1.伊部駅から伊坂峠登山口へ
伊部駅を少し西に進むと左手に側溝のような道路があり、線路下のトンネルをくぐって行く。
用水路に出るので道なりに進むと県道425号との交差点。これを右折して殿土井橋(とんどいはし)を渡り南へと歩く。
右側に備前焼陶芸材料の工場がある。向こうに見えているのは龍王山だ。
道路はゆるやかに西へとカーブし右手には備前焼の工房がチラホラ。
左側に下山池が見えてきた。雑木越しに下山池の備前水上ゴルフセンターを見ながら進む。
2車線の道路は下山池を過ぎたころから狭くなり、車が来ると路肩に身を寄せて安全を確保しなければならない。駅から45分が過ぎ、伊坂峠が近づいてきた。
2.伊坂峠登山口〜東ピーク
伊坂峠登山口は峠より200mばかり東(手前)にある。荒い階段状の岩がせり出していて、その上は涸沢になっている。登山口を示す手書きの標識があり、沢の右側の登山道を登って行く。
11時50分から登りにかかるが、15分ほどでとんでもない障害に出くわす。小さな岩壁なのだが登れそうにない。もし足を踏み外せば真下の沢に転落して、かなり酷い状態になるに違いない。あまりにも危険に思われて、別のルートを探したが八方ふさがりで、引き下がって帰るか登るかの選択を迫られることになった。
じっくりとルートのコンディションを確認する中で、以前に岩場で四つん這いになりながらも何とか乗り切った時のことが思い出されてくる。さらに、対象をじっくりと眺め直してみる。
岩の上方では、木に結ばれたピンクテープがお出でおいでと招いている。この間20分、まず大丈夫との見通しに立って、ストックをたたんでリュックに納め、リュックの腰ベルトを締め直して慎重に登りにかかる。
なれた人たちからは笑われそうなわずかな距離だが、教科書通りの三点確保による岩登りを試すことになった。岩の上には、そこに到達することが当然のように道が拓けていた。
少し進むとシダが繁る道になり、ほとんど道とはいえない急坂が待っていた。神経を集中してルートを確認しながら、ストックと周辺の木の力を借りてヤブコギで東ピークとおぼしき地点に向かう。
3.東ピーク〜西大平山山頂
ピークに着いたという感覚は全くなかった。何となく傾斜がなくなったのでピークと判断。ガイドブックによると片上湾方面の素晴らしい眺望が得られるはずなのだが、木が茂っていて見通しはきかない。西向かいに目的の山頂が見えるので位置は間違っていないはずだ。
山頂の方向へと再びヤブコギで下りる。
鞍部にたどり着き、水分補給をしてすぐさま登りにかかる。
10分ばかりで前方が開けてきた。山頂に到着したようだ。
4.西大平山山頂にて
山頂に着くと、まずケルンがお出迎えだ。近くの木に「旗振台」と記した手書きの案内板がある。他にも何か書かれているのだが消えかかっていて判然としない。
ケルンから少し西に、岩のかけらでガードされた三等三角点がある。
やはり手書きで「△327m 西大平山」の山頂標識があり、消えかかってはいるがルートの案内板が掛けられている。
旗振台から東の展望を確認する。この旗振台は米相場を伝えるために使われたものときく。モヤで霞んではいるが東方面はかなり遠望が効きそうである。
東以外は雑木で展望がきかず早々と西へ下りにかかる。
8分ほどで送電巡視路への分岐に出る。
5.送電巡視路を平岩からNo.200鉄塔へ
No.200鉄塔へ向けて歩き始める。送電巡視路に入ると路面が整備されていて快適に歩ける。
5分ばかりで平岩に着いた。ここばかりは急な斜面が消え去っていて、大きな平らな岩が敷き詰められている。時刻は13時37分、遅い昼食をとることにする。
平岩からの眺望は素晴らしい。備前から瀬戸方面の風景と北に横たわる熊山を眺める。
遠景の工場と香登方面にズームで迫る。新幹線の高架が延びており、スマートな車列が頻繁に、遠く走行音を残して通過して行く。
頭上に5羽のトンビが環を描いている。大きく写したいのだがカメラが追いつかない。そのうち風景が急に霞んできた。
14時13分、雨が近いかも知れないので急いで下りにかかる。目標の鉄塔が近付いてきた。
6.No.200鉄塔から下る
ガイドブックにNo.200鉄塔からの眺望は素晴らしいと書いてあったが、それどころではない。遠景は雨が降っているに違いなく、霞の帯がしだいに近付いてくる。
ついに霧雨が降ってきた。分岐に差し掛かり、ここは迷わず左へと進んで行く。
分岐の選択は正しかった。道標があり下山予定の福田までは300mとある。
やがてNo.6鉄塔に着く。この鉄塔番号については情報を持ち合わせていないので場所を特定できない。
鉄塔からは3方向への道があり、これと思って踏み出した先には沢が横たわり、かなり傷んだ橋がかかっている。その向こうには黄色いテープが長く延びている。よく見ると、テープの奥にはさらに多数の黄色テープがびっしりと結ばれており、これは注意喚起に違いないと判断して引き返す。
この判断は正しかった。別の道をたどると、ほどなく平地へ下り立つことができた。
下り立った地点には池があり、緩い下り傾斜の道を進むと目標の「進藤修陶房」の看板に出合うことができた。
ここからは平地の道路を歩くだけだ。振り返って今しがた降りてきた山をデジカメに納める。
新幹線の高架が見えてきた。そして福田の踏切はすぐそこだ。踏切を渡って左折して、しばらく歩くと香登駅に着くことができる。
こうして無事に下山して福田の踏切を通過したのは15時40分頃。香登駅からの電車にはかなり時間があるので、ひと駅つぎの長船駅まで歩くことにした。
ごく軽い気持ちで歩きにかかったのだが、しばらくして道を尋ねた高校生らしい二人連れの女の子には「エ〜!歩いて行くのですか?遠〜いですよ、ここからず〜っと」と言われる。かなり草臥れてきて、もう駅が近かろうと訊いた爺様には、「ちょうどここは香登駅と長船駅の真ん中じゃ」と教えられ、少々軽率であったかと後悔する。
結局1時間ほどもオーバーウォークして、長船駅には17時前に到着。遅い帰着となった。
今回の山行は、登山口をスタートしたとたんに、初心者の自分としては想定外の難所にぶつかり肝を冷やしながらの取り組みになった。もしかすると、引き返さなかったのは無謀だったと言えるのかも知れないが、とにかく一生懸命考え行動したことはよかったと思っている。また不慣れなヤブコギはきつかったけれど、薮の種類と特徴、急坂での周囲の木々の利用方法とストックの使い方などを知ることができた。
そんなことでヒヤヒヤドキドキが多かったけれども、低山歩きの別種の面白さを感じた山行でもあった。