1.烏山入山ルートの変更
岡山駅バス停から中鉄バス国立病院線で16分、岡山商大前で下車する。道路を隔てた北側に烏山が見える。


交差点を渡って、養護老人ホーム「報恩積善会」が見える坂道を上って行く。突き当たり手前の民家で、年輩の女性が庭掃除をしていたので挨拶。「ここから山へ入れますよね」と訊いてみた。「さぁどうかなぁ、最近は誰も登らんから荒れとるかも知れんよ」とのこと。「行けるところまで登ってみます」と話してお別れする。


階段には草が生え、枯れ木や小石が散乱していて、たしかに人が歩いている形跡はない。


階段を越えて一歩を踏み出すが、少し進むと雑木が茂っていてなかなか前進できない。何カ所も倒木があり、リュックがじゃまにならないように前方に投げ出しては木を跨ぎくぐって行く。


左側に古びた給水タンクのようなものがあり、それを下に見ながら進むと、次の一段高い場所へ移動するには木々をよじ登らなければならい。しかも周辺には踏み跡らしきものもなく、これでは身動きできなくなる。このルートを断念して引き返すが、下山には登り以上に手間取ってしまう。階段付近に戻って地図のルートを再点検する。地図上にはこの位置に点線、つまり徒歩道があると示されているが、今や荒廃して通行不能である。
別ルートとして、東の明誠学院高校のあたりからアプローチできそうなので移動することにする。


2.明誠学院高校付近から烏山へ
明誠学院高校の来客用駐車場を奥へ進むと分岐があるので、山側の道を進む。


右に校舎を見ながら、敷地の西側をフェンスに沿って前進する。


突き当たりを右折して敷地裏側の道を行くと民家のある通りに出た。木造建築の現場に、棟上げを迎えた家族が集まっていて「おめでとうございます!」。少し話し込んで出発する。


大工さん達が車を停めている後ろに長い階段が現れる。


どこへ着くのかわからないが、上の建物が近づくと愉快な表情の狛犬が待っていた。


到着したのは尾治針名真若比咩(おじはりなまわかひめ)神社。祭神は尾治針名真若比咩命 (おじはりなまわかひめのみこと)とある。まずは拝殿で参拝をすませる。細かいことはわからないが、『延喜式神名帳』に式内社として格付けされた神社らしい。面白いのは、「本神社の鎮座地の西坂以東の山を半田山と言うのは、針田山の誤で、針田の名称はこの神の御名から出たもので、津島の産土神である」という意味のことが記されていることである(岡山県神社庁より)。ちなみに、産土神(うぶすながみ)とはその土地の守護神のことを言う。


拝殿の奥の本殿を拝し、境内右隅から始まる山道に入る。


きれいに整備された道が続き、やがて烏山の登山口に着いた。ところがチェーンが張られ掲示板が立っている。写真右の黄色枠内は掲示内容を拡大したもので、目的の如何を問わず立ち入りできないことになる。しかたなく別の道を探そうとそこを離れる。


直進すると右にNTTドコモの電波塔、さらに進むと左に岡山市水道局津島配水池の建物がある。




そして突き当たりには岡山大学が設置したバリケードがある。


左の道を辿って行くとしだいに下り坂になり、下から自転車を押した男子高校生がやって来る。道を尋ねるとスマートフォンを取り出してあれこれ調べてくれる。しかし烏山方面の情報は得られず時間が過ぎていく。下から同年配の男性がやって来てわかったのは、立ち入り禁止の場所を進めばよいということ、誰彼となく歩いているということだった。
彼は「私はこっちへ行きます」と、バリケードを危なっかしい姿勢で越えて行った。何てことだと、自分も先の場所へ引き返す。とんだ時間ロスになってしまった。


立て札のそばから入ると車が通行できそうな幅広の道があり、少し先で分岐している。


右の道を登って行くとKDDIの電波塔が建っている。


さらに登るとまた電波塔。「デジタルツーカー中国」のプレートが見えた。


烏山山頂に着いた。岡山津島デジタル中継局の電波塔が建っている。NHK、山陽放送、岡山放送、テレビせとうち、西日本放送、瀬戸内海放送がここで中継放送されている。そして三角点にタッチ。山頂は木々が茂って眺望を得られないのですぐに引き返す。


3.半田山を歩く
バリケードの地点まで戻ってきた。向こうに半田山の道が延びているのに通せんぼだ。これが「自然教育研究林」を提唱するもののやることとは受け入れ難い。バリケードで何を守ろうとしているのか?自然を守るのは自然を理解し愛する人たちであって、自然教育はそのためにこそ必要なのではなかろうか。先達に習って、フェンスの向こうをよじ登る。何で、こんなことをしなければならないんだ!


こんなに良い道が遮断されていたのだ。「火の用心」と「禁止」事項を列挙した掛札に、わざわざ「岡山大学農学部付属演習林」の添え書きは何のため?樹種の名前や自然林のガイドなら納得できるのだが・・・。


落ち葉でふかふかの道なのだが、他所の家に踏み込んでいるような気分の悪さ。こんな気持ちで山を歩くのは初めてだ。と、向こうから二人の男性がやって来た。挨拶をしてしばらく話し込む。立ち入り禁止のことを話すと曰く「ここは子供の頃から歩いとる一番の山じゃ。そげんことは気にすることねぇ」、恐れ入りました。


分岐が現れて稜線寄りの右へ踏み込んだのは、ここまでまったく周辺の景色が見えないためだ。しかしこの分岐は、半田山山頂の東のようで、であれば半田山山頂も139mピークも踏み逃したことになる。


しかし、稜線を歩いているはずなのに眺望がない。そうこうしているうちに大木が現れて行き止まり、道が右に折れている。


緩やかな下り坂を行くと3本の倒木。跨ぎ、そしてくぐって前進する。


緩やかな下りが続き、やがて四差路が見えてきた。気付かないうちに半田山を通り過ぎてしまったようだ。




4.ダイミ山から岡山理科大へ下山
四差路を東に進む。動物の捕獲檻が仕掛けられているが、周辺は明るくてノープロブレム。
すぐ先に「頌」と刻まれた碑がある。功徳をほめ讃える文字である。続いて「半田山演習林設置に当り右三氏の功績をたたえこの碑をここに建てる 岡山大学」と三氏の氏名と共に刻まれている。Wikipediaを引いて、「演習林」とは「林学の研究や教育のための実習林・実験林であること、大学における研究・教育のほか、高等学校などとの連携授業や市民向けの公開講座などで活用される」と知ったが、はたして今、実情はどうなのだろうか?自然に親しむことへのバリアになっていなければと願うばかりだ。


この道も落ち葉で心地よい。緩い傾斜を登って行く。


ピーク近くで山側に気をつけていたら、左に三角点らしきものが目にとまる。駆け上がると三角点があった。見えていたのは、そのそばに立つ石柱だった。よく見ると微かに「71|70」と刻まれているようだが、何を意味するのかは不明。それにしてもダイミ山とは変わった名前だ。どんな由来があるのだろう。


東へ向かう坂を下り進む。


どこのものかわからないが、大きな電波塔と出合う。


その周辺にクサイチゴ(草苺)が群生している。


害獣捕獲檻があり、送電鉄塔が見えてきた。


送電鉄塔の向こうに岡山理科大が見えてくる。緩い下りの坂道が続く。


坂道を下り進むとゲートがあり、岡山理科大学の敷地に着いていた。


キャンパスの建物が素晴らしい。見上げながら正門の受付に足を運び、山側からキャンパスに踏み行ってしまった事情を説明する。二人の女性の応対はたいへん親切で、ここからのバスの便や経路などについても細かく教えていただくことができた。


ホッとした心地で、教えていただいたエスカレータ脇の階段を下りる。右側の斜面を芝桜がピンクに彩っている。階下にはバス停があるが、バスを待つことなく坂道を下り進んで宇野バス法界院バス停まで歩く。
今回の山行、楽しい人たちと出会うことはできたが、あまり愉快な山ではなかった。しかし帰路の途中、2年前から思っていた山並みを歩けた満足感が湧いてくる。

