしい数の墓碑や供養塔が立ち並んでいる。
数々の戦国大名の供養塔が並び、中の橋を過ぎて行くと芭蕉の句碑。その先に法然上人の御廟所がある。
御供所(ごくしょ)に着いた。水向け地蔵さまには拝礼だけして通り過ぎる。
御廟橋を渡って弘法大師御廟に参拝する。ここから先は撮影禁止。
5.摩尼山山頂へ登る
御供所まで戻って裏の林道へ出る。バスでのショートカットが効いて、ほぼ当初計画の時刻だ。舗装道を林道分岐に向けて進む。
林道分岐が見えてきた。右に直角に曲がり、ここからまた女人道を歩くことになる。道標には摩尼山まで1.5kmとある。
500mばかりはゆるやかな道が続き、やがて林道終点になる。
ここから細い山道に変わり傾斜が増す。林間には霧が漂いまったく人の気配がない。再び熊鈴を取り出す。
さほど大きくない熊鈴の音がここでは響き渡る。林道分岐から20分ほどで摩尼峠に着いた。峠には祠がある。山頂まであと400mほどだ。
峠を過ぎると傾斜がきつくなる。倒木のある道、根っ子道を進んでいると、可愛いドングリ三兄弟が落ちていた。
急に平地になって摩尼山山頂に着く。林道分岐から40分少々での到着だ。
山頂にも祠があり、如意輪観音が祀られている。小さな鐘を打ったら、澄んだ高い音が飛散した。
小さな栗の実ふたつ。女人道はさらに楊柳山(ようりゅうさん)、転軸山(てんじくさん)へと続くが、今回の山行はここから折り返す。
6.摩尼山からの下山
下りは楽々で15分ばかりで摩尼峠。ところがここから右に入るべきを直進してしまう。
すぐ先で「役行者道しるべ」に出合ったにもかかわらず、そのまま直進。案内板に「高野山奥の院と大峰山山上ヶ岳を結ぶ古道の道しるべです」とあったので、安心しきっていたのだ。
そして木立の間からこんな素晴らしい風景が広がる。そのうち「高野三山道」の道標が現れてひと安心。
いきなり舗装道路に飛び出してビックリ。高野山女人道の道標があり「中の橋参道入口」までは600m。国道371号合流地点へ下りたわけだ。ここにもツキノワグマ注意の掲示があった。
7.奥の院前バス停から帰途につく
国道371号を奥の院方面へ向かい、16時53分に裏参道入口へ着いた。
参道に整然と並ぶ石灯籠が美しい。いくつかの灯籠にはすでに明かりが灯っている。
電話連絡やメモを整理しているうちに17時30分を過ぎて、中の橋会館が閉まってしまう。お茶してお土産を買ってと思っていたのだが・・・・。あとは奥の院前バス停でバスを待つばかり。
バス待合所付近に、弁天岳山頂にあったリピーターの案内板が設置されている。その横に、高野山ツーデーマーチの案内がずらり。
かくしてバスで高野山駅に戻り、ケーブルカーで極楽橋駅に着いてからは橋本行きの南海電鉄普通電車に乗車。橋本駅から特急に乗り継いでの帰路となった。