1.大師堂登山口から山頂へ
自分が山から遠ざかっていた時期に同様に体調を崩していた人や、白内障手術で間もない人も参加されて、懐かしい顔を交えての山歩きだ。岡山から車で1時間ばかりのうちに雲が散り、青空が広がってきた。今日は赤穂義士祭なので離れた駐車場に車を駐めてきたのは正解だった。登山口の狭い駐車場はすでに満車状態である。この山は西播磨の花の郷でもありドウダンツツジで有名らしいが、開花時期は春。しかし、紅葉が残っていればこれもきれいなはずなのだが。
まずは長い石段で始まる。以前はすたすたと登れていたのだが、手すりに手をそえてヨッコラショ。
登り着いたところに建つ大師堂に参拝する。大きな香炉があり「弘法大師御宝前」の文字が浮き出ている。
境内から雄鷹台山山頂へ1,100m、黒谷不動へ530mの道標。社の右側を通って平坦な山道を進む。山側には祠やお地蔵さんが点在する。
荒削りの石を積んだ石段が現れる。不揃いの段差を登って行くと一合目の道標に出合う。
事前の地形図の確認で、このコースはなだらかなように思えていたのだが、そんなに楽ではない。二合目手前の展望台までは急な階段が続いている。雑木林に視野をさえぎられ、岩場に貼り付いたような階段を登って行く。
しかしそんな状態もここまで。二合目の少し手前にある展望台に到着するといっきに視界が開ける。大師堂から15分足らずだが小休止。いただいた美味しいリンゴを頬ばりながら深呼吸をする。
ここからは爽快な尾根歩きで視界も良好。二合目の標高は80m、山頂までの距離が短いので次から次へと標識に出合うことになる。このあたりには赤い前掛けのお地蔵さんがあちこちに立っている。
まだ赤が鮮やかなドウダンツツジもあり、全体がオレンジやライトブラウンに染まっているのもなかなかなものだ。何度か訪れているUさんが、春には両側が花で真っ白になって美しいと教えてくれる。町では忠臣蔵パレードが始まっているらしく、遠く笛と太鼓の音が聞こえてくる。
五合目に到着した。この先も石段歩きが続く。石段の間には大小の砂利が散らばっているので、スニーカーでは歩きにくいかも。
向こうに見えている送電鉄塔の下が分岐点になっている。その手前も道の両側をドウダンツツジが飾る。しだいに笹が増えてきて、それに混じるシダ類の緑が濃くなってくる。やがて七合目の休憩所が見えてきた。
七合目の標高は155m、麓から859mの位置だ。休憩所では会話が弾んでいる。
テーブルの上にはヒマワリの種がばら撒かれている。これは小鳥の餌で、付近に設置された「オタカクラブ」の山小屋風の保管庫には、ビニール袋に詰めたのがいくつも入っている。この保管庫には日付別の登山記録ができるクラブ名簿もあり、○や◎がびっしりと記入されている。毎日、あるいは日に複数回登った記録のようだ。
すぐそばの巣箱には鳥の姿。早くテーブルを空けてくれと待っているようだ。15分ばかり休んでから、送電鉄塔の下をくぐって山頂へ向かう。
近くにはこんなベンチとテーブルのセットが並び、その先の「オタカばし」を渡って進む。
海抜182mの八合目を通過する。次の九合目まで残すは129mで、頂上までもうすぐだ。このあたりは二本の山道が平行していて、対向側の右に「八合五酌・絶景の眺め」の標識が立ちお銚子がぶら下がっている、おもしろい。チラリと眺めて、帰りに立ち寄らなくてはと思う。
九合目を越えるとすぐに、あちこちでグループの一団が食事や語らいでくつろいでいる。間もなく山頂に到着だ。
2.山頂風景
十合目の標識には「海抜253m、ふもとから1,243m」とある。山頂には「昭和50年1月再建・登山六十周年記念・昭和49年度赤穂小学校卒業生」と刻まれたモニュメントが建つ。赤穂小学校が続けている登山の60周年を記念して、昭和49年の卒業生が再建したということだろうか。左手に持つのはピッケルかな?
上空から北は青空なのだが、眺望のよい東から南と西にかけては空が暗く、薄もやが立ちこめて残念。風景が煙っている。写真上左は東方向、右は南東で播磨灘に浮かぶのは家島諸島。下左は南方向で、千種川(ちくさがわ、ちぐさがわ)が流れる。ただ、正面に見えるはずの小豆島は煙の中だ。右は三角州に形成された赤穂市街地で、向こうには日生諸島が見える。
3.別ルートを赤穂駅方面へ下山
11時30分に山頂を出発する。なぜ山頂に設置されているのかわからない鉄棒、その下をくぐって行く。
来がけに目を惹かれた「八合五酌・絶景の眺め」の標識に出合うが、みんな気づかずに通り過ぎてしまった。自分は距離をおいて最後尾を歩いていたので、ちょっと立ち寄ってみた。
七合目の休憩所から往路とは別のルートを下りる。右に踏み込むとほんのひと時、西に黄葉の景色が広がる。
間もなく分岐があり親水広場と播州赤穂駅方面の道標が立っている。赤穂駅方面へと進む。
しばらくは落葉のジグザグコースをひたすら下りてゆく。階段が多く落葉に足を取られないようにと気が抜けない。それでも時折出会う美しい紅葉には足が止まる。
ふり返ると七合目の送電鉄塔が小さく見える。15分足らず下りてきたところに「真心乃瀧」への分岐道標がある。
すぐに「みなもとの森」の解説板がある広場に出た。七合目にあったものと同じ解説板で、この山が流紋岩による「痩せ山」であること、それが独特の植生環境をつくりだしていることなどが記されている。
小休止して歩き始めると、まだ赤い葉をいっぱいつけたモミジ。
左に雄鷹台隧道配水池の施設が見えてくると舗装道路に変わる。雄鷹台隧道配水池は赤穂市最大の配水池で、雄鷹台山に掘った長さ約400mのトンネルにより11,000立方メートル(市全体1日当り使用量の約8時間分)の水を貯めることができるそうだ(「広報あこう 2017年11月号」より)。
住宅地を抜けて赤穂駅の北口に到着する。ふり返ると雄鷹台山、だが山頂は見えない。七合目の送電鉄塔がわずかに見えている。
4.義士行列スナップショット
駅前で甘酒の接待を受けて食後の休憩をとり、駅前通りを忠臣蔵パレードの観覧席がある中央通りへと移動する。すでにパレードは始まっているのだが、三重四重の人垣で様子がわからない。すき間からチラリと見える状況から判断して背伸びするがダメ。せめて写真に収めようとカメラを高々と掲げるが、シャッターチャンスには前の方でカメラやスマホを握った手が伸び、揺れている。
そんな具合で以下の写真は、カメラだけが見た行列を事後に切り出したもの。
(こども義士行列)
(大名行列)
(忠臣蔵名場面の山車) 雨がぱらついてきたが、移動する山車の上で微塵も動かない演技者に感服。
(義士行列)
パレードの終盤、俳優の高橋英樹さんが大石内蔵助で登場。わずか5秒ほどだが、しっかりお姿をゲット。どっしりと貫禄があるねぇ、来て観てよかったなぁ、と感激。観覧席前の放送席のアナウンスが場をいっそう盛り上げる。
すべてが終わった北の空、なんと、虹が架かっている。これって、出来すぎでは?・・・・