1.福本下バス停から王子神社へ
すでに他の記録でも書いているが、公共交通機関でこの方面へアプローチするには、岡山駅から宇野バス美作(みまさか)線で下市バス停まで45分。そこで下車して赤磐市広域路線バス林野駅方面行きに乗り換える。午前中は8時3分と11時58分発の二本だけ。福本下には40分少々で到着する。
当日は8時3分に下市を発ち、8時45分に福本下へ到着した。弁当を用立てるため近くのコンビニまで往復して、9時ちょうどにスタートする。右手に見える王子橋へ向かう。
王子橋を渡ると左折して進む。
次の分岐を右にとって登山口がある王子神社を目指す。八重桜が満開だ。
ところが、神社へ入る道を見過ごして王子コミュニティーハウスへ着いてしまった。
来た道を少し戻ると、山側へ斜めに入る道があり石灯籠が立っている。常夜灯と刻まれていて、その右から山への道が延びていた。
長い石段の中ほどに石鳥居が建っている。
まずは参拝。朝冷えで着込んでいたブルゾンを脱ぎ、水分補給をして出発する。境内の右(東)側から山へ入る。
2.月の輪古墳に向かって
歩きやすい土の道にはキャタピラの跡がついている。少し行くと上側への分岐が現れる。
近づくと中国電力ネットワークの鉄塔道標が設置されている。ここは下の道を直進する。
送電鉄塔が見えるが手元の地図の記載と一致しない。里山歩きでは、地理院地図の送電鉄塔や送電線位置の情報がとても役に立つのだが、これは最近建ったもののようだ。道は弧を描いて鉄塔側へ上がっていく。
視界が開けて周囲の山々が見える。淡紫色のヤマフジが木に絡みついている。
急坂を送電鉄塔の方へ登って行く。その先に真新しい鉄塔保守用の道標があり、その一つに「英田光太陽光線」の記載がある。やはり新しい鉄塔が増設されているのだ。このあたり一帯が最近整備されたばかりのようだ。
切り開かれた真っ直ぐな急坂。少しだけ視界が開けて、美咲町高下地区から美作市奥地区が見える。後方には美作市の近くの山々と遠くに大芦高原。
LINEの着信音をチェックすると、グループ山行で今日「おくの細道アルプス」へ出かけている仲間たちの通信だ。周辺のコバノミツバツツジはもう花が散っているが、おくの細道はまだ大丈夫だろうか。
この道も最近整備されたようで、大量の伐採したヒノキの枝が谷側に溜まっている。すっきりしているが日差しをもろに受けて暑い。大汗をかきながら登っていると、上の方で左側からの別の山道とクロスしている。地図にはない新道だ。
さらに進むと、右側へ道が入り込んでいる。これも最近造られたようで、ちょっと入ってみる。
突き当たりは進入防御網が張り巡らされている。そこから東には吉野川と英田地区、北には英田光太陽光発電所を望むことができる。
元の位置まで引き返すと少し先から舗装道路になっていて、その向こうに仮設トイレが設置されている。
月の輪古墳への道標があり、その上に満開のヤマザクラ。道標で初めて気づいたのだが、王子神社の近くには「王子の古墳」があったようだ。
3.月の輪古墳
月の輪古墳は、海抜320mのこの地「大平山」に、5世紀前半に築かれた直径60m、高さ10mの大型円墳で岡山県の指定史跡である等々。月の輪古墳についての解説板が並ぶ。
古墳の手前の休憩広場には、ベンチと推定復元図が描かれた解説板がある。それぞれの解説板には、古墳の構造や出土品、埴輪などについて詳しい説明がある。
墳丘の反対側には立派な東屋が建っている。岡山県指定史跡の石柱があり、その向こうに墳丘への階段が始まる。
階段を上り詰めると風景が一変する。墳丘には、遺体を納めていた中央棺と南棺、いろんな種類の埴輪や埴輪列などが説明板と共に配置されている。これは見事だ。
墳丘からの素晴らしい眺望だが、山名を同定できずただただ見とれるばかり。
東屋に腰を下ろしてしばらく休憩する。後でたどってわかったのだが、ここへは飯岡(ゆうか)地区から舗装道を車で上がることができる。古代史のロマンと豊かな自然、月の輪古墳は素晴らしいアウトドアスポットでもある。
4.ウネ山へ
ウネ山へ向けて出発だ。ヤマザクラの下へ出て舗装道路を進むとここにも月の輪古墳の解説板がある。「作業中」の立て札を見て歩くとどんどん下っていく。これは変だと気づいて引き返す。ここで15分近く時間を無駄にしてしまう。
月の輪古墳の解説板近くまで引き返してUターン。右側に注意しながら歩き始めると間もなく、入り込めそうな所が見つかる。これでは見過ごすのもムリないかな。
進入場所とは比べものにならないきれいな道だ。「月の輪古墳」「吉ケ原」「飯岡」方面の道標が立っている。ということは月の輪古墳からここへつながる道があったわけだ。ここは「吉ケ原」へと方向を変える。
よく整備された道が続く。道端に立っているのは「昭和28年度治山事業」の石柱。
雑木の道を歩くのは快適だ。やや小高い位置にベンチが設置されていて、ここが山頂だと思ってしまう。
三角点を探して道の両側の雑木林に踏み込むが、何の手がかりもない。こんなベンチを置いているからには、その位置から何らかの山頂標識が見えるはずだとキョロキョロ。
諦めて、緩やかな下りをなお吉ケ原方面に向かうと道が分岐している。右側の方に「中国自然歩道」の標識があるのでそちらへ進む。
尾根道独特の地形が現れ、それを越えて行くと右側に「ウネ山」の山頂標識があり、ブルーとピンクのテープが巻き付けられている。さっきのベンチは偽ピークだったわけで、20分以上もタイムロスを上積みすることになった。
右奥に三角点とベンチがあり、三角点にタッチ!
すでに正午が近く、ここで昼食をとることにする。周辺はヒノキと雑木に囲まれて眺望はないが、軽やかな小鳥の声が届き、三角点を陽光が照らしている。山中ならではのランチタイムだ。
さらに北進すれば吉ケ原へ出るのだがここは道を見るだけでストップ。来た道を戻り、偽ピークのベンチに軽くタッチする。
先ほどの道標へ着き、今度は「飯岡」へ進んでさっきの進入口へ出る。
5.鷲山を経て下山
先ほど間違えて下りた道を行く。中国自然歩道の標識が立っている。
「月の輪古墳登山道」の道標が現れたところで、右に山道らしき部分があり踏み込むべきか、その確認に手間取る。ここでまたタイムロスが発生する。さらにしばらく下りると、右側にはっきりと鷲山への入口と思える場所が見つかった。
踏み込むと、落ち葉と雑木に覆われてかなり荒れている。道らしい道はなく好きなところを歩けば良い。しかし、木の枝をよけ安全な場所を見分けながら進まなければならない。ほとんど直登ルートの比高120mを、息を切らせながら登る。
途中も山頂も雑木の中。山頂には四等三角点があるだけだ。
すぐ下り始めるが簡単ではない。かなり下りたあたりでヘビと出合って双方ビックリ、大汗をかいて下山した。ピークハント以外では登る必要がない山を初めて経験した。
片側に金網フェンスが張られた道。その先に害獣避けゲートが設置されている。
紐で結ぶ簡単な、だがしっかりしたゲートを抜ける。飯岡(ゆうか)の里に下りてきた。左に池が見えている。
歩いてきた山並みを振り返る。吉野川を目指して南へ歩き、堤防の上へ出る。
鷺橋を渡って県道374号まで歩く。
宇野バス(赤磐市広域路線バス共用)高下停留所へ到着。植林の緑に覆われた山に調和するヤマザクラの風景を見ながらバスを待つ。