1.木野山ルート登山口へ
美袋駅(みなぎえき)の前にタクシー会社があるので、登山口までタクシーを利用すれば短時間でアプローチできそうだ。が、自分はもちろん歩きだ。準備を整えて駅前を右へ進み、少し進んで左折・右折さらに左折して国道180号に出る。右にとって槻大橋(つきおおはし)へ向かう。橋の左奥に高滝山が見えている。
高梁川の美しい流れを見ながら槻大橋を渡ると、「ほたるの里」と「タンチョウの里・美袋」の案内板。平成23年までの13年間、岡山県自然保護センターが行ったタンチョウの野外行動調査はここで行われた。
すぐ隣りに高滝山登山道の案内板がある。橋から延びる車道を歩く。
道に沿って槻谷川が流れ、この川に蛍が生息するらしい。しばらく進むとカーブミラーが見え、欄干に「高滝山駐車場」の道標が掛かった橋を渡って行く。
緩やかな舗装道の坂道が続き、道なりに進むと「高滝山登山道」の標識が立つ。高滝山駐車場はもう少し先にある。
右側をV字形に戻るように上がっている登山道。ここが木野山ルートの入口だ。
2.木野山ルート~高滝山山頂
急坂をひと登りすると槻簡易水道配水池がある。
左にまわり柵に沿って進むと落ち葉でフカフカの急坂になる。スリップしないように気をつけて登る。
坂の上には木野山神社があり、山行の無事を祈って参拝する。「ようこそ高滝山へ」のウェルカムボードに迎えられて山道に踏み入る。
急坂をひと登りすると尾根道になるが、両側を林に囲まれており展望は得られない。今日は真冬並みの寒さで、登山口までは風が強かったのだが、林に囲まれた山道は静かで暖かい。
木野山ルートには教訓を書いた木札があちこちに掛けられているので、これを読みながらゆっくりと進む。
三合目に着いた。ここには「第一休憩処」の標識が掛けられている。
急坂をあえぎながら登っていると、この木札。「知恵出せ 汗出せ 力出せ」とあるが、出せるのは汗だけ・・・。
やっと平坦で明るい道になる。ひっそりとした谷間に椿が小さな花をつけている。
倒れた木の幹に「この先ロープ坂」と刻まれている。そのすぐ先が五合目で、登り坂に備えて小休止をとる。
五合目を出るとすぐにロープ坂になる。ロープなしで問題ないところもあるが、落ち葉で滑りやすい部分では利用させていただいた。おかげで8分ばかりで通過することができた。
「第二休憩処」に着いたが、ここは休まずに通過する。道は険しいけれどよく整備されていて、要所に登山道を示すプレートがあり道迷いの心配はまずない。
空を突くような枯れた木。傍らの倒木の切り口には新たな命が宿っている。山では命の対比シーンが多い。
シダが茂った道になり、その先にまたロープが現れる。
少し進んだところに松尾・足谷へ下りる分岐がある。平成22年(2010年)に開通したとのこと。
またロープの坂があり、これを登ると八合目になる。
新しい格言の木札を見ながら山頂分岐に着く。山頂・岩山ルートを中心に各ルートを手書きした案内板は、要を得てとてもわかりやすい。
分岐を左に進むと山頂である。その手前に「バイパス道」の標識。ここからも松尾・足谷方面へ下りることができる。
高滝山山頂に到着した。山頂標識の周辺には三等三角点と石仏が立っている。まずは三角点にタッチする。
続いて石仏のお姿をいただく。南側の道からは「金比羅・矢掛方面」に下りることができる。
東のやや離れた位置に岩があり、そこにも石仏が祀られていた。
3.岩山ルートを行く
山頂は木々に覆われて何も見えず短時間で引き返す。「北へ5分で展望良い太郎岩」の標識にしたがって移動する。
このあたりから風景が一変する。登りの木野山ルートには岩がほとんどなかったが、ここから北に掛けては巨岩のオンパレードだ。岩山ルートと呼ばれるゆえんである。
太郎岩の手前には不動明王が立つ。その奥には広場があり中央に記帳箱が設置されている。
八畳岩と呼ばれる巨岩があり、そばに役行者の座像。岩の左には磨崖仏があるのだが撮し忘れてしまった。
八畳岩の上から西側の展望。
北には太郎岩をはじめとする岩山ルートが延びている。東に見える正木山にズームで寄ってみた。
隣の太郎岩に移動する。西に見える龍王山には海上保安庁の美星水路観測所があり、2つの天体観測ドームが輝いている。天体を利用した航海、つまり「天文航法」のためには天測暦なるものが必要だそうで、その暦を作成するための観測施設である。昨今では、人工衛星や電波を利用して位置を正確に知ることができるようになったので、2008年に観測を終了して閉館されている。
太郎岩からの展望を楽しみながら昼食を始めるが、気温が低いのに加えて風が強く真冬のようだ。
続いて北隣の次郎岩に移る。
次郎岩から北に広がる風景。ほぼ真北をズームで拡大すると雪を頂いた山が見える。大山のように思われるのだが・・・。
面白い形の蛇岩。西方面の展望が開ける。
大きな岩を乗り越えると注連縄に飾られた男岩がある。
境ヶ乢・妙見ルートの分岐に着いた。境ヶ乢側へ踏み込むと木立が多くて眺望は良くない。
4.妙見ルートを下る
時刻は13時半を過ぎたところ。分岐に戻って下りの妙見ルートに入る。
すぐ下に「山の神入口」の標識があり行ってみる。注連縄を張り渡した岩で、別名を女岩と呼ぶそうだ。
歩きやすい道を10分ばかりで八合目に着く。
このルートもロープ坂になっている。木野山ルートと対称になっている感じである。そして五合目に到着。
ここからも急な下り。小さな黄色い花をつけた木、帰宅して調べるとミズキ科のサンシュのようである。もしそうなら、牧野富太郎博士が付けた名前はハルコガネバナ(春黄金花)で、春早く葉が出る前に鮮やかな黄金色の花を咲かせることに因むそうである。
平坦な道に差しかかると、先の方に、きらきらと銀でも撒いたように光るものが見える。近づくと落ち葉の上に細い枝が這っていて、米粒ほどの小さな蕾がたくさんついている。ここでは春が不思議な姿でアプローチしているようだ。
三合目に着き、15分ほどで妙見登山口に下り立った。
石鳥居が見えてきた。妙見宮に到着だ。
地味な拝殿と釉薬瓦で葺いた見事な本殿。本殿の屋根は凝った装飾が施されている。両端にはシャチホコがあり、獅子のようなのが鎮座している。棟の水板には愛嬌のある龍が見える。
境内の一角には手洗い鉢と常夜灯。太い椿の木に鮮やかな紅の花。
石鳥居の傍には早咲きの桜が咲く。
絵のような農村風景の中をバックパックで行く。