1.登山口を目指して
岡山駅から渋川行き特急バスで40分足らず、八浜市民センター前バス停に着いた。少し戻って東に向かう道路を進むと、左彼方に金甲山が見える。
何度か行きつ戻りつしたが、左の木立の向こうに見えるのが、進入口になる庄公園であることがわかった。目安にしていたNo.123送電鉄塔を双眼鏡で確かめて、公園の左側から入り込んで行く。
舗装道に出たので、左へ折れて鉄塔への進入路を見つける。
ところが、鉄塔の周囲から東にアプローチできる道がまったく見あたらない。
東側からの入り込みも竹林に遮られていて、どうしても前進できない。西側から登って、No.124鉄塔までの途中に東への経路がないか調べてみるがこれも見あたらず、送電鉄塔からのアプローチは諦めざるを得ない状況になった。
鉄塔への進入路にもどって東に進路をとり、円通庵からの登りを試してみる。
水平方向に延びる車道との分岐を通り越して上がるとお地蔵様があり、その脇道を登って行くと畑道になってしまった。
そこで会った地元の人に尋ねると、このあたりから金甲山への登り道はすべて廃棄されていて、車道も通行禁止で登れないとのこと。
2.車道を山頂に向けて
あきらめて帰りかけた時、偶然に出会った土地の人に尋ねると、徒歩なら車道を行けるかも知れないとのこと。
先ほどからの道を再び東に進んで、林道波知線の起点に来た。すでに時刻は13時20分で、八浜のバス停到着から3時間近くたっている。ここが実質的な登山の開始地点になる。
車道を足早に進んでゆくと右側に上水道の施設がある。
林道波知線の起点からわずか15分ほどで、道路崩落による立ち入り禁止になっている。
先日登った常山の凄まじい崩落現場が思い出されて、金甲山で同じ風景は見たくないと一瞬たじろぐ。
しかし、そんな崩落があれば引き返すまでだと気を取り直して前進を始める。
双眼鏡で鉄塔No.32を確認。これはNo.123鉄塔の西側にある送電ルートだ。
西側下にカメラを向け、ズームインして八浜の住宅地を確認する。道路の先はカーブミラーが傾き、落ち葉が路面を汚している。
連なる送電鉄塔からNo.125鉄塔を確認して、少しだけホッとする。
山頂の電波塔が見えたところで、カーブを過ぎたら道路の両脇が崩落している。山側は土留めこそ残っているが、大きく崩れて谷側へと土砂が流出したようだ。これに連動して、谷側の遥か下まで土砂が落下しているのがわかる。たちまちの通行には問題ないようだが、雨が降るときわめて危険になるだろう。
人も車も通らない道路は少々気味が悪い。それでも徐々に高度を稼ぐことができて、山頂へ向けての九十九折りに差し掛かってきた。このあたりでも、ガードレールが外れたままで放置されている。
落ち葉で埋まった車道を歩いて行くと、工事中の標識が見えてきた。
ここで崩落ルートが終わりかと思っていたら、その先の道路が路幅の半分以上に渡って崩れ落ちている。これでは車両が通れないわけだ。
その先の道は無事だが、山側の岩にはあちこちで割れ目や緩みがみられ、さらに崩落が進行するのではと気にかかる。
こんなに厄介な場所ながら、風景はとびっきり美しい。
ようやく林道の終点になり、通行禁止もここで解除になっている。
すぐに車道と出合い何台もの車とすれ違う。どの車もかなりスピードを出しているのが気になる。路肩に大きな防火水槽があった。
この道路も路肩が破壊されている。唯一の車道なのだろうから、これ以上崩壊が進むと車両での登頂はできなくなってしまうのではないかと心配だ。
やがて郡方面へのハイキングコース入口があり、その先に山頂の駐車場が見えてきた。
3.金甲山山頂にて
駐車場の案内板には児島のロードマップが掲示されている。東に向かえば貝殻山・八丈岩山が近い。金甲山には車で来るのが常識なのだろうか、予想以上に車の出入りが多い。
駐車場の北側には展望台がある。
北側展望台からは岡山市内がよく見える。手前に児島湾があり岡南の工場や商業施設が広がる。西にはすぐ近くに怒塚山(332m)がそびえている。
駐車場からテレビ電波塔が林立する高台に上っていくと山頂だ。
2階建ての展望台の屋上に上がると二等三角点がある。
展望台屋上からの見晴らしは抜群にいい。ただ、ガスがかかって遠望が効かないのは残念だ。
屋上には小さな祠があり自然石を祭壇にして神を祀っている。また展望台の南東下側には、拝石(おがみいし)という祭祀遺跡に祠を建立して天神地祗(てんじんちぎ)の神様を祀っている。
そして周辺にそびえ立つテレビ送信アンテナ。これらは金甲山のシンボルでもある。
4.郡(こおり)に向けての下山
郡へのハイキングコース入口まで戻る。15時30分、ロープが張られた長い急階段を下りて行く。
5分ほどで金毘羅宮に着いた。時間が急いていたので、離れた石鳥居の傍から参拝する。
最初はっきりしていた道がしだいに判りづらくなってくる。薄暗い林の中を注意深く進んでいく。
こんな手作りの道標があるとホッとする。ただしこの道標は無視してひたすら直進する。
目指していた261.5m地点の三角点と巡り合えたのが一つの節目。次の目標はNo.128送電鉄塔だ。
中池への道標があり、間もなく目標の鉄塔にも到着。
ところが鉄塔から下って行く方向が判りにくい。あとは地図を頼りに進んで行くが、細い急坂に落ち葉が積もっていてスリップが怖い。目を凝らして注意深く下りていたら大汗をかいてしまった。1時間足らずの下山だったが、中池が見えたときにはかなり疲れ気味。ゆっくり給水し行動食を頬張って一休みした。
郡からの登山口にはベンチがあり杖が準備されている。のどかな里道を歩くのは気持ちがいい。
掌善寺で一礼してバス停へと向かう。ところが郡のバス停からは岡山方面への便はほとんどない。別のバス停を探すが、方向違いで東郡に着いてしまう。多くの便がある西郡バス停を見つけるまでさんざん歩き回り、暗くなっての乗車となった。
八浜側から金甲山に登ることはもうないだろう。延々と続く舗装道路と崩落には辟易した。また山歩きをしている人と出会えなかったのも残念だった。今回は、頼りにしていたガイドブックに裏切られることになってしまったが、これはこれで収穫としよう。
次は郡から出発して、怒塚山を経由し金甲山方面へのルートを歩いてみたいと思っている。