1.JR高槻駅から神峯寺登山口へ
自宅から岡山駅までのバスが遅れて、予定の新幹線には駆け込み乗車。新大阪から高槻駅へ出てバスに乗るまでに、乗り換えの都度、あちらで弁当を入手しこちらで飲料類を手当てしながらやってきた。バスに乗り込んでようやくカメラを取り出し、窓から乗り場の掲示を撮影、そして即発車。およそ20分で神峯山口に着いた。
降車すると、続いて山歩きスタイルの若い女性2人組みが降りてきた。いっしょに歩けば楽しいなと思ったが、時間を忘れての寺社参りや写真撮影につき合ってもらうわけにはいかない。二人がこちらの様子を窺っているようだが、無意味なシーンにカメラを向けて時間を費やし、やり過ごす。
バス進行方向の交差点を右に渡ると、歴史の散歩路「霊峰への道コース」の道標があり、「従是神峯山寺道」の石碑が並立する。
直進すると四差路に出て、右手の倉の傍に道標がある。
道標にしたがって路地を進むと山道に変わり、害獣防御フェンスとおぼしき門扉が設置されている。ここがこのコースの登山口と言えそうだ。
2.東海自然歩道を神峯山寺へ
山らしい道になってきた。段差の小さい古い木段はすり減っている。
歩きやすい間隔の木段が一直線に延びている。軽快に進んで行くと、オヤ、すぐに舗装道路に飛び出してしまった。
2本の石柱が立ち、注連縄のようなものが架かっている。近づくとその縄に、稲藁と木と木の葉でつくられたイカのような形のものがたくさんぶら下がっている。脇の道標に次のような解説があった。「勧請掛(かんじょうがけ): 縄に樒(しきみ)を結びつけたもので、聖地との境界を意味していますが、大阪商人らは、その長短などで米価や株価を占ったといわれています」。ふ~む、いろんなものがあるんだ、とくぐって行く。
聖地に踏み込んだとたんに、いろんなものが現れてきた。まず石塔が二基、続いて石段の上に祠。石板に「神峰山地主之神 金比羅飯綱大権現」とある。そして古い珍しい形の石灯籠。古くからの参道であったことがよくわかる。
緩やかなカーブの道。緑の石垣は、丸い葉の苔らしきもので飾られている。
さらに石塔、先ほどのものより現代的な感じがする。柔らかいウェーブの彫刻がほどこされているが、何かは判然としない。
これは古い墓だろうか、沢山の石塔が並んでいる。石柱に囲まれた中に碑が立ち「開山 役行者 笈掛石」と刻まれている。開祖の役行者が笈(おい:仏具・衣類・食器などを入れて背負う木箱)を掛けていた場所らしい。
「七町」の標石があり、その先に茶屋。木洩れ日の広場に白いテーブルと椅子。男性二人がコーヒーカップを片手に語らっている。仲間に加わりたいが、予定の行程では喫茶の時間は確保できない。横目に見ながら通り過ぎる。ここまでに、近辺からと思われる軽装歩きのひと何人にも出会い、挨拶を交わす。
神峯山寺に着いた。左に「日本最初毘沙門天 根本山 神峯山寺」の石碑。神峯山寺は役小角(えんのおずぬ)によって開山され、日本で最初に毘沙門天が安置された霊場と言われている由縁であろう。右には下馬碑が立つ。
仁王門の前には狛犬があり神仏混淆の寺である。門の中の新緑がまぶしい。謹んで仁王様のお姿を頂戴する。
2013年11月に落慶法要が行われた、白木のきれいな化城院である。傍らには「平成22年2月28日より化城院二千日連続護摩修行中」の立て札。ゆるやかな時の流れを感じながら、正面の石段を登って行く。
本堂に参拝して山行の無事を祈る。右手には護摩堂が美しい。
3.東海自然歩道を本山寺 へ
登ってきた急な石段を下りてもとの道に出る。道標の本山寺へ向けてスタートだ。
5分ほど進むと「神峰山の森自然園」がある。門の中にはネットが設置されていて、鹿の侵入を防ぐためにネットの開閉をするようにとの貼り紙が見える。鹿が貴重な植物を食べて困っている旨の説明が添えられている。
すぐ先には「いこいの広場」。緑に囲まれたゆったりとした空間が広がり、「神峰山の森を訪れる多くの方がそれぞれ憩うための広場で、団体の使用は原則禁止されています」の立て札が立つ。
さらに2~3分歩くと「神峰山の森」の標識。右側にスロープがあり、扉に自転車の絵が見える。「自転車乗り入れOK」ということだろうか。この一帯、いろんな楽しみ方ができそうだ。
電柱に「クマ注意」の掲示。続いて道路左に「特定猟具使用禁止区域(銃)」の真っ赤なプレート。ところが、その反対側に「発砲危険 近くに山林作業地あり 東海自然歩道歩行者に注意」の白いプレートがある。と言うことは、自然歩道の西側は猟銃が規制されているが、道を挟んで反対側は注意すれば銃使用OKということなのだろうか?もしそうなら、狩猟期間中は近寄りたくないなぁ。
川久保分岐を通過する。その先に土石流警報テレメーター局が設置されている。
長い舗装道路だ。こんな道がどこまで続くのだろうかと思いながら歩いていると、淡いピンクのツツジに目がとまる。
「九丁」の丁塚が現れた。駐車場が見えてきて、本山寺までかなり近くなったようだ。
しかし、なお続く舗装道路。「東海自然歩道は、コンクリート舗装の道です」の立て札、これって何だ?で、ようやく残り三丁である。
向こうが開けてきたようで弾みがつく。広場に「寳篋印塔(ほうきょういんとう)」と刻まれた碑が建っている。
本山寺とポンポン山の分岐に着いた。説明板によると、この寺も役行者の開山で、「役行者が葛城山で修行中に、このあたりに五色の彩雲がたなびくのを見てこの地に来て行をし、毘沙門天の像を刻んで堂をかまえた。時は696年のこと」とある。つまり本尊は毘沙門天で、鞍馬寺、朝護孫子寺とともに「日本三毘沙門天」のひとつであるとか。
本山寺に参拝すべく石段へ向かう。神峯山寺の手前で見たのと同じような勧請掛(かんじょうがけ)があり、手前に一丁塚が立つ。
途中に稲荷神社があり、朱の灯籠が立つ参道を行く。
中の門を入って進むと広場に出る。手水舎で手を清め、隣のみずかけ不動尊に水をかける。その奥にはどっしりとした鐘楼がある。
急な長い階段を上がると、カメラに収まりきらない本堂。とりあえずシャッターを切って、参拝する。
本堂の右にポンポン山への道標があり、御堂の右側を通り抜けて階段を上がる。
4.高槻の古木~ポンポン山山頂
やっと舗装道から解放されて山道になった。細い道、木段の道に足が喜んでいる。
本山寺をバイパスした道路との合流点へ出た。もう東海道自然歩道は舗装の道ではない。が、またまた「クマ注意」の掲示。この付近に「ニホンジカについて」の説明版があり、貴重なニホンジカとの共生や保護についての協力要請が記載されていた。しかし、昨今の鹿害の問題を考えると何とも妙な気分になる。反面、もしかすると今日は出会えるかも知れないとの期待も少々・・・。
傾斜の緩い階段を登ったら、右側に「高槻の古木」が立っている。樹齢330年と言われる、高さ30mを超す2本の大杉が注連縄で結ばれている。
ゆったりとした尾根道歩きが続く。両側には適宜伐採されたヒノキ林が多く、あちこちで深い谷間を見通すことができる。ニホンジカの姿に注意しながら進むが、ついに会えなかった。
行く手に階段が見え、山頂への道標が見えてきた。
階段を登ったら山頂広場に出た。語らうグループ、食事をする人たち、十数人のハイカーがくつろいでいる。ゆっくり寺社などに立ち寄りながらほぼ3時間、予定より少し余裕を残して到着することができた。
一角にある大きなツツジが満開である。東を中心にした展望の「案内図」があり、左は水井山、比叡山から京都タワー、右は生駒山、飯盛山、淀川、そしてJR高槻駅まで見えるはずなのだが、霞がかかって下のパノラマ写真の通り何も見えない。
東の端に立って山頂の様子をカメラに収め、お札に囲まれた二等三角点にタッチ!
広場周辺には丸太のベンチやテーブルが作り付けられており、そのひとつで昼食をとることにした。
のんびりとしているうちに、登ってくる人・下りる人が交錯して顔が入れ替わる。1時間近く経ったが、霞はいっこう晴れない。女性の3人組みが楽しそうに食事の支度をしているのを目に留めて、さっき登ってきた階段を下りにかかる。
5.釈迦岳へ向かう
階段を下りて釈迦岳へと歩き始める。歩きやすい快適な道が続く。
すぐに出灰(いずりは)分岐の道標があり、釈迦岳へは「杉谷」方向へと進んで行く。ここからも尾根道歩きである。
ポンポン山山頂から600mの道標、すぐ隣りに「熊出没注意」の標識だ。
「東尾根ルート経由 大原野森林公園の案内所」の木製プレートが吊されている。花を観るには大原野森林公園を含む北斜面が好いと聞いているが、善峯寺あるいは出灰から登ってきて、ここから大原野森林公園の案内所へ向かうことができるわけだ。間もなく杉谷・釈迦岳分岐に差し掛かる。
最初に到達した送電鉄塔と次の送電鉄塔。送電線路が載った2万5千分の1地図をもっていれば、現在位置の特定や行程進捗を把握するのに大変便利である。
このルートは「おおさか環状自然歩道」と言うらしい。見やすい道標が設置されている。一帯では植林が進められている。
木段を登って行くと、小さな広場にテーブルとベンチが置かれた釈迦岳山頂。展望がないので、三角点を確認後は小休止して即出発。時刻は13時半を過ぎたところで、予定より20分ばかり捗っている。
ところで、ポンポン山山頂を歩いた足の感じはどうだったっけ?しまった、四股を踏んでみるのを忘れていた!まぁ、それほどあの山頂は居心地よく、ハイカーの人たちも長閑で、自分は癒しの時間を精一杯満喫していたのでした。
6.善峯寺へ下山する
さて、いよいよ下山だ。「善峰寺・長岡京市」の方向へと足を運ぶ。
思わず立ち止まる。やや曇天下の森だが、木々の色合いと柔らかい光がとても美しい。
道標が2本、長岡京市と善峯寺との分岐に着いた。
長岡京市側に踏み込んでみると、南に面して真新しいベンチとテーブル。谷側に身を乗り出すようにして眺めたが、下界は霞んで朧げ。即、引き返す。
善峯寺へのルートはかなり荒れた感じだ。倒木が多く、割れた破片のような指導標、片側が落ち込んだ細道や根っ子道、それに沢っぽい部分もある。しかし、ゆっくり歩けば楽しい道だ。途中からストックを取り出して快適に下りて行く。
細道が続いた後、前方がぽっかり開けて、まだ新しい「展望所」の標識があり「善峯寺の絶景ビューポイント」の添え書き。これは立ち寄らぬわけにはいかない。
右側を少し斜めに入って行くと新しいベンチが並んでいる。
次の瞬間の風景。絶景の添え書きに偽りなし。3万坪の境内を有し回遊式庭園を巡らす善峯寺が一望できる。建物に次々とズームで寄ってみる。写真右は立派な山門の姿。
左の写真は経堂と多宝塔。そして右は薬師堂。
引き返して下り始めると、下方から小さく車の音が聞こえてきた。途中には踊るようなイロハモミジ。
突然、眼の前にふわりと現れた花・・・・、薄い青色が漂うように咲いている、ひっそりと清楚な姿で。少し白みがかった花もある。コアジサイとの感動の出会い。あまりの美しさに、しばらく見とれていた。
コアジサイの群生を縫ってゆっくりと下りる。道路が見えてきた。さらに下って、渓流に架かる橋を渡る。
善峯寺の西の駐車場入口あたりに下り立った。左を見上げた位置に「西国二十番札所 善峯寺」と彫られた石標がある。
参拝しようと近道を通って坂を上がると、眼前に現れた山門の荘厳な雰囲気に圧倒される。案内板に30~40分でお参りできると書かれているが、向日町行き最終バスまで30分ほどしかない。それにバス停までの経路・所要時間が定かでない。入山受付の係員に事情を告げるとバス停まで7~8分とのことで、残念ながら門外からの礼拝に留めた。
山門前から南に見える緑をカメラに収めて、東門をくぐってジグザグの急坂を下りる。
下り立った位置から振り返る山門入口。ここから見る緑もきれいだ。
善峯寺バス停にはすでにバスが停車しており、参拝者が何人か乗車していた。たっぷりと水分を補給して、JR向日町駅へと帰途につく。