1.出発〜スタート地点
相棒が作ってくれた弁当とお茶をリュックに詰め、JR津山線玉柏駅に出て9時28分の津山行き列車を待つ。
2つ目の野々口駅まではわずか12分と近い。
到着するとハイカーらしい女性の一団が下車する。リュック姿ではあるが山歩きとは関係ないようだ。
やがて男性のリーダーらしい人が現れて別方向へ移動していった。
さあ、ここが今回の出発点だ。
2.JR野々口駅〜中山
出発は9時45分。
歩き始めは国道53号線なので交通量が半端ではない。山歩きに来たことを忘れてしまうほど大型車が騒音を立てて走り、乗用車が風を切る。コンクリートで仕切られた歩道を歩いているにもかかわらず、怖くなってしまう。
1,300mほど歩くと虫名池があり鴨が群棲している。ここに中鉄バスの「野々口西」停留所がある。
100mほど先に賑やかな看板があり、クラシックカー・ショップには真っ赤な英国車などを展示中。リペア工房と思しきシャレた建家では、有名どころのエンブレムが壁を飾っている。
その先からは国道を避けて、あぜ道と農道を歩く。
中鉄バス中山停留所がある橋に到着。53号線を左折した橋を渡って行く。
ここから中山舗道コースが始まる。この位置からもしだいに傾斜がきつくなっていることがわかる。
すでに時計は10時20分を指している。
3.中山舗道コース〜北野分岐
中山舗道コースに入って300mばかり急坂を登ると、右手にポンプ場が見えてくる。
ふり返ると、中山のあたりはもうかなり小さくなっている。
なだらかな道と急な坂とが交互に現れて退屈しない。
急坂の手前で小休止。左の幹に立てかけているのは、先ほどの茂みで見つけた天然木のストック。
中山舗道コースから辛香車道コースに回り込むポイントを間違えそうになり、地図との位置関係が怪しくなる。
しかし、双眼鏡で送電鉄塔のNo.を確認することができた。送電鉄塔情報が記載された詳細地図(1/12,500)は実に便利である。このような状況では、双眼鏡は里山歩きの必須アイテムといえる。
こうして三差路に出た。進行方向を左折すれば北野北側方面の車道コース。めざす北野分岐へは右折して進む。
中山から45分が経過、北野分岐が見えてきた。
これは右上写真で左側方向に踏み込んだところで、北野分岐から辛香車道下りコースの眺め。
4.辛香車道コース〜NTTドコモ金山無線中継所
北野分岐を左折してゆるやかな辛香車道コースを登って行く。
九十九折りの道が続き、その途中で初めて人に出会う。燃料の木々や枯葉を集めている様子の男性は、上まで行くと東側に赤磐市の眺望が素晴らしいと教えてくれた。
坂の終端に差しかかると中国セルラー無線局が見えてきた。
カーブの先には、下界から眺めていた山頂付近の巨大な無線塔が姿を現し、しだいに近づいてくる。
いよいよ真下に来て見上げた状態。近づこうとしたら、行く手をロープが遮り進入禁止の標識。この標識から、ずんぐりした方はNTTドコモ金山無線中継所の送信塔であることが判った。
近づけないのでカメラで接近すると、ドラムのような沢山のアンテナが貼り付いている。後方の赤と白の縞模様の塔は無名の巨大無線塔だ。
ここまで周囲に注意をはらいながら登ってきたが、途中に見晴らしのきく場所は少なく、また黄砂で風景が煙っていたせいか、先の男性から聞いた赤磐市側の眺望を楽しむことはできなかった。
5.妙見宮〜金山山頂
頂上に近い三差路の風景。妙見宮に向かうべく右の道へと進む。柵の右向こうに妙見宮の石鳥居が見えている。
鳥居の階段を上がっていくと一対の石灯籠。
銭に剣を突き刺している狛犬がいる。そのそばを社の正面へと進む。
背後には立派な神殿が建ち、その位置からは2つの巨大な無線塔がすぐそばに見える。
三角点は妙見宮の奥まった場所にある。近くには「大山智明大権現」の碑。
妙見宮の西には展望台があり「倖せの像」が建っている。かつてここに開設された金山休暇村を記念して、岡山の彫刻家である宮本隆さんが制作したものだ。
ちょうど正午なので、この下でおにぎり弁当の昼食をとった。風が冷たく、魔法瓶のお茶が体を温めてくれる。
野々口駅から山頂までの所要時間は2時間20分。辛香車道に入ってからは路面が舗装されているので、今ひとつ山歩きの感じがしなかったが、通行車両がほとんどないことに加え、木々の緑と木漏れ日が道中を十分楽しませてくれた。
食事をしているとガサゴソと草を分ける音がして、お父さんと小学校上級生と思われる二人連れが現れて挨拶を交わす。
林の向こうの建物は、国民休暇村時代の休憩施設かと思われる。今は廃屋だが、ここでコーヒーなどを飲むことができればハッピーだろうと思う。
展望台には雰囲気のいい案内板。山頂を起点にしてあちこちの観光ポイントにアプローチできるようだ。
金山西峰方向に進んで高台に上ってみる。
すぐ近くに電波塔3基を望むことができる。と思いきや、少し角度を変えズームインすると実は4基であることがわかった。
6.南面九十九折り〜金山寺
13時10分、再び三差路に戻って南の道を金山寺の方へと下りにかかる。
急な九十九折りの舗装道が続き、時々上ってくる乗用車とすれ違いながら下りて行くと、2kmほどでエースセンターがある三差路に出た。エースセンターは産業廃棄物の最終処分場で、大きなプラント設備が山腹の広大な用地に設置されている。
右に取って西に進むと金山・笠井山連絡道路、左に取ると金山寺から岡山市街に至る。
金山寺の方向に600mばかり進むと、集落が見えてきた。
間もなく招き猫美術館があり、ここで少しの間かわいいネコたちと対面してくつろぐ。
さらに1kmほど下って、三差路のヘアピン状の道を上ると、金山寺の山門と三重の塔の美しい風景。14時35分、山門に到着した。立派な仁王門は改修中だった。
お寺は概ね高台にあり長い階段がつきものである。
立派な本堂は天台宗の古刹で国指定の重要文化財。「金山寺文書」をはじめ、数々の貴重な文化財が保存されていると聞く。
境内には大勢の人たちが集まり欄干に竿を縛っている。何事かと尋ねたら、明日は裸祭りだという。午後3時から子供はだか祭りがあり、夜から大人のはだかが出るそうだ。
本堂東側の坂道を上って行くと見事な三重の塔がある。
裸祭りはいつ頃からやっているのかと尋ねると、さりげなく1200年ぐらい前からとの答え。これはすごい歴史だ。
先ほどまで竹を括りつけていた場所に、裸祭りの暖簾が掛かっていた。
15時ちょうどに金山寺を後にする。牧石車道コースを下っていくと、畑石鉄神社の天に届くような長い石段が現れる。
この神社のご神体はもともと金山寺に祭祀されていたものが、その後、石鎚山の行場の再現としてここに移されたらしい。石鉄神社と称しているが、実は真言宗石鉄派本山前神寺の真言密教の道場とのことだ。
とてもチャレンジできる雰囲気ではないので、手を合わせただけで先を急ぐ。
やがて山陽自動車道にさしかかり、高架下を通り抜けると牧石小学校だ。
牧石小学校からさらに東へと歩き、大原橋バス停から帰路につく。時刻は16時5分、歩数計は26,430を示している。
それにしても、下り道は良いとこなしだった。
山頂にいたころから、岡山空港を飛び立つジェット機の音と、工事のような騒音が聞こえていた。これはかなり耳障りで、静かな山歩きの楽しみを無遠慮に壊してしまう。また、牧石への車道谷側にみられた不法投棄も気になった。
下山路は産廃運搬トラックが頻繁に行き交い埃っぽく、白線だけの歩道帯は気をつけて歩かなければならない。これらの意味で、金山は山歩きに不向きなコースと言われるのかも知れない。しかし、すれ違うトラックに挨拶を送ると、スピードを緩めて路肩いっぱいに寄ってくれた、互いに譲り合いの道でもある。
こうして、望んでいた山を無事に歩けたことには感謝である。