1.耳岩神社からスタート地点
車を下り立つと東にこんもりとした芥子山が見える。備前富士と呼ばれているようだが、ここからはその姿はうかがわれない。
手前の高台には住宅団地があり、その下の平地をJR赤穂線が通っている。道路を直進して踏切を渡ろうとするが、突き当たりのように感じて左折する。
耳岩神社への案内板が立っている。神社に参拝して取り付きにある送電鉄塔No.10へのルートを上ろうと、住宅の路地を進んで行く。
社の脇には備前焼でつくられた大きな耳と香炉が設置されている。香炉で線香を焚いて、その灰をひとつかみして備前焼の耳をなで、その手で耳をなでると効能があるそうだ。
奥の院に向かって細い石段を登りさらに上へと進む。御神体の大きな耳の形をした岩があり、小さな祠が祀られている。
奥の院から登山道を探すが見つからない。引き返す途中に「桜公園」の標識があったのでそちらへ進んでみる。少し行くと西側に視界が開け、百間川から岡山市中心部が広がっている。
しかし、しだいに道が消えて行く手を薮に遮られる。ヤブコギを試みるが身動きできなくなり、しかたなく引き返すことになる。
引き返す途中、先ほどは突き当たりになっていると思っていた踏切の向こうに、住宅団地へ上がる道路が見える。あれを上がって送電線路を目安に進もうと考えながら歩いていると、通りがかりの車から声をかけられる。
「どこか登れる山がありますか?」という変な質問なので、「こんな山へ行くところですが」と地図を見せた。
「自分も行きます。車を置いて追っかけます」ということなので、踏切を越えて団地の方へと急いだ。
2.芥子山頂上へ向かって
目黒町の住宅団地の坂を上がっていると、車を置いた先の御仁がすぐに追いついてきた。これが縁で、二人で話しながらの楽しい山歩きが始まった。
舗装道から外れて山道に入りたいのだが、そのポイントがなかなか見つからない。北西の隅にある畑地に入り込んでそれらしい道を見つけて進むことにした。
団地の外周道路を東に進めばもう少し楽に登れたのかも知れないのだが、そのうち目印である目黒配水場タンクが見えて、最初の目標であるNo.10送電鉄塔へ出ることができた。
歩き心地のよい山道が続きポカポカ陽気だが、時々出合う分岐をどちらへ進むか戸惑う。まったく道標が無いので、送電線の位置をたよりに進む。道中の話から、同行の御仁は山歩きのベテランであることがわかってくる。
時おり遠方に見える航空標識塔と送電鉄塔番号を確認しながら進んで行く。送電鉄塔はついにNo.63までたどり着くことができた。
舗装道に出て少しすると休憩施設に着いた。目黒町住宅団地から1時間半ばかりでの到着だ。休憩施設は広く清掃が行き届いており実に気持ちいい。ここで簡単な昼食を済ませる。
3.芥子山山頂〜航空標識
13時ちょうどに南峰山頂に到着。東屋には山ガールとおぼしき二人の先客が休んでいる。その東屋は後回しにして、まず展望がきく南面に立つ。
山頂から見下ろす西大寺方面と北に寄った備前方面の眺望。
東屋から見た岡山方面と赤磐市旧山陽町方面。右の写真の左手奥は高倉山で、肉眼では中央あたりに、山陽団地に設置されている赤磐市特産の桃を形取ったガスタンクが見える。
赤磐市方面の北側を注視すると、遠くに雪をいただいた山々が見える。もしかすると那岐山あたりまで見えているのかも知れない。
続いて北峰の航空標識施設へ行ってみる。施設は厳重な二重鉄柵に囲まれている。
柵の中には変わった形のアンテナらしきものが林立している。この中に三角点があるはずなのだが確認できなかった。
このあたりには道標や標識がたくさんあり、あちこちにハイキングコースが設定されているようだ。
4.大多羅寄宮跡(おおだらよせみや)〜布施神社〜寶泉寺
ふたたび舗装遊歩道へ出て西側の果樹園の方へ向かう。山の斜面にブドウ畑が広がっているが、栽培放棄で荒れた部分も少なからず見られ後継者難をうかがわせている。
畑中の細道の分岐を切り分けながら大多羅寄宮跡へと進む。このルートで、同行の御仁は裏返しになった矢印案内板を発見して、「これは上り側から見るはずの矢印だから、裏が見えているここが降り口に違いない」と判断したのには驚いた。もしこれを見落としていたら、周辺の細道をさんざん歩き回ることになっていたに違いない。さすがにベテランだ。
大多羅寄宮跡から南へ降りて行くと、布施神社・寶泉寺への参道に至る。
石鳥居をくぐって長い石段を上ると布施神社の立派な社。境内は清掃が行き届いて落ち葉もなくきれい。奥の方には朱が美しい稲荷神社もある。
石段を下りて奥へ向かい寶泉寺に参拝する。
元に戻ってさらに降りて行く。竹林の向こうには民家があり、すぐそばがJR赤穂線の大多羅駅である。
航空標識から寺社に立ち寄りながら、約1時間10分かけてゆっくりと下山した。こうして十分に芥子山散策を堪能した後は、御仁が車を停めている住宅団地まで歩き、帰りは後楽園まで送っていただくことに。
偶然に出会った御仁が山歩きにのベテランで好人物であったことから、今回の山行はとても楽しいものになった。