1.弥高山神社~登山口
井原鉄道井原駅前から北辰バスで1時間5分、弥高山入口バス停に到着した。オレンジ色の釉薬瓦の家並みが陽光に映えている。バス停の標識に隣り合って道標が立っている。
このあたりは高山市(こうやまいち)と呼ばれ、かつて市場町として栄えた集落である。備中笠岡から備後東城へ通じる高山往来(東城往来の一部)の中間に位置して、物資集散の中継地として市場が発展していたそうである(参考:「一路一会・古い町並みと集落・山陽」)。
現在も家々には市場町時代の屋号が掛けられており、当時の様子をうかがわせる(写真左の赤丸)。中国自然歩道を250mほど歩き、県道77号美星高山市線を東へ200mばかり進むと、左に石鳥居と細道がある。この細道が登山道だが、まずは石鳥居をくぐって弥高山神社へ向かう。
こころ静まる境内を進み参拝。右に取ると先の登山道に出る。
2.駐車場~周遊登山道を山頂へ
山道脇の八重桜(エゾニシキと思われる)がとびっきり美しい花をつけ、足元には可憐なスミレ。
間もなく広い駐車場に着いた。舗装部分を進んで突き当たりを右折する。
駐車場の一角にトイレがあり、その右の階段を上がると山道になる。
道標の「展望台」方向に進むと、急登できる階段コースと緩やかな舗装道の周遊コースに出合う。時間がたっぷりあるので周遊コースに足を向ける。
山道には石仏が並ぶ。「四十八カ所巡り」ができるようだ。薄紫のスミレが群生している。
少し登ったところで見下ろすと、しゃれたバンガローが見える。近辺にはキャンプ場もあり、アウトドアライフを満喫できそうな感じ。ここでは散った桜の木も絵になりそうだ。
谷側には枯れた花をつけたままのアジサイがいっぱい。ドライフラワーのような花とみずみずしい若葉が対照的だ。あれこれ見ながら、緩やかな舗装道を右回りに上がって行く。
ひときわ大きなコバノミツバツツジ、そしてまだ花を残す桜。
ミツバツツジは満開だが、周辺に突っ立っているのは何だろうか。葉はツツジに似ているようなのだが、2~3本の太い幹でガッシリ立っている。花と若葉と常緑樹が一体となって春の曲を奏でている。
台座がコンクリートの張りぼては「東京スカイツリー」。この位置が同じ標高の634mであることを示すマーカーだ。下方には登ってきた一帯がよく見える。が、標高差がわずかなので高度感はあまりない。
山頂が近づくと、南面をコバノミツバツツジが飾っている。東屋が現れ「弥高山保健保安林」の案内板が見えると、短い階段の上が山頂である。
3.山頂風景
ゆったり広々とした山頂広場である。まずは二等三角点を確認する。
ガッシリとした円形方位盤が設置されていて、市町村の方向と合わせて周辺の山名も刻まれている。コンディションが良ければ南は瀬戸内海はもとより四国の山並み、北は伯耆大山まで見えるそうだが、今日はモヤがかかっている。
それこれで、風景から山名を特定できそうにない。これは北方向のパノラマで、道後山や花見山、成羽天神山などおなじみの山が見えているはずなのだが・・・・。
これは東方向、高梁・備前・岡山方面である。左の尖ったのは成羽高丸山か?それに続いて手前に長く延びるのは、川上町地頭の宮山だろうか?
南に広がるツツジに縁取られた風景。近場の山は大岳山かと思われるが判然としない。
そして西は高山市方面。近くに高山市の町並みがあり、遠くに霞んでいるのは笠岡市の御岳山(みたけさん)だろうか。
山頂の北の一角には、四方向のライブカメラとアンテナらしきものが設置されている。しかしどちらもWeb公開されていないので、これが何を目的としたものか判らない。
山頂広場にはさらに不思議なものがある。広場中央の石積みの塔と「御霊」の石柱、「石鉄山」の石碑、「???霊界」の石柱などは、それが何を意味するのか不明である。広場の南に、これらとミスマッチなスタイルの双眼鏡が設置されている。
すぐにも開花しそうなハナカイドウは、花言葉「美人の眠り」そのものだ。たった一輪、こぼれるような淡紅色の花弁が微風に揺れている。
ゆっくりと山々を眺めながら昼食をとる。次から次へと訪れる人たちが途切れない。愛用の双眼鏡で風景に見入る相棒。三角点に蝶が戯れている。
4.西登山道~弥高山公園
美しい風景を堪能して、下りは階段の西登山道を辿ることにした。
歩きやすい階段をゆるりゆるりと、10分足らずで下りてしまった。
階段の下に待っていた枝垂れ桜は飛び切りの美人。フワフワの淡いピンクの花がこぼれ落ちそうだ。
しゃれた佇まいの食事処「やまぼうし」の庭には鯉のぼりが泳ぐ。弥高山公園へと左回りで下りて行く。
途中に別の登山道「れんげつつじコース」がある。道の両側を埋めるレンゲツツジは五月中旬に花をつける。弥高山では、このレンゲツツジをカッコウ花(カッコウが鳴く頃に咲く花、正しくは「かっこう花」)とし、「カッコウ花保存会」の皆さんが維持管理を続けている。公園手前には白亜の仏舎利塔が建つ。
辺りには八重桜が満開。管理事務所と並んで特産品直売所があり、立ち寄ってお土産を求める。作りたてでアツアツのコンニャク玉は絶品で、帰宅後、酢味噌でいただくと酒が捗ること・・・。
このあたり一帯が自然公園なのだが、その一角に大型遊具を設置した「ピノキオランド」がある。あちこちのベンチでグループやカップルがくつろいでいる。われわれもここで腰を落ち着け、1時間余りiPodの音楽を聴きながら読書で時間を過ごした。
5.弥高山入口バス停へ下山
余裕をもってバス停へ戻ろうと腰を上げ、ロッジやバンガローが建ち並ぶ路を西へ進む。道端に「弥高山の歌」と題する石碑があり、六首の和歌と一句が刻まれている。
写真は典型的なバンガローで、こんなのが15棟建っている。他にもロッジ、貸別荘、キャンプ場などがあり、アウトドアライフを楽しむ環境が揃っている。
バス停に帰着すると、傍らに「千峯坂(せんぽうざか)街道」の解説碑があるのに気づく。高山市から千峯を通って井原・福山へ通じる街道で、明和年間(1770年)頃に造られた、千峯からほぼ一直線の幅2mほどの急峻な道であることが説明されている。今はこんなプレートが設置された舗装道路。それでも井原までのバス移動には1時間超を要する。