1.香登駅~香登廃寺跡~油瀧神社登山口
集合時間の御前10時、香登駅前には大勢のメンバーが集う。かなりハードなコースなので参加者が少ないのではと思っていたが、何のなんの、元気で明るい顔の多いこと! 「メンバーにも後期高齢者に近い人が増えたので、今日はムリしないでゆっくり歩きます」と会長の開口一番の弁、それに続いて今回の行程説明などがある。
最初に訪れるのは香登廃寺跡。陸橋がしなりはしないかと思うほどの列。鉄道をまたいで新幹線架橋下を東へ進む。
1.5kmは歩いただろうか、左折してさらに入り組んだ道を進む。
熊山の南山麓の谷筋に、伽藍は南を向いて建っていたらしい。未調査のまま建設用地となったので遺跡の内容は不明。残念ながら、跡地には完成間近なアパートメントを観るばかりである。そして、Uターンして香登駅方面へ引き返す。
戻る途中、右側の石垣塀の上に「史跡・一里塚」の石碑がのぞいている。旧山陽道に沿って立てられた塚で、大内神社境内の塚は備前市内に残る唯一のものである。
香登小学校の前を抜けて北進すると「油滝神社 本殿道順案内図」の掲示板。
さらに進んで橋を渡ると備前焼窯元の煙突が立つ。
そして分岐。以前はここが登山口と思っていたのだが、真新しい道標には「熊山 香登登山口 140m」とある。
右にとって舗装道路を進むと登山口で、「山頂まで約2時間です」と記されている。
2.毘沙門堂~姫大神神社~油瀧神社
一歩踏み出すと「油滝神社参道」の標識がある。皆さん、急坂をしっかりとした足取りで登って行く。
急な丸太の階段や岩がむき出した道を進んで毘沙門堂に着く。
参拝を済ませて小休止。鼻のでかい鬼瓦が印象的だ。
毘沙門堂を出発するといよいよ傾斜が急になり、段差が大きい岩の階段が増えてくる。
岩のデコボコが多い急坂を登ると左手に展望岩が現れる。展望岩を過ぎるとしだいに傾斜が緩む。
「油瀧神社」の鳥居をくぐると穏やかな尾根道歩きに変わる。
姫大神神社(ひめおおみわじんじゃ/ひめおおがじんじゃ??)に着いた。
拝殿前の暗い部屋に入って参拝し、外に出て本殿を撮影する。
傍らには小さな祠が祀られている。
チョイ休みでスタートして、「油瀧神社」の第二鳥居をくぐる。
油瀧神社上之宮に到着。ここも重要な遺跡で、2種類の花紋の瓦当(がとう:軒丸瓦の先端の円形または半円形の部分)が採取されている。白鳳時代後期のものと推定されているが、同じ時代に山上寺院が形成された事例がなく、いずれの瓦当も評価が困難であるとのこと。どこからかやって来たのかな?
備前焼製の阿吽の狛犬が並ぶ。阿形は愉快な表情の獅子、いっぽう吽形の狛犬には銀色の金属っぽい角がついているのが面白い。
3.熊山遺跡と山頂風景
ここまで来たら山頂は近い。取り付きの坂を登れば緩やかな道が続く。
7分で右に電波塔が見えて、さらに1分も進めば山頂駐車場に出る。
ここにも香熊会が設置した真新しい道標が立つ。その他の道標も大変分かりやすい。
熊山遺跡の方へ進むと右手に熊山神社への長い石段が現れる。熊山神社も今回の見学スポットだったが、時間の関係でパスする。本来は熊山霊仙寺の鎮守社だったものが、寺院廃絶後に地蔵権現社として継承されて現在の熊山神社に至っているとのことである。
だら長のゆるい坂を登って熊山遺跡(熊山石積遺構)に着いた。先着のハイカーグループが賑やかに集っている。
ここで出宮先生の講義を拝聴する。まずは熊山遺跡の形状と構築様相や構築時期などについて。そして、中世に存在していたことが判明している熊山霊仙寺のこと、それが古代山上寺院を継承していたであろうこと、この境内地に存在する宝篋印塔(ほうきょういんとう)のこと、等々。
時刻はすでに午後1時をまわっていて、ここでランチタイム。曇天で気温は低いが風がないので居心地は良い。
食事を終えて展望台に上がり、南東から南西に広がる眺望を満喫する。近くには蛇行する吉井川から児島湖、瀬戸内海を越えて小豆島、屋島、五剣山などを見渡すことができる。
4.鍛冶神様と南山崖の石積遺構を見学して下山
午後から鍛冶神様石積遺構と南山崖石積遺構を見学する。熊山遺跡の北側を左(西)にとって、弓削方面へ下りるコースを進み、300mばかり行ったところで左折する。
2分足らずで鍛冶神様石積遺構に出会う。マップから分かるように小さな尾根の上に築かれている。コの字状の石積で、その中央に刃物の神様である鍛冶大明神の小さな祠が祀られている。
左折した位置にとって返し直進する。尾根道を進んでいると右側に空間が開けて、二カ所にはっきり石積と思われるものが見えた。
すぐ近くに「石積遺跡」の表示があった。規模が小さいので、何のための石積なのだろうかと不思議に思いながら、轍が残る道をどんどん歩く。
送電鉄塔が見えてくる。マップを眺めるとこの鉄塔の付近からアプローチできるはずだ。
通行止めのチェーンを張った道があり、それを越えて進むと、左側の木に「石積遺跡・南山崖3号 下200m」の道標が吊されている。
急坂を木につかまりながら下り進むと、すでに石積上部には出宮先生の姿。
先生は南向きに立っていらっしゃる。その正面は大量の石が無造作に積み上げられた感じだ。これは発掘などによって散在したものらしい。
ところが左右の下部を見ると様相が異なる。下の写真はそれぞれ西側と東側の下部だが、明らかに擁壁状に構築されていることが分かる。また確認はできなかったが、東角には水源施設があるそうだ。このことから、この石積は単なる塔やケルンではなく、構築物と思われるとのことである。
これで今回の見学は終わりだが、まだ多数(大小50カ所以上と推測される)の遺構が存在するそうだ。何と、ここで閉会の言葉があり、「香登駅まで気をつけて下りてください。列車の時刻は1時間に1本なので、間に合うと思います。では!」と言うことになった。現在の時刻は14時40分過ぎで、列車の時刻は16時18分。それって、間に合う?
山頂駐車場までは元の道を戻るより、一見遠回りに思えるコースの方が早く着けると聞いてそちらへ。途中で熊山駅からのコースに合流して、「竜神二つ井戸」を右に見て進む。
突き当たりを右へ回り込んで山頂駐車場に着いた。15時7分、止まることもなく油瀧神社への下山道へと入る。
油瀧神社を左脇に見て通り過ぎ、姫大神神社そばの鳥居をくぐる。その先からの下りは急で足場がよくない。ストックを取り出して、段差の大きい階段や滑りやすい斜面でバランスをとりながら急ぐ。毘沙門堂に着いたがすでに15時51分で休む暇はない。
登山口通過は16時ジャスト、山頂駐車場から53分での下山だ。列車の時刻まで残すは18分、最後は慌ただしい移動になった。