1.1234段直登コース登山口へ
駅前でサングラスや地図の準備をしていたら、客待ちタクシーの女性運転手さんが笑顔を送ってくれる。暇爺さんの山歩きにエールを送っているなと勝手に解釈したのだが、それにしても運転手さんも暇そうである。
駅前を右にとり、次の角を清音支所の方へと右に、またその次の角を右に曲がって、次の交差路は左にとって、あとはひたすら歩道を歩いていく。歩くほどに、本当にこの道で間違いないかと不安になるのはいつも通り。何しろ間違った方向へ進んでしまうと、歩いて修正する他ないのだから気にかかる。
2kmほど歩いたところでゆるい右カーブになっているのは、地図とマッチ。もう500mも進めば、1234段コース登山口に近い歴史広場駐車場があるはずだ。
道路左側にJA清音倉庫があるのも地図通り。右側に歴史広場駐車場らしい広場が見えてきた。車がたくさん停まっている。
歴史広場は「峠古墳群」と呼ばれ、6世紀後半〜7世紀中ごろに造られた67基もの円墳があるそうだ。
一見すると、墳墓というより住居跡ではないかと思われるほど、四角い窓が同じ方向に並んでいる。
歴史広場は福山へ直登する登山口の目印でもある。岡山県道469号(倉敷総社線)を渡ったところが登山口へのアプローチ。
左へ進むと階段があり東屋が見えてくる。間もなく登山口だ。
2.1234段直登コースを登る
東屋でリュックを下ろして休憩していると、中年の女性が下りてきた。声をかけて山頂の状況などを確認する。そのかたわらを、山ガール姿が挨拶をして通り過ぎていった。
スポーツドリンクで水分を補給し、ストックを調整して軽やかにスタートする。
よく整備された階段が延びる。段差が小さいので歩きやすい。山道はとてもきれいに整備されている。
山ガールから数分遅れてスタートしたのだが、しばらく進むと彼女に追いついた。彼女は一歩一歩をとてもゆっくりと踏みしめながら進んでいる。こちらはいつものペースで歩いており、疲れたら適当な場所で休憩すればいいと追い越した。
ほんの少し後、息が上がって小休止する間に彼女が通り過ぎ、遠ざかっていった。その後も何回か彼女に迫るが、水分補給や小休止を繰り返すうちに視界から消えてしまった。ゆっくりでも、休まずに一歩ずつ足を運ぶことが高度を稼ぐという成果につながることを、彼女は当然のようにやっている。
ここを山歩きのトレーニングに利用している人たちがいると聞いていたが、奇しくも急坂登りの見本を目にすることができた。
木製の階段には100段ごとにプレートが取り付けられている。ついに800段まで登った。ここまで、平日にもかかわらず多くの人と出会い、この山を楽しむ人の層の厚さを感じる。
むむ、800段から急に傾斜がきつくなったように感じるのは気のせいか?
右折すると浅原方面への道が延びる。900段の手前にあるベンチにちょっと腰を下ろしてみた。
続く急階段を登り切ると大きな岩があり、それを回り込んだところに1200段のプレート!
喘ぎながらの35分、ついに山頂に到着!振り返ると総社方面の素晴らしい眺めが広がっている。
3.福山山頂~妙見展望台
双眼鏡を取り出して、まずは北側の風景を眺める。先に到着した人が何人もいて、階段を降りていく人たちも。
ここでゆっくりと弁当を食べる。山頂は広く開けており中央部に三角点がある。
北側の総社方面の風景。手前の赤い屋根はカルピス工場だ。南に目を向けると福山決戦650年を記念した「憶福山合戦」の碑がある。隣接した石柱には「贈従四位大井田氏經卿表忠之碑」と刻まれている。
南側に猿田彦神社への道がある。南面は中庄から岡山流通センター、児島湖と金甲山などの山々、そして写真では定かでないが、その山々の向こうに四国山脈を望むことができた。
福山合戦の解説や福山城跡の案内板があり、東側には福山城門の列石の跡がある。
山頂東北部には福山合戦660年の記念碑があり、東に開けた山道を進んで行く。
木々と調和したTVアンテナの群れ。妙見展望台は手元の地図には見当たらないのだが、わずか300mなので出かけてみる。
ここが妙見展望台だ。絶好の位置に東屋がある。北側に広がる大パノラマにしばし見とれる。
4.摩崖仏~八畳岩~幸山城跡
もとに戻って下りて行くと素晴らしい石仏に巡り逢うことになる。蓮華に乗り冠をつけた摩崖仏だ。
伐採された木の断面が面白い。真ん中にクリームを詰めたバウムクーヘンのようだ。さらに八畳岩に向かって下りて行く。
八畳岩までの道の両側には大勢のお地蔵様が出迎えてくれる。それぞれの姿や表情が個性豊かで、思わずカメラを向けてしまう。
八畳岩の標識だ。左へ回り込むと小屋があった。
大きい!確かに八畳岩だ。ここにも摩崖仏があり、岩の下には石仏が並んでいる。
もうひとつの絶景ポイントである幸山城跡へと急ぐ。
歩き始めるとすぐに「福山山頂へ」の道標。その文字に続いて845段と記されている。これを入ると、中腹をトラバースして直登コースの845段目に出るらしい。道標をやり過ごして進むと幸山城(こうざんじょう)跡に到着。
幸山城跡の碑と解説板が設置されている。
北側には大きな石が散乱しており、ここから旧山陽道を一望できる。写真はズームで寄った総社市中心部。
鬼ノ城から砂川方面の遠景と鬼ノ城のクローズアップ。
備中国分寺方面の遠景と国分寺五重塔付近のクローズアップ。
5.幸山からの下山
下山を始めると小さな御堂があった。「奉納・薬師御假堂」と書かれている。竹林の中をさらに下りていく。
途中に通行禁止の標識。右の遊歩道をたどると「ふれあい広場」への道標がある。
ふれあい広場からの遊歩道入口に出てきた。前回とは逆に、農家が点在する方へと緩やかな舗装道を進む。
スタートした登山口から1kmばかり北に降りたので、大きな道路に出てから南へ向かう。しばらく進むと、行きに歩いた歴史広場への県道が見えてきた。
上りの直登コースは、所要時間約35分と短かったが息が上がった。しかしその間に多くの人と出会うことができ、とりわけスローテンポの山ガールさんの歩き方は大変参考になった。
また下りのコースは、人が少なく山林を保守している人と挨拶を交わしただけだったが、1時間余りに渡って、絶景を眺め石仏を拝みながらの楽しい下山になった。