名 称

ゆづるはさん

所在地

兵庫県南あわじ市

標 高

607m

山行日

2015年2月3日

天 候

曇り時々晴れ

同行者

なし

アクセス

淡路交通洲本高速バスセンターで乗り換え、淡路交通縦貫線・市バス停で下車

マップ

このマップは、国土地理院の電子国土Webシステムから提供されたものを使用しています。

コース概要

高速舞子発(淡路交通高速バス) 8:20洲本高速 9:16~9:20市バス停(20分遅れ)10:15
諭鶴羽ダム 10:43裏参道登山口 10:45神倉神社 11:00諭鶴羽山山頂 12:07〜12:32
篠山神社奥の院 12:43諭鶴羽神社 12:58表参道下山開始 13:17行場の滝 14:12
黒岩バス停 14:29灘黒岩水仙郷 14:45~15:30福良バスターミナル 16:00~16:10
高速舞子帰着 17:30

1.裏参道登山口〜神倉神社

 新幹線・新快速・普通電車とJRを乗り継ぎ、高速舞子からのバスも順調に洲本へ到着。乗り換え時間が短いのを心配していたが、乗り遅れることもなく市バス停まであと15分ばかりとなった。ところが、大渋滞が発生していてほとんど前進しない。原因は道路工事だったのだが、そのせいで20分遅れでの到着だ。
 ところが何と、バス停の隣がタクシー乗り場という幸運。すかさず歩く予定を変更して、諭鶴羽ダムまで送ってもらうことにした。同年代と思われる運転手さんは、大病から復帰して要経過観察の身とのことで、健康の大切さについて話ながらの移動。ダムを越えて、登山口手前に横付けしてくれた。

 川下を振り返ると立派な建物が見える。南あわじ市の公共の宿で、サイクリングターミナル、スポーツ・レクリエーション施設も完備しているそうだ。ダムの堤防を渡ると道路が左折している。諭鶴羽山への登山道はその右側の階段から始まる。

 北から南へと続く道は諭鶴羽神社の裏参道であり、神社の手前に山頂がある。さらに神社から南へ下る表参道とあわせて、この道は諭鶴羽古道と呼ばれる歴史と信仰の道でもある。狭くて急な階段を、つまずかないように気をつけて登って行く。

 しばらく杉林の急坂が続く。石ころが多いので踏まないように進む。

 裏参道は28丁で、次から次へと丁石地蔵と出会うことになる。杉林に立つ27丁のお地蔵さんの前で、足が止まってしまった。ご覧の通り、とても優しく美しい顔でいらっしゃる。角度を変えて撮影させていただいた。

 路面の石ころはなくなったが、相変わらず傾斜はきつい。「諭鶴羽山山頂 2.5km」の道標、もう1km近く登ったわけだ。

 丈が2mはあろうか、古めかしい石の道標がどっしりと建っている。左右にひらがなで「○○○○道」と刻まれているが、具体的にどこを指すのかは分からない。少し進むと道が平坦になってきた。

 登山口から15分、神倉神社(かんのくらじんじゃ)に到着した。地図から判断してキツい登りはここまで。これから先は尾根道歩きになるはずだ。案内板に「神代の時代、イザナギ・イザナミの神の乗られた鶴がここの大樹で羽を休められたという由緒ある場所」とある。また、現在は管理を諭鶴羽神社に託していると記載されている。社の脇には石塔が立ち「山之神」と刻まれたものもある。右側に大木が倒れ朽ちている。

2.諭鶴羽山山頂へ向けて

 5分ほど進んだところで左にある踏み跡へ入ると、下方に川らしいものが見えた。諭鶴羽川は数百m東を流れているはずなので、その支流かも知れない。

 また岩と石ころの道になったが、傾斜は緩い。

 そして、この平坦できれいな道。尾根道なのだが、両側に木が茂っていて展望は得られない。

 「諭鶴羽山山頂 1.8km」の道標、その先に17丁地蔵がある。ほぼ中間点までやって来た。

 道中には近畿自然歩道のいろいろな案内板が設置されている。ここでは「糞の落とし主をさがそう」と題して、動物の糞の形状や特徴を説明している。

 その先に待望の(?)糞を見つける。が、しかし、この主は定かでないなぁ、と呟きながら倒木のトンネルをくぐる。

 「諭鶴羽山山頂 1.2km」の道標、すぐ先に12丁地蔵がある。

 緩やかなカーブの典型的な尾根道だが、左側の3カ所ばかりで色が異なる。近づくと、崩れた跡に小石を詰めて丁寧に補修してある。感謝しながら通過する。

 右側が土塁のようになっているところへ差しかかると、お地蔵さんの頭が見えた。のぞき込み気味に、ズームでお姿をいただいた。十丁地蔵である。

 山頂まで0.7kmの道標を確認して少し進んだあたり、右後方に踏み跡があるようで振り返ったら、こちらを向いてる鹿と視線が合った。そっとカメラを向けるが逃げる気配はない。シャッターを落として2~3秒、スルリと木々の間に消えていった。この出会いに、嬉しさがゾクッとこみ上げてきた。

 山頂まで残すは400mになり、そして手書きで200mの標識。

 行く手(写真左の中央部)を、2匹の鹿が左から右へと走り抜けた。ちょうど走馬灯のように、音もなく速すぎもせず走り抜けた。そこまで行って右手を見たら、何と、一匹がこちらを確かめるように見つめている。シャッターを切るとすぐに姿を消した。まるで記録映画でも見ているような気持ちになり、しばし現実を忘れていた。

 白い建家と電波塔で現実に引き戻された。洲本土木事務所の諭鶴羽中継局である。山頂はすぐそこだ。

3.諭鶴羽山山頂〜諭鶴羽神社

 右側に「諭鶴羽神社 0.6km」の道標があり、階段を上がると山頂である。
 山頂標石には、「諭鶴羽山山頂 607.9m一等三角点 御旅所 諭鶴羽神社」と刻まれ、さらに「四月 春例祭におみこしがあがります」とある。「諭鶴羽山のアカガシ群落」の案内板が並立する。

 石組みの御神輿の台座、つまり御旅所台があり、その前の一等三角点の標柱にタッチ。

 御神輿台座を挟んで三角点と反対の位置に、2基の石塔がある。山頂のもう一方に建つ東屋で昼食をとることにした。ただ、風が強くて体感温度が下がり、箸を持つ手の感覚が無くなってくる。しかたなく、薄手の手袋を着用して食べることになった。
 山頂標石の横に「八州展望所(淡、紀、和、河、摂、阿、讃、備)」と彫られているのに気づく。それぞれ「淡=淡路、紀=紀州、和=和泉、河=河内、摂=摂津、阿=阿波、讃=讃岐、備=備前」であろう。視界が暗くもやっているので定かではないが、さもなくば素晴らしい眺めが広がっていることと思う。

 南西には鳴門大橋、北にはさっき通ってきた電波塔が見える。

 南には沼島(ぬしま)が見えている。鳴門大橋にズームインすると、橋の下に渦潮らしき白いものが見える。

 西には風力発電のプロペラがずらりと整列する。

 12時32分に山頂を後にする。NTTの電波塔に続き、もうひとつ複雑なのに出合った。

 なお下りると篠山神社奥の院の石標があり、左の道に踏み入るとモダンなつくりの祠があった。

 さらに下りると右手に沢山の石仏と石柱があり、その先の坂道を指している。

 右折して坂を登ると、そこは山ぼうしの広場で、一段高いところに「平和祈念塔」が建立されている。

 祈念塔を見上げるように、戦後50年を記念した長崎原爆忌「平和宣言」が建つ。もとに戻って進むと無料休憩所の杠山荘(ゆずりはさんそう)。

 隣り合って「天の浮橋遙拝所」があり「東に紀州の山並み、友ヶ島。眼下に太平洋へと続く紀伊水道。そして、くにうみ神話の伝わる沼島」と解説板が立つ。

 その沼島にズームで迫る。残念ながら紀州方面は判然としない。

 すぐ近くの石鳥居脇には「奥宮十二所神社」の石柱。鳥居をくぐると左側に丁石(町石)が並ぶ。建武のころに建立とあり、鎌倉時代にさかのぼる貴重な遺品である。

 その奥には奥宮十二所神社の赤い社が建ち、その右側に多宝塔影板碑や宝剣板碑群がある。これらは天文21年の銘で、美作住人乗蔵らが再興祈願及び再興の資料として、いくつもの社堂や神仏を碑石に刻して後世に残したものと言われる。

 少し先に表参道への道標、そして胎蔵界大日如来と金剛界大日如来を祀った大日堂が建つ。

 周辺には1万2千㎡のアカガシ群落があり、兵庫県指定の天然記念物になっている。しかし、時間の関係で足を運ぶことができなかった。近くに「ゆずりはの木」があり、その向こうには県の巨樹巨木に選定された親子杉がそびえる。

 やっと着いた諭鶴羽神社に参拝して山行の無事を感謝する。境内に採燈大護摩供法養の広報板と並んで、トレイルラン「諭鶴羽山早駆け」&「早春登山」が広報されていたのが印象に残った。これで、いろいろな風景にめぐり会った山頂エリアを後にする。

 最後にもう1枚。これは高度浄化処理システムを備えた水洗トイレとのことで、快適に利用させていただきました。

4.表参道分岐~黒岩バス停

 13時17分、表参道から下山を開始する。入口に18丁の最初の地蔵が立ち、「地蔵の道」の標識がある。

 石ころが多いかなり荒れ模様の道を20分ばかり、きれいな道になった先に「柴折り地蔵」の案内板。道行く人が道中の安全を祈願したり、山仕事を終えた人などがここから諭鶴羽山を遙拝し、地蔵さんに柴(うばめがしなどの小枝)を手向けたのでこう呼ばれるそうだ。

 さらに5分ばかりで「菊(き)か店跡」。昔、お菊さんという人がこの場所に茶店を出していたそうで、それほど人の往来でにぎわっていたとか。

 何かわからないが、しっかりとした石積み跡が残っている。その先には8丁のお地蔵様。

 どんどん下りて14時1分、10丁地蔵を過ぎたあたりで足下が良くなり海が見えてきた。

 「坊さま角(かど)」の標識。江戸時代まではお寺もあったそうで、山上に戻るお坊さんが、この曲がり角でよく一休みされていたとか。ここを過ぎると、生活のにおいがする道路に変わってくる。

 急に視界が開けて、山の中腹を蛇行する舗装道路と民家が見えてきた。一帯に咲く、この季節にしては珍しい黄色の花が可愛いのでカメラに収めた。帰って調べると、ナルトサワギク(鳴門沢菊)というマダガスカル原産の植物で、年中開花するそうである。ところがビックリ、毒性が強くこれを食べた家畜の中毒死が問題になり、なおかつ繁殖力が強いことから、現在は特定外来生物に指定されているヤッカイものだった。

 獣ゲートが設置されている。イノシシと鹿の対策であること、通過後に必ず閉めるよう掲示されている。

 眼下に舗装道路が現れ表参道の道標が立つ。ついに表参道登山口に到着だ。

 すぐそばに小さな滝が落ちている。「行場の滝」である。

 バス停がある海岸線までをしばらく歩く。きれいなアスファルト舗装の道によく似合うマンホールの蓋。渦潮が巻く鳴門大橋と水仙の花がデザインされている。

 鳥居があり、その脇に石灯籠と18丁地蔵が並ぶ。下山路はここが終点だ。

 そして岩黒バス停に到着。眼前には紀伊水道の海が広がる。

5.灘黒岩水仙郷に立ち寄り帰途に

 山頂で眺めた沼島(ぬしま)が真南に見えている。東にはテトラポットの並ぶ海岸。2km先の灘黒岩水仙郷に向かって歩く。

 遠くに浮かぶ変わった船にズームイン! どうやらLPG船のようだ。やや離れた岩の上にいる3羽にもズームで迫る。これはウミウである。いやはや、山戻りには海が新鮮だ!

 ぜひ立ち寄りたかった灘黒岩水仙郷に到着した。帰りのバスの便を確認して、30分ばかり観賞できることになった。

 平日だから少ないとのことだが、それにしても大変な人出である。山の斜面を埋め尽くす水仙を愛でるために、ジクザグの階段を登って行く。柔らかい香りが、決して濃密でなく、淡く爽やかに漂っている。

 階段の途中で、山間に諭鶴羽山の姿。それを眺めているような水仙。

 開花し始めた梅の紅、海面を背にした斜面の白い花。

 180年も前に、漂着した球根を拾った漁民が山に植えたのが水仙郷の始まり。だんだん繁殖して、約7ヘクタールに500万本も咲いているそうである。へたな写真では、どうにも雰囲気を再現できず、残念だ。

 灘黒岩水仙郷からバスで30分、淡路交通の福良(ふくら)バスターミナルに到着。山と海と水仙の印象をまとって帰路につく。