1.天神山登山口へ
天神山方面への接続バスが少なく、これに合わせて高梁駅にはゆっくりと9時過ぎに到着だ。北隣の備北バスセンターに移動するが30分も待ち時間があり、近辺のコンビニへ出かけてドライフルーツなどを買い込む。
4番乗り場から坂本行きに乗る。同乗者は高齢のご婦人ひとりと、ビジネススーツの30代男性2人の合計4人である。
目指す天神山登山口までは約1時間。同乗者はみな成羽バスセンターまでに降りてしまい、貸切状態での移動になった。県道33号線をひた走る途中、運賃表示器のバス停名に「用瀬上」が表示されたあたりで、右側に岩山の絶景が広がり急いでシャッターを切る。
ほぼ予定通りに天神山登山口バス停に到着。登山口まで約300m、ゆっくりと来た道を引き返すと標識が見えてきた。
登山口に着いた。左側には駐車場が整備されていて1台とまっている。山には右側の細道から入って行く。
2.天満神社の四差路分岐へと登る
準備を整えて登りかけると軽自動車がやってきた。若い女性の二人組のようだ。ゆるやかな山道をゆっくりと歩き始める。
2~3分歩くとお地蔵さんがあり挨拶。さらに2~3分進むと細い渓流に出合って渡り、木洩れ日の杉林を行く。
時々、俳句を記した標識がある。渓流のせせらぎの音を聞きながら進む。
渓流沿いにヤマエンゴサクが咲いている。春先にしか姿を見せない花との対面はラッキーだ。自然石を積んだ石段があらわれ傾斜がきつくなってきた。
大きな石が堆積したガレ場になり、渓流の一部が流れ込んでいる。行く手には岩を抱え込む樹木。すさまじい生命力が伝わってくる。
擬木の階段に変わり時どき倒木に出合う。あちこちに可愛いスミレが花をつけている。
五合目に差しかかった。頂上まで1200mの標識。傾斜のきつい階段が続く。
大きな岩が増えてくる。岩の裂け目から伸びる木。苔むした岩壁には亀裂が生じている。
頂上まで700mの標識。階段も地面もツバキの落花に彩られている。
岩屋があり石仏が祀られていた。
七合目に到達する。急な階段がまだまだ続き、水分補給も小休止も立ち姿勢のままでとる。
右側の巨岩に大きな裂け目ができている。「鬼の門」と呼ばれているようだ。
擬木の階段に薄いピンクの花。何と、こんなところにカタクリが花をつけている。思わず擬木に顔を近づける。
道辺にもう一輪、優美な姿をカメラに収める。急坂を行く足取りが軽くなってきた。
次はエンレイソウだ。独特の3枚葉の中心に、3枚のガクを見せて横向きに咲いている。漢字で延齢草と書き、成長の遅い植物である。発芽から開花まで10年を要し、株の寿命は50年と言われる。
八合目の標識だ。階段の傾斜がいっそうきつくなる。
道辺をエンレイソウの柔らかな緑が飾っている。「もうすぐ頂上」の標識。だが、もうすぐなのは頂上分岐であって、天神山山頂はまだまだ先であることが後でわかる。
その先にはカタクリが群生していた。
ちなみにこの花も開花までには7~8年を要し、平均寿命は40~50年という。この点はエンレイソウとよく似ている。一方、開花時期と生態はヤマエンゴサクと類似する。どちらも春先に花をつけ、夏になると地上部の葉や茎は枯れてしまい、その後は地下で休眠する。開花期間が短いことから、カタクリやヤマエンゴサクは「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と呼ばれる。この2種類を同時に観ることができたのは実にラッキーだった。
最後の階段を登って四差路分岐に到着した。天神山山頂・明星崖・鈴振崖への分岐であるが、明星崖への道標はない。
分岐で小休止をとっていたら、男性1人・女性3人のグループが下りてきた。鈴振崖の眺望が素晴らしいと皆さんニコニコ顔だ。好天に加え、すっかり終わっていると思っていたカタクリの花に会えたことを歓び讃えあって別れる。
3.天満神社~鈴振崖
まずは鈴振崖に出かけることにする。道標にしたがって階段を登ると広場に出る。
さらに短い階段を上がると天満神社があり参拝する。境内を散策していたら女性2人組がやって来た。
南側の石鳥居をくぐって、140m先の鈴振崖に向かう。
歩きやすい道を行くとやがて岩場になる。部分的に急な場所もあるが、しっかりした擬木と鎖でガードされているので不安なく登ることができる。
鈴振崖からの眺めは最高だ。円形の方位案内板があり、北には花見山・大山から蒜山三座と新見市方面、東には津山市から吹矢ふるさと村・吉備高原都市と岡山・倉敷市方面、南には笠岡・福山市方面の風景が広がっている。
双眼鏡では大山と蒜山三座が見えるのだが、写真ではとらえられない。右側の集落にズームで寄ってみる。新見市哲多町のあたりが見えているようだ。
モヤっていて山名を同定できないのだが、北から北東方面の風景。
同じく北東から南東の風景。中央に吹矢ふるさと村が見える。すぐ右の奥方向が吉備高原なのだが判然としない。
南東から南へかけての風景。
南西方向の風景。真ん中のとがったのは弥高山だろうか。
こんな天上の風景をひとり占めしてランチタイムをすごす。時間が過ぎるのを忘れてしまう。
崖の上は転落防止用の杭とチェーンで囲まれている。南東側の杭には赤テープが巻かれており「観音滝コース、岩場あり」の文字。付近の木々に「中級者以上コース」と書いたテープが貼り付けてある。
北に険しい姿を見せる明星崖も絶景だ。
帰り支度をしていたら、下の方から明るい声が近づいてくる。さっきの女性二人組がやってきて、素晴らしい眺望をバトンタッチ!
4.明星崖~天神山山頂
天満神宮から下りかけたところに明星崖への道標がある。これが、その下の四差路分岐の道標と方向がミスマッチで、なんどか試行しながら登って行く。
鈴振崖からは険しく見えた明星崖だが、木々に視野をさえぎられているのでまったく自覚できない。到着した頂上にはベンチが設置されているが、眺望がきかないので即引き返す。
いちど天満神宮下の広場に戻って、天神山山頂に向かうことにする。
ところが途中から別の踏み跡に入り込んでしまい、ヤブコギしながら山道に戻りつく。
最後は笹藪の踏み跡に入って山頂に到達。周囲を木々にさえぎられて眺めはよくない。
山頂名標と一等三角点をカメラに収めて下山に移る。
5.下山して坂本バス停へ移動、西江邸に立ち寄る
四差路分岐まで戻って往路を下りて行く。
せせらぎの音が聞こえてくる。登りでは気づかなかったヤマブキの花が美しい。
県道に下り立ち坂本方面に向けて歩く。その間は約1km、点在する農家はどれも大きく立派で、どこか懐かしい感じがする。
坂本のバス停に到着。すぐ近くに、ベンガラの生産で豪商になった西江家の邸宅があるので出かけてみる。
急坂の舗装道を息を切らせながら上がって行くと、邸の庭で優雅な和服姿のご婦人に出会った。後でわかったのだが、このかたは西江家当主夫人であった。バスの待ち時間を利用しての訪問なので、入館できなかったのが残念。外観だけをカメラに収めて当地をあとにした。