名 称

かめがもり

所在地

愛媛県西条市

標 高

1,896m

山行日

2015年7月25日

天 候

晴れ

同行者

「瀬戸内登山同好会」の仲間たち

アクセス

車で瓶ヶ森駐車場へ

マップ

このマップは、国土地理院の電子国土Webシステムから提供されたものを使用しています。

コース概要

瓶ヶ森駐車場 11:10~11:19トイレ休憩施設 11:21~11:28男山 12:06~12:08
瓶ヶ森山頂(女山)昼食 12:25~13:00白石小屋分岐 13:29瓶ヶ森駐車場 13:50

1.瓶ヶ森駐車場~出発準備

 国道194号を南下して寒風山トンネルを抜けた車は、すぐに左折して林道に入り、瓶ヶ森に向かうジグザグ道路をひたすら上って行く。傾斜に加えて次々に現れるカーブ、舗装されてはいるが路幅が狭く対向車に注意しながらの運転は緊張をともなう。途中で何台もの自転車と出会ったのには驚いた(皆さん年輩男性の一人旅)。
 延々と走って高度が上がると素晴らしい山岳風景になるが、カメラは後部荷物置き場のザックの中。そのうち瓶ヶ森駐車場までの距離標識があり、しばらく走ると左側に建家が見えたが、その後いくら走っても目的の駐車場は見当たらない。下り坂になったので引き返すと、先の建家の手前に進入路を発見して無事到着。この進入路は逆方向からはまったく見えず、ぜひ「瓶ヶ森駐車場」の案内板を設置してもらいたいものだ。

 駐車場の北詰から笹原の道を登る。見上げると北西の一角に青空が覗き、立ち枯れたモミの姿が美しい。

 先ほど車で通った林道に出る。休憩広場があり、ベンチがいくつも設置されている。

 広場の奥には「瓶ヶ森さわやかトイレ」がある。靴の状態を確認して歩き始めたら、真っ白なオオハナウドが咲いていた。

2.男山へ向けて

 瓶ヶ森の山頂は女山(めやま)で、まずはその手前の男山(おやま)に登頂し、そこから尾根歩きで山頂へ向かう。登山道は、右側に「瓶ヶ森自然休養林」の看板が立つ石畳から始まる。

 真っ赤な野いちごがおいしそうだ。2分ほど歩いてふり返ると、下方に駐車場が小さくなっている。

 すぐに男山と氷見二千石原との分岐になり、男山の方へと木段を登って行く。

 細道を飾るのは愛らしいシコクフウロ。本当はもう少しピンクが濃いのだが、白っぽい写真になってしまった。触れるとチクリとするのはトゲアザミ。

 足場の悪い部分はとても丁寧に整備されている。左側には氷見二千石原が姿を現し、しだいに広がりを見せる。白く枯死した木々、いわゆる白骨林が点在するが、どうもこの呼び名は好きになれない。一つひとつがオブジェのようで楽しいのだが、発生の一因に酸性雨の影響が指摘されていることを思うと複雑な気持ちになる。
 石鎚山のあたりは薄暗く、山頂付近は雲に隠れている。

 登山道脇に立っている大きなモミの木。表皮にたくさんの苔が生えている。足元に変わったのが咲いている。ホソバノヤマハハコ(細葉山母子)だ。まだ蕾の状態で、8~9月に白い蕾が開いて黄色い菊のような花が咲く。

 ひっそりと咲くニガナ。近くには明るい黄色のタカネオトギリも。

 左は、少しショボいがイブキトラノオのようだ。右は開花前のヒヨドリバナ。

 登山道に入って15分、しだいにガスが濃くなって、行く手の男山は霞んでいる。面白い枯木の形に足が止まる。目と鼻があり、手招きしているような腕。それとも、いろんな鳥獣たちが戯れている?

 おや、ヤマアジサイだ、と思ったのだが、よく見ればこれは木。と言うことはノリウツギだ。ノリウツギもアジサイ科アジサイ属なので、一見しただけでは分かりにくい。ふわふわのピンクは満開のシモツケソウだ。

 一部に急な岩場があったが、ロープが張られており難なくクリア。男山山頂が近づいてきた。岩場にイワキンバイ(岩金梅)が根を張って輝くように咲いている。

 建物と簡易トイレが見えてきた。これは石土修験根本道場らしい(2015/07/01日付の同寺のfacebookで確認)。そのすぐ上が男山山頂である。建家の入口部分に「石土山」の石碑があり、「参拝三十周年記念・昭和53年7月・愛媛県越智郡宮窪町」と参拝者の名前が彫られている。ちなみに、宮窪町は平成の大合併で今治市の一部になっている。
 すぐ手前に、雌しべの先が球形になったイワアカバナ(岩赤花)が花をつける。4枚の花びらの先が2つに裂けていて、8枚のように見える。

 男山山頂に到着した。登山口から38分での到着だ。山頂には石土(石鉄)蔵王権現の二つの祠があり、それぞれのご神体のお姿を頂戴する。

3.山頂(女山)に向けて

 山頂の女山までは緩やかな尾根歩きが続く。相変わらずガスが晴れず、女山はベールの中だ。

 枝にクルクルと螺旋状についたしなやかな葉は、針葉樹と思えない感じだ。モミは不思議な柔らかさをもっている。すぐ近くに、ガマズミが燃えるような紅の実をビッシリとつけている。

 左には広大な氷見二千石原。この雄大さには言葉を失う。

 しかし、石鎚山の雲はいつまでも消えそうにない。

 木々のトンネルをくぐって行くと、笹の間からハナニガナが語りかけているようだ。

 この不思議な形をしたものを見つけた時には驚いた(写真・左)。最初は卵のように見え、よく観察すると植物だった。帰宅して調べるとミヤマノダケ(深山野竹)の蕾であることがわかった。やがて赤紫のウドのような形の花をつける。登山日現在、愛媛県レッドデータブックで「絶滅危惧種」に指定されている。その隣りの木は小さな白い花をつけているが、何かは分からない。

 山頂手前の「土小屋・瓶ヶ森山頂・笹ヶ峰」分岐の道標を左に折れて、整然と山頂方向に向かう仲間たち。石が積み上げられた祠が見えると、もう少しで山頂に到着だ。

4.山頂風景

 祠の天板には「石土山大権現女人道」と刻まれている。合掌してご神体のお姿をいただく。

 楽しいランチタイムだが、しばらくは風景に見とれる。氷見二千石原方面は見通しがきくが、南と東側はガスが立ちこめて何も見えない。ゆっくりと弁当に箸を付けたものの、運動量が少ないせいか、いつものようにははかどらない。そして、いつものようにお菓子や揚げ物の差し入れをいただいて満腹、ごちそう様。

 北側のガスは留まることなく移動している。真北の視界が開けると、西条の市街地から瀬戸内海を望むことができる。

 東からガスが寄せてくると、カーテンで遮られたように眺望がかき消される。ほんのひと時、西の空が明るくなるが、石鎚山山頂は隠れたままだ。

5.白石小屋分岐を経由して下山

 ガスが多いとはいえ、その移り変わりも興味深くて去りがたい山頂。35分のランチタイムを終えて、13時ちょうどに、氷見二千石原方面へと下山を開始する。

 下山路にはシコクフウロとノリウツギが群生している。

 氷見二千石原は、山麓の氷見村の石高に相当する広さだったところからそのように呼ばれることになったらしいが、とにかく広い。まずは、瓶ヶ森ヒュッテ(現在は閉鎖されている)とキャンプ場のある地点へと向かう。560mばかり、石ころの多い道に足を取られないように注意して下りる。あちこちに「立入禁止」の立て札があるが、これは登山道を外れて踏み込むことで笹原が荒廃するのを防ぐためのものだ。注意しなければならない。

 歩くということ自体が楽しくなる、時間の流れが本来のゆったりとしたペースを取り戻すような空間が広がる。

 途中の岩場に登ってみた。その瞬間、石鎚山の雲がわずかの間消えたように感じられた。再び道にもどり、ゆるやかな階段を下りて行く。

 小さなモミの柔らかな葉と枝に触れながら進む。ここでもミヤマノダケを見つけて、それが何だか分からないままに嬉しくなる。

 小さな橋で沢を渡る。手が切れるほど冷たい清流があり、シコクフウロに挟まれてナンゴククガイソウが生えている。少し進んだ笹原にはナンゴククガイソウの群落があり、シシウドが花火のように咲いている。

 右手の奥に瓶ヶ森ヒュッテが見える。屋根の一部が剥げ落ちていて、今回いちばんの寂しい風景である。しばらく進むと白石小屋分岐の道標に出合い、ここは駐車場の方向へ直進する。

 ほとんど平坦な道が続く。ガスに閉ざされた南へとゆっくり歩く。石鎚の方はまた雲が増えてきた。

 駐車場の300m手前に「ここは氷見二千石原」の標識が立つ。すぐ先に「瓶つぼ経由西之川」の道標があり、これも駐車場方面へと直進する。

 笹原も終端が近づき、このあたりは花のオンパレードである。タカネオトギリ、トゲアザミ、ヒヨドリバナを眺めながら前進する。

 小さな沢を板橋で越え、右にモミの木の林を見ながら歩く。

 石畳が現れ、これを下りると出発地点の駐車場に帰着する。

 帰りは、国道194号に下りるとそのまま高知方面へ移動して「道の駅木の香」へ。そこでお土産の買い物と小休止。レストランの大きい窓から桑瀬川の清流を眺めながら、おいしいコーヒーで贅沢なひとときを過ごす。