名 称

ごけんざん(やくりやま)

所在地

香川県高松市

標 高

375m

山行日

2020年10月24日

天 候

晴れ

同行者

瀬戸内軽登山同好会

アクセス

琴平電鉄琴平線・瓦町駅乗換、志度線・八栗駅(やくりえき)下車

マップ

    

このマップは、国土地理院の電子国土Webシステムから提供されたものを使用しています。

コース概要

八栗駅スタート 10:06源平合戦史跡・総門跡 10:09八栗ケーブル八栗登山口駅 10:35~10:43
お迎え大師展望台 11:08~11:13八栗寺本堂 11:19中将坊大権現 11:27~11:29
八栗寺境内で昼食・散策 11:32~12:15下山開始 12:15「よもぎ餅の本家」12:40八栗駅帰着 13:11

1.八栗駅から山上へ向かう

 八栗駅に着くと構内の壁に「"げんぺい"へ おいでまあせ Welcome to "GEMPEI"」の貼り紙。そう、この一帯は源平屋島古戦場跡なのである。駅前には「むれ源平石あかりロード」の案内標識。地場の石材産業と源平史跡を同時に活用して8月から9月中旬にかけて催されるイベントだが、今年は新型コロナの影響で中止になった。

 牟礼町は隣の庵治町とともに、最高級花崗岩「庵治石(あじいし)」の産地として有名である。あちこちの民家や商店の庭先に、おしゃれな石灯篭が置かれている。暗くなって灯がはいると幻想的な空間が現れるんだろうなあ。

 源平合戦の総門跡である。解説板にあるように、当時この付近は海浜で、屋島壇の浦に行宮(あんぐう)ができるまでの一時期、防衛の拠点となった場所である。

 交差点を渡って県道146号を直進すると、右側に「数珠掛孫兵衛久重の墓」がある。土佐の長宗我部元親の家来で、八栗城を攻めたとき、はなばなしく戦った末に討たれたと書いてある。軍功を称えたものと思われる。

 石材店が多い。しばらく進むと右手の広場に切り出した庵治石が山積みになっている。花崗岩のダイヤモンドと呼ばれているそうだから、この量は凄い! 近づいて見ると、とてもキメが細かくて美しい。

 県道146号を歩く仲間たち。五剣山がはっきり見えてきた。2mも下の畑から這い上がって、ヘチマがガードレールで花を咲かせ大きな実をつけている。

 フラットに見える道だが、ふり返ると緩やかな上り道を歩いていることが分かる。八栗寺の道標が立ち、「御宿」があるあたりから傾斜が増してくる。

 八栗駅から30分ほどで八栗寺行きケーブルカー乗り場に到着する。レトロっぽい赤いケーブルカーが停まっている。

 そばにある源氏池を眺めて戻ってくると、重装備の電動自転車。ハンドルには大きなフロントバッグとボトルケース、遍路杖を結束バンドで止め、サドルに遍路傘を掛けている。お遍路姿の御仁は大阪の人。9月25日に和歌山へ走り、船で徳島へ渡って第一番札所の霊山寺から巡っているそうだ。中村で台風に遭遇して中断と再開。昨日八十四番の屋島寺へ登ったら電池が切れたので、ただ今充電中とのこと。同年代の方とお見受けしたが、大変なガッツに敬服だ。エールを交換してお別れする。

 ここからも舗装道路が続く。途中に砂防ダムを見ながら上って行く。

 石鳥居が現れ、扁額に「歓喜天」とある。真言宗の寺のはずだが、神様も祀っているらしい。清掃が行き届いた道が延びている。

 15分ほど歩いたところで小休止する。上から大勢の子供たちが下りてきた。元気に走り回っているのもいる。柔道教室のトレーニングで来ていたようだ。

 突き当たりに大きな岩があり、左に折れて石段を登る。

 大きな岩の下には大勢のお地蔵さんがいて、金銀の納め札が貼られている。坂を登り切って少し進むと間もなく「お迎え大師展望台」だ。

2.お迎え大師展望台からの眺望

 立派な展望台が設置されている。その中央に鎮座されるのがお迎え大師の像。

 ここからの展望は抜群で、目前には屋島が見える。

 高松市を一望できる。どれがどれだか判然としないが、今まで歩いた讃岐七富士の多くも見えているはずだ。

 反対を向くと五剣山の四つの峰が競り合っている。

 展望台を下りたところにある石像が役行者にそっくりなのでカメラに収めた。帰宅後調べると、五剣山は役行者が開いた修験の行場であり、多くの山伏が山岳修行をしたと知り納得する。

3.八栗寺と境内風景

 ここにもケーブルカー乗り場の先で見たのと同じ扁額「歓喜天」を掲げる石鳥居がある。通り抜けると山門が建つ。二天門と呼ばれる門だ。

 二天門の内側から見る五剣山には圧倒される。まるで覆い被さるように聳えている。

 八栗寺は天長6年(829)に弘法大師空海により開創された真言宗の寺院である。弘法大師作の歓喜天が祀られており歓喜天霊場として知られているそうである。それで扁額に刻まれていた文字に納得だ。境内は広大で、左手に護摩堂と聖天堂が並ぶ(写真右が護摩堂)。

 これは聖天堂で、三間四面撞木(しゅもく)造りという仏堂の特殊な屋根形式とのこと。檜皮葺の屋根が美しい。人の喜びを歓びとする天尊「歓喜天」の額がかかる。

 これは本堂で、五間四面の入母屋造りの立派な佇まいだ。ここには弘法大師作の聖観自在菩薩が祀られている。高松藩松平家との関係が深く、幕には松平家の「葵の紋」が入っている。

 本堂の左脇の鳥居をくぐって中将坊堂へ向かう。5分ほどで着くのだが、この階段がなかなか急で長く感じられる。

 中将坊堂は二間四面屋根で銅板葺の建物。中央石室内に大黒天を本地とする天狗の中将坊大権現が祀られている。お堂の横には下駄が奉納されている。願いをかけると、中将坊さまがそれを履いて夜中に願いをかなえるために駆け巡るという。

 付近にはこんなものも奉納されている。

 奉納物近くのフェンスが一部欠落して、「入山禁止」の立て看板が立つ。何となく、ここから入れそうな気がするのだが、それはダメ! 長い石段を下りて行く。

 時刻は11時半過ぎで、境内にてランチタイムになる。その間に20名ほどのお遍路さんがやって来た。東北地方からと言うことで感心する。食後は自由に境内を散策する。
 鐘楼堂があり、その先に地蔵堂がある。地蔵菩薩が祀られている。

 さらにその先には総欅造りの大師堂があり、青年時代の修行僧弘法大師が祀られている。そして朱塗りが鮮やかな多宝塔。総檜造りの美しい建物には金剛界大日如来が祀られている。

4.来た道を戻る

 下山はケーブルカーを利用する予定だったが、好天でもあり、またもうひとつ目的があって歩くことに!
 登りでは気づかなかった「仏足石」。お釈迦様が悟りを開いた菩提樹の下に、お釈迦様を象徴してお祀りされたのをならって設置されたものだ。足形の石の周囲には花が供えられている。

 鳥居を後にしてお迎え大師展望台まで戻る。

 来るときには気付かなかった場所に「お迎え大師礼拝所」があり、GPS観測の方位盤に、計測位置と共に標高が刻まれている。大師像台座天端:219.10メートルとある。そうだったのか、これは収穫だ。下山の足は速い。

 歩いて下りる目的はこれ! 登るときにチラ見した旨そうな「よもぎ餅」を帰りに買おうと思ったのだが、ケーブルカーに乗るとバイパスしてしまう。やっぱり歩いて良かった。だが一度に大勢が押しかけたので在庫切れ。作りたての粒餡を、ヨモギベースの生地をちぎりながらひとつづつ手作りして、きな粉をまぶして3個をパック詰めしてくれる。これはいいお土産になった。すぐ下に、時間があれば立ち寄りたかった「そば処 六六庵」。

 こんな案内板、この界隈は牟礼町カルチャーゾーンのようだが今回はパス。「御宿」を通り越して戻ったところに「うどん本陣 山田家」の看板があり、広い駐車場を車が埋めている。いつも待ち行列ができる名物店だそうだ。

 車なら通り越してしまう、歩いているからこそわかるしゃれた店が2つ。アンティークの店「らんぷ屋」と「野の花 coffee」はギャラリー喫茶かな? てくてく歩いて、予定より1時間半ほど早く八栗駅に帰着した。
 山頂は踏まなかったが、こんな山歩きもいいもんだ。