名 称

くらまやま~きふね

所在地

京都市左京区

標 高

584m

山行日

2018年8月28日

天 候

曇り時々晴れ

同行者

相棒と

アクセス

叡山電鉄鞍馬線の終点、鞍馬駅で下車

マップ

    

このマップは、国土地理院の電子国土Webシステムから提供されたものを使用しています。

コース概要

叡山電鉄・鞍馬駅出発 11:48鞍馬寺仁王門 11:53ケーブル山門駅 12:00~12:08<ケーブルで移動>
ケーブル多宝塔駅 12:12多宝塔 12:13鞍馬寺本殿金堂(昼食)12:27~13:08霊宝殿 13:13
木の根道 13:28大杉権現社 13:31不動堂・義経堂 13:38~13:40奥の院魔王殿 13:47~13:58
鞍馬寺西門 14:18貴船神社奥宮 14:45~14:48貴船神社中宮 14:55~14:58
貴船神社本宮 15:08~15:28京都バス・貴船バス停 15:32~15:40<バスで移動>
叡山電鉄・貴船口駅 15:44

1.出町柳駅から鞍馬寺へ

 2両編成の叡山電鉄鞍馬線、モダンな車両は乗り心地が良い。出町柳駅から約30分で終点の鞍馬駅に着いた。駅舎は寺院風の木造で「近畿の駅百選・認定駅」の標札が掛かっている。

 駅舎を出ると駐車場脇にシンボルの天狗があり、観光客のカメラが取り囲んでいる。鞍馬街道に出て左へ進むと食事の店や土産物店が並び、すぐに「鞍馬寺」の標石と仁王門が見えてくる。

2.鞍馬寺多宝塔~本殿金堂

 石段を上がって行くと立派な仁王門が建ち、その前両側を阿吽の虎が守っている。

 木々の緑に燈籠の朱が映える。おやっ、これは連邦航空局が制定した「ドローン飛行禁止」の標識! すごい時代になったものだ、と緩やかな階段を登って行く。

 階段の上から本殿金堂までの約1kmに渡って、急勾配を九十九折の参道が延びている。途中には重要文化財の由岐神社拝殿や義経公供養塔などがある。その手前に普明殿があり、2階は「ケーブル山門駅」になっている。多くの人たちが駅へと移動。その後に続いて、九十九折参道を横目に見ながらのろのろと乗り場に着く。作務衣着用の係員の指示に従って乗車すると、2~3分で多宝塔駅に到着した。

 多宝塔駅を出るとすぐ右側に美しい多宝塔がある。元は本殿の東隣にあったものが焼失し、昭和35年に再建されたものである。ここからしばらく、歩きやすい石畳の道が続く。

 参道の途中にある弥勒堂。その橋の向こうを若い女性の二人連れ。軽装のスニーカー姿が軽快に歩いている。ふ~む、トレッキングシューズに長袖シャツの相棒と顔を見合わせる。

 急な石段を登って行くと巽(たつみ)の弁財天がある。鞍馬寺本殿から巽の方角にあるのでこのように呼ばれている。福徳・知恵・財宝・伎芸を授ける神として信仰されているそうである。水琴窟があり、「雑念を取り払い心を静めて弁天様の奏でる妙音に耳を傾けましょう」の表示。う~ん、何となく、聞こえているような・・・。

 さらに急な階段をひと登りすると本殿金堂に到着だ。よく知られた源義経(牛若丸)が幼少の頃を過ごした寺である。ここも両側を阿吽の虎が守っている。堂内には毘沙門天、千手観世音菩薩、護法魔王尊が安置されている。これらの三尊を一体として、生命を生かし存在させる宇宙エネルギーである「尊天」と称している。まずは、山行の無事を願って参拝する。

 ここでランチタイム。広い境内の一角にあるベンチで、京都駅の弁当売場で買い求めたものを開く。天然の竹の皮と細竹・より糸で作られた弁当箱に、おにぎり二つと多めのおかずは風合い良く美味。

 本尊が降臨したとされる翔雲台。中央の石は本殿後方から出土したもので、経塚の蓋石とのこと。彼方に見える比叡山にズームで迫ってみた。

 この写真を撮るために少々手間取った。何しろ、いつも誰かが立っていて祈っているか撮影をしている。天のエネルギーが降臨するといわれているパワースポット「六芒星」である。本殿金堂の左隣には護法魔王尊を祀る光明心殿が建つ。

 境内の西端に位置する金剛寿命院(本坊)を右手に進むと、奥の院遙拝所がある。多くの人たちはここで遙拝して往路へと戻る。その先は奥の院参道入口であり、マムシや毒虫に注意するよう掲示されている。

3.木の根道~奥の院魔王殿~鞍馬寺西門へ下山

 奥の院へ向けて、まずは階段を登って行く。登り詰めた右手の鐘楼に立ち寄ってみる。

 少し進むと与謝野鉄幹・晶子の歌碑がある。写真右、丸い鉄錆の色合いは石英閃緑岩特有のもので、これが晶子の歌碑。
      遮那王が背くらべ石を山に見て  わが心なほ明日を待つかな   寛
      何となく君にまたるるここちして いでし花野の夕月夜かな    晶子

 すぐ先に霊宝殿(鞍馬山博物館)があるが月曜日は休館だ。再び階段を登って進む。

 さらに階段が続き、その先に「義経公息次ぎの水」がある。牛若丸が毎夜剣術の修行に通ったとき、この清水を汲んで喉を潤したといわれる。

 すぐ近くに革堂の地蔵尊がある。ここを過ぎると急な階段が連続する。

 「奥の院 570m、西門 1134m」の道標が現れた。相棒は息が上がってきたのかやや遅れ気味。時間はたっぷりあるし、スローテンポで問題なし。さらに待ち受ける階段を、ヨイショ、エンヤコーラ。

 遮那王堂と義経公背比べ石。遮那王と名のって修行していた牛若丸が、鞍馬山をあとに奥州平泉の藤原秀衡の許に下るとき、名残を惜しんで背を比べた石である。解説板に「波乱に富んだ義経公の生涯は、この石に始まると言えよう」とある。

 本殿から491m、木の根道に差しかかる。一帯は硬い地質のため、杉の根が地中に入り難くて地表を這っているもの。「樹木の生命を支える大切な木の根を、できるだけ踏まないよう」と掲示がある。先の背比べ石の標高が485mなので、この辺りが今回の最高地点と思われる。

 大杉が並び立つ中にある大杉権現社。汗が引いて涼しくなる。鈴を鳴らし柏手を打って参拝する。

 木の根道の北側の道に下りて不動堂を目指す。途中でショベルをもった男性3人組に出会う。参道を整備しているようで、感謝の声をかける。やがて僧正ガ谷不動堂に到着する。僧正ガ谷は、牛若丸が天狗僧正坊から武芸を習った所といわれている。堂内には比叡山開祖(最澄)が刻んだとされる不動明王が安置されているそうだ。
 不動堂の向かいには義経堂がある。解説板に「義経公は奥州衣川の合戦にて自害したと伝えられるが、その御魂はこの山におわし遮那王尊として護法魔王尊の破邪顕正のお働きを助けておられるという。この義経堂には遮那王尊をおまつりする」と記されている。

 奥の院まで残すは241m。また木の根が現れた道を行く。この一帯は極相林と呼ばれ、シイやカシなどの永く安定する樹種が樹林をなしている。

 奥の院魔王殿に着いた。650万年前に護法魔王尊が金星から地球に降り立ったとされる、モノスゴイ所である。ここもパワースポットらしい。以前に来た時、十数人のロシア人男女が石灯籠の周りに円陣をなし、踊りとも祈りともつかぬ振る舞いをしていたのが記憶に蘇ってくる。境内手前のベンチには何組もカップルたちが腰を下ろしている。我々もここで小休止する。

 いよいよ貴船方面へ下山だ。西門まで573m、マップには徒歩で約15分の下り坂と書いてあるが、相棒にこの急坂の下りを急かせてはならない。一歩ずつ行こうや!

 下りも林の道なので日射しの心配はない。ところどころに異形の木がある。これはのたうち回っているようだ。

 そして、穴ぼこだらけのもある。何人ものハイカーたちとすれ違うが、鞍馬からの登りと違って貴船側からの坂はかなりきつい。そんな折り、外人のカップルがやって来た。男性はスニーカーらしきものを履いているが、女性はサンダル履きでもたついている。おいおい、ここまでの倍以上の登りを大丈夫かな、と心配になる。

 途中で立ち止まりながらも20分で下りてきた。西門をくぐり抜けて、お疲れさ~ん。

4.貴船神社参拝

 貴船川をまたいで貴船神社の参道に出る。旅館や茶店、川床料理の店が並んで夏の風物詩が展開されている。

 まずは貴船神社の奥宮まで上がることにする。右に貴船川を見ながら遡るのだが、ほうぼうの川床料理店は大繁盛しているようだ。この川床をどう発音したものかと迷うのだが、貴船や高雄では「かわどこ」でいいらしい。

 しだいに人が少なくなった辺りに相生(あいおい)の杉が現れた。同じ根から生えた二本の杉の樹齢は約千年。相生は「相老」に通じ、夫婦共に長生きの意味があるありがたい御神木である。

 「思ひ川」の標石がある。創建当時、すぐ先の奥宮が本宮のあった場所で、参拝者はこの谷川で手を洗い口をすすぎ、身を清めて参拝したと解説板にある。つまりこの谷は禊ぎの川、物忌みの川、すなわち「おものいみ川」であった。これに、夫の愛を取り戻そうと思い悩んでいた和泉式部が貴布禰詣でを思い立って参拝。「おものいみ川」が和泉式部の恋の話と重なって「思ひ川」なったそうで、ようやく合点! 解説板には虚子の二句が記されている。
      遅桜なほもたづねて奥宮
      思ひ川渡ればまたも花の雨  虚子

 思ひ川を渡って大杉並木を行くと貴船神社奥宮だ。

 杉と楓が和合した御神木「連理の杉」を拝し、簡素で美しい拝殿に立つ。祭神は闇龗神(くらおかみのかみ)。

 参道を戻って貴船神社中宮へお詣りする。結社(ゆいのやしろ)と呼ばれ祭神は磐長姫命(いわながひめのみこと)で、縁結びの神として信仰されている。

 境内には「磐長姫命の御料船」として奉納された船形の自然石「天の磐船」が置かれている。その背後にはおびただしい数の願い文が結ばれている。右手奥に和泉式部の歌碑がある。
      ものおもへば沢の蛍もわが身より あくがれいづる魂かとぞみる   和泉式部
 何とも、女性ならずしては決して詠めない歌ですなぁ。しかも、現代では絶対に・・・!

 貴船神社本宮に戻ってきた。相変わらずここは撮影スポットで、鳥居も燈籠の階段も人が溢れている。

 軽装になった相棒が元気よく登って来てひと安心。境内には若者が圧倒的に多く活気がみなぎる。

 この石庭「天津磐境(あまついわさか)」は岡山県出身の作庭家、重森三玲さんの作だ。貴船名石保存のため、すべてを緑や紫が美しい木船石で石組みし、庭全体は船形になっている。小休止しながら鑑賞して拝殿へ向かう。

 参拝者の列に連なるがなかなか前に進まない。「これは賽銭箱の横幅と関係しているのでは」と相棒。そう、君の閃きは凄い!「参拝者待ち行列の長さは賽銭箱の幅と反比例する」と結論づけて観察していたら、実は「拝殿の鈴の数」と関係していることが分かった。拝殿には鈴二つ。参拝者の多くはカップルで、二人がそれぞれの鈴を鳴らしながらいっしょに参拝するので、一度に一組ずつか一人ずつしか前進しない。道理で待たされるはずだ。
 別の場所に「お急ぎの方は、こちらからお参りください」と貼り紙した賽銭箱が置かれているが、参拝者はまったくいない。

 貴船神社詣では神々しい京の奥座敷訪問でもあった。参道の車の行き来にはいささかうんざりしたが、夏の風物詩を堪能することができた。後は貴船口駅まで歩くだけだが、何と、貴船口駅行きのバスがやって来る。気がついたらバスの中という調子の良さ。

 歩けば30分はかかる貴船口駅に数分で到着。本当は川床料理を身近に観察したかったのだが、時間的にも金銭的にも青春18切符利用の辛いところ。それに替えて、いつもどおり京都駅での反省会で大いに盛り上がる。