1.JR邑久駅~登山口
岡山駅からJR赤穂線で25分、正午前に邑久駅に到着した。駅前を県道へ出て南へ歩く。
1km足らずで県道223号は終わり、県道224号と231号に分岐する。標識に従って左側の231号へと進む。少し歩くと田圃が広がり、今年初めて雲雀の声を聞いた。やがて前方に岡山ブルーラインが見えてくる。
ブルーラインの下を抜けて進むと道は右にカーブして、右側に「大賀島寺。砥石城跡」の道標が立つ。これに従って左折する。
左手に「畠山のあられ」「焼きたて・おかきせんべい・工場直売」と掲げた畠山製菓の工場が見えている。千町古川(せんちょうふるがわ)を渡ると工場の玄関で、入ると右手に「おかき処・吉備の舎」があり、ここでマップをいただく。美味しそうなおかきが並んでおり、帰りに寄せていただきますと挨拶する。
畠山製菓のすぐ南の登山口でマップを広げる。軽くひと歩きと思っていたのだが、エリアの広さと網の目のようなコースにビックリ。それにしてもこのマップはとてもよくできていて、見ているだけで楽しい。裏面にはコース説明や周辺の花・自然・歴史・文化も解説されているので、ハイカーはぜひ入手していただきたい。
2.砥石城跡~笠松神社
登山口はやや急なコンクリートの階段で始まる。
階段が終わって土道に変わったあたり、視野の先で何かが動いた。何とタヌキがいる。いったん逃げていったが、カメラを構え静止して待っていると再び姿を現したのでシャッターを切る。ベストショットをいただきました!
思いがけない出会いに足取りが軽い。落葉の道を進んで石のステップがある坂を登ると砥石城跡(または砥石山城跡)に着く。
本丸跡のテーブル・ベンチにザックを下ろして小休止する。砥石城跡とその縄張り( 曲輪や堀、門、虎口等の配置)についての解説板が設置されている。それによると、砥石城は標高約100mの砥石山尾根上に築かれており、五連郭の本城と堀切を構えた四郭の出城で構成された中世の山城とある。大永年間(1521~1528年)に浦上氏によって築城された、戦国時代の宇喜多氏ゆかりの城だそうである。高取山城主島村豊後守(しまむらぶんごのかみ)の夜討ちによる落城や、宇喜多直家との関係について細かな解説がある。
砥石城跡の西に広がる雄大な風景。畠山製菓のすぐ西側で二本に分流した千町川(せんちょうがわ)と千町古川が流れ、中央彼方に芥子山(けしごやま)が見える。
石組みの一段高いところに祠がある。中には木の人形のようなものが祀られているが、何かは分からない。青空に明るい緑の松と枯木のコントラストが美しい。
南の一角に三角点がある。近くに「砥石城跡」の標識があり、ここから南に進んで行く。
両側を雑木に覆われた道を行くと「笠松明現宮」への道標が立つ。
笠松明現宮へ向かうと、遠目に道が赤く染まっている。近づけば落下したヤブツバキの花だった。
送電鉄塔の真下にキャンプ場への道標があり、その方向へ進む。
間もなく笠松明現宮(笠松神社)に着いた。
心落ち着く空間だ。山門をくぐり拝殿へ進んで参拝する。
本殿を仰ぎ、境内の祠を拝する。
3.松山~長谷山を経てダンガメ山へ
さらに南の松山への道を探していたら、本殿左の祠のそばに道があった。気持ちのいい道をゆっくり進む。
躑躅の小径の始まりを知らせる案内板。こんな案内は嬉しいねぇ! ツツジのトンネルのような道を行く。
残念ながらツツジはまだつぼみが固い。「眺め! 備前富士ともチョコットお茶しよう」のプレート。
備前富士こと芥子山を眺め、ちょっとズームで寄ってみる。
西側の下方には邑久町東谷の集落が、東には池と堤と小屋が見える。
一帯のツツジが開花したら素晴らしい光景が展開されるに違いない。ぜひその時期に訪れたいと思う。やがて躑躅の小径が終わった。
すぐに松山に到着する。辺りには松の木が多く、プレートの可愛い女性が「昔、赤松林。今、造林の大王松」とおっしゃっている。大王松は赤松に似て樹皮が赤みを帯びている。松類の中では葉が最も長く20~30cm、樹高も30~35mになる巨大種らしい。
あちこちに伐採木がころがり、あるいは積み上げられている。ある場所ではそれが朽ちて、命ある木が自然に還る様子を眺めることができる。還った木は山を肥やして次の命の源になる。子供たちに見てもらいたい風景だ。
一方で伐採木は階段になる。この山では、階段のスリップ止めはすべて自然木の木段で、擬木ではない。必要なサイズに切って並べ、それを自然木から作成した留め具で固定している。その手間は察するに余りある。そんなことをよそに、「吹上場」は雄久の軽井沢であるようで、ハンモックでぶ~らぶら!
木の間を下って行くと吹上峠。左折するとキャンプ場に行けるようだ。
緑の息吹を感じながら進むと伐採木が積み上げられている。
その向こうでは伐採された木がベンチになり、物見台とハシゴに形を変えている。
伐採と同時に植林が行われていて、素晴らしい循環作業に感じ入る。ツルハシを振るうお父さんのプレートがこれを象徴している。
「峰古道」のプレートには「峰伝いの古道を辿ると自然空間、構図が絶品」の記述。近くには登山者向けの地図ソフト「カシミール」でシミュレーションした山名方位写真が掲示されている。
さて、どれが何という山か分かるだろうか。写真では確認できないが、背後にはさらに薄く山脈が霞んでいる。
長谷山東分岐に到着した。左折すると長谷峠に行けるようだ。
長谷山に着いた。ここから最高峰のダンガメ山に向かう。
松葉が落ちた平坦な道を行くと「足休目」のプレート。ダンガメまではあと250mだ。
4.ダンガメ山山頂風景
標高185m、最高峰のダンガメ山に到着した。おもしろい名前だが、荒神山、大辻山、無常山などとも呼ばれているらしい。まずは二等三角点にタ~ッチ!
丸太のベンチで昼食にする。手書きで作成された南の方位盤は風景の特徴をうまく描いている。目の前に広がるパノラマと照らし合わせながら箸を運ぶ。
山頂の一角では草花が栽培されている。福寿草や水仙が美しい花をつけている。
東の遠くには淡路島、南東には小豆島を望むことができる。
太い桜の幹に巻きつけられた「ヤマザクラ・マップ」。おくの細道アルプスにはあちこちにヤマザクラがあるようだ。ツツジとあわせてぜひ花を見に来たいものだ。太い桜の根っこから枝が生えている。新たな命の息づかいが感じられる。
周辺に眼を向けると薄紅に染まった木々や新緑の枝、山頂は春の息吹に包まれている。
5.雄久山~雄久峠~坪相峠を回遊して眼鏡池から宿毛へ下山
もう少しゆっくりしたい山頂だが、すでに15時近いので腰を上げる。先に通過した長谷山まで戻って長谷峠に向かう。
松落葉が積む道を抜けると長谷峠に着く。道標の「雄久山」方面へ足を向ける。
そばに「長谷越」と「長谷乢」のプレートが掛かっている。すぐ先の桜の木に「かまどの神・荒神様」のプレートがあり、東へ5分ばかり進むと「磐座ロータリー」のプレートがある。
間もなく雄久山に到着した。引き続き高雄山に向かうべく雄久峠の方へ進む。
すぐ先に「宇喜多一門・墓標」とあり、周囲を見渡すがそれらしきものが見当たらない。小山のように盛り上がったシダの茂みに何かがあるのかも知れない。
雄久峠に着いて、付近の道標の「高雄山・弘法寺」方面を目指す。
少し進むと「高雄みち」の表示。さらに5分ばかり進むと道が細くなる。あちこちに白テープが見えるが、これまでと違って前方が分かりにくい。時刻はすでに15時半が近いので高雄山は後日にしようと判断する。元の場所まで引き返して、坪相峠(つばいとうげ)を経由して雄久峠へ戻ることにする。
送電鉄塔の下を通過して地図上の位置を確認すると、間もなく坪相峠に着いた。
左折して雀岩への入口を通過する。
平坦な道を北へ進んで湿地園のそばを通り、突き当たりを左折する。
途中で送電鉄塔の保守道へ入ってしまい、鉄塔の建つピークで行き止まりになって引き返し、雄久峠に戻り着く。時刻は15時47分、砥石山方面へ引き返すより南へ下りた方が里に近いと考えて、眼鏡池へ下山することにした。
山から浸みだした水が流れる、沢状態の道が続く。
二つの池が堤防で仕切られた眼鏡池に到着。足元の水を気にしながらの十数分はとても長く感じられた。
眼鏡橋の堤防の突き当たりを右にとって、高雄山の裾を宿毛方面に向かう。
途中で出会った石仏と延命地蔵尊。手を合わせて舗装された急坂を下りて行く。
下り立った宿毛バス停で今日の山行を振り返る。まずは、とんでもなく面白い山を見つけたものだと頬が緩む。そしてこれだけ広い山にあって、歩きやすい道や階段、適確な道標と愉快なパネルなど、その整備に要する労力は大変なものだろうと感服する。「おくの細道アルプスの会」の皆さんと山主の方にあらためて感謝である。
ところで、バスを利用する場合は便が少ないので事前調査を! 帰りは赤穂線・西大寺駅から岡山へ向かう。