公共交通機関だけでの山歩きにはいろいろと制約がともなう。とりわけ悔しい思いをするのは、少し移動すれば全体の山容を把握することができるのに、それがかなわないときである。休暇を取った息子に登山口まで送ってもらうというラッキーなタイミングに、佐伯天神山全体が見えるところまで車を移動してもらっての1枚である。
今回の河本登山口は左山裾にある。
1.天石門別神社 から登山口へ
公共交通機関を利用する場合は、JR和気駅から備前バス・周匝(すさい)行きに乗り河本バス停で下車する。瀬戸駅からの所要時間は20分足らずだが、便数が少なく、土日・祝日には適当な便がないので事前確認が必要だ。
バス停の山側には天石門別(あまのいわとわけ)神社があり、山行の無事をお願いする。
天石門別神社の両側には台座があり、左には愛嬌のある表情の狛犬、右には猪を従えた和気清麻呂が立っている。どちらも備前焼でできている。
天石門別神社に向かって左手に少し進むと上り道がある。ここが登山口で、すぐ先に大きな標識がある。
2.見張り所~本丸
登山口標識の先はいきなり急坂で始まる。落ち葉に足を取られないように気をつけて登ると、ロープを張った急な岩場が待ち受ける。
岩をつかみ草木の力を借りて(そっとつかんで)、岩場をひと登りすると見張所に着く。
見張所の下では吉井川が急カーブを描く。左手には南へ向かう下流と田原井堰発電所の堰堤が見え、右手には西に延びる上流の風景が広がる。
急坂の一角から見上げると、青空に若芽をつけた枝が伸び、山道の両側にはコバノミツバツツジが満開だ。次から次へと、進行方向からウグイスの声が聞こえてくる。まるでサウンド・ナビゲーターだ。
さらに岩尾根の急登が続く。登山口から35分ばかりで天神地蔵の道標に出合う。
崖状の脇道に入って行くと衝立のような岩があり、下部に小さな石像が立っている。
これは石像をアップしたもの。切れ落ちた崖下には、茂みの間から吉井川が見える。
天神地蔵付近からのパノラマ写真。右が川上で、吉井川は手前の妙見山の下を大きく回り込んで流れている。この屈曲部は天神淵と呼ばれ、険しい天神山の姿を映す景勝地として知られている。
もとの道にもどって10分ほど登ると、天神山城跡の北の一角「下の段」にたどり着く。ここから山頂一帯が山城跡になっており、いくつもの郭(くるわ)、つまり区画に分割されている。
〔下の段〕
〔西櫓台〕
〔三の丸〕
〔鍛冶場〕
〔桜の馬場〕
広場中央に変わった形の木がある。「クスノキ科かごのき」の札が掛けられている。
後で調べると、樹皮が剥がれて鹿の子模様になるのがこの名の由来とのこと。
〔長屋の段〕
〔ニの丸〕
〔本丸〕
本丸跡には城主「浦上遠江守宗景之城址」の石碑があり、天神山城鳥瞰図が立っている。
3.太鼓丸~天神山山頂
城跡はさらに続く。本丸から天神山山頂に向かって歩きやすい山道を進んで行く。
〔侍屋敷〕
〔飛騨の丸〕
〔馬屋の段〕
〔南櫓台〕
ゆるやかな尾根道を山頂に向けて進む。太鼓の丸まで500mだ。
〔亀の甲〕
たくさんの岩石が積み上げられている。塁をよじ登ってきた敵を撃退するための備えである。
〔太鼓の丸〕
太鼓の丸は、室町時代以前に築城された旧天神山城である。郭を細かく記した「天神山城鳥瞰図」が立つ。
北の眺望が素晴らしい。田土方面には民家や棚田が連なっている。その棚田にズームイン!!
さらにズームで美保高原に迫ると、「岡山のコテージ・高原の宿ロマンツェ」が見えてきた。
西側には手前に河本集落、少し向こうには佐伯大橋、そしてはるか彼方に中国山系の雄大な風景が広がる。
〔軍用石〕
〔石 門〕
かくして天神山山頂に到着した。三角点を撮影するが展望はまったくなく、すぐに前進する。
4.和気美しい森へ
「和気美しい森」へ向けての下山路は緩やかで歩きやすい。木洩れ日を浴びながら、巣箱のかかった木立の道を行く。
山道の多くの草木にネームプレートが掛かっている。やがて舗装道が見えてきて、その手前に多目的広場への道標。
多目的広場に設置された遊具。これは楽しそうだ。そして近くに設置されているイノシシの捕獲檻。これには近づかない方がいい。
立派なビジターセンターがあり、広場にはキャンプ場や炊事場・食事用の長机と椅子・トイレなどが設置されている。
時刻は12時5分、長い机に愛妻弁当を広げてランチタイムにする。向こうに見える丸いのはキャンプファイヤーのベースのようだ。
近くの丘には満開の木蓮。
豊かな自然に囲まれて穏やかなひとときをすごし、木製のゲートをくぐって和気美しい森を後にする。
5.鵜飼谷温泉方面へ下山
ここから先は、舗装道路をひたすら下って行く。
昼谷・栃谷分岐は右折する。
市倉に近づいたころ、舗装路をキジのつがいが歩き回っていた。
まだわずかに残っている桜の花がやわらかな影を演出する。遠くに和気アルプスが見えている。
益原のあたりはウォーキングモード。左に神ノ上山を見ながらどんどん歩く。そのうち和気鵜飼谷温泉が見えてきた。
鵜飼谷温泉では、しばらくバスの時間待ちをして和気駅へ向かった。