1.大浜登山口へ
JR詫間駅前にはカラフルな三豊コミュニティバスが停まっている。2分待ちで接続する「詫間線大浜・名部戸(なぶと)行き」に乗り込むと、すでに大勢が着席しており、われわれでちょうど満席になる。先に乗車していたのは地域のご婦人たちの仲良しグループで、今日は年に1回の半島巡りとお食事会とのこと。皆さんはとても元気で、地域のことなどを教えてくれる。このコミュニティバスの乗車料金は100円で、乗り継ぐ場合は乗継券を発行してくれる。つまり、100円で半島をひと巡りできるのである。
ご婦人たちの明るい雰囲気を乗せて30分、大浜バス停に到着した。準備を整えてスタートする。前方の分岐を、バスがやって来ている方へと向かう。
分岐には竜宮城を形どった案内板が設置されている。小さい写真では見えにくいが、よく見ると、浦島太郎の絵に「jun」、乙姫さまには「erika」と小さく書かれているのだが、これって何だ?
通りにはこんなオシャレな店も。カラオケ店と茶房「こ乃花」、それにハンドメイドギャラリーの「うさぎ屋」だ。
路地を入ると、小さな神社の前に「四国のみち」の案内板があり、脇に「紫雲出山大浜登山口」の標識が立つ。
2.乳薬師~車道出合
登山口からは幅広い舗装道路が続く。5分ほど行くと右に石段があり乳薬師の案内板が見える。ここはパスして前進する。
真新しいコンクリートで固められた円命寺川。たしかに頑丈そうだが、自然とのミスマッチはいかんともし難い。向こうに見える砂防堤へと足を進める。
道端に咲くキジムシロの黄と白いヒメバライチゴの花。
砂防堤脇の急な階段を登る。土砂災害を防ぐためには、これだけガッシリとした砂防ダムが必要なわけだ、と改めて納得する。
これほど大きなダムなら普段の水量は軽く溜め込んでしまえそうだ。道が平坦になってきた。
ひっそりとハコベが咲いている。豊かな木々のアーケードを行く。
足元にはクサソテツの緑。その先には、今にも羽ばたきそうな若葉。
佃煮にするとおいしそうなイタドリが繁茂する。が、その傍にはイノシシの沼田場がいくつも。
起伏をこなしながら進んで行く。大きな根を晒して横たわる大木の姿にゾクッとする。これも自然がバランスを維持するための所作なのだろうか。
そして我々は、倒木をものともせずくぐり抜けて行く。地図の等高線が込み入った辺りにさしかかり、予想通りの急坂になる。スリップしないようストックでバランスをとりながら登ると、次は傾斜のきつい長い階段が待っている。
いきなり、投げ出されたように車道出合に着いた。
3.山頂へ向けて
ここからしばらくは舗装道路を歩く。木々の間から大浜漁港のあたりが見えて、ズームイン!
車はほとんどやって来ないので、横一列で会話を楽しみながら・・・。石積みの上に「紫雲出山道路開設記念碑」、上部に「第109施設大隊」と刻まれている。
紫雲出山駐車場に着いた。東の小高い丘に展望台があるのだが、ここはパス!
山頂まであと10分の標識。敷き詰められた石畳の道を行く。キリシマツツジが咲き始めている。
4.山頂風景
山頂近くの展望台に着いた。八重桜が咲く小さな東屋で弁当を広げる。東の海には、大浜から半島の根元にあたる仁尾町方面の島々が見える。
道中にはほとんど岩場はなかったが、山頂には大きな岩が散在している。
ここは、見習い警察犬の物語を描いた映画『きなこ』のロケ地らしい。紫雲出山遺跡館に並んで弥生時代の遺跡があり、当時の生活の場が復元されている。
北側から詫間町箱方面がよく見える。遠くに真鍋島と北木島が霞み、右側には粟島。箱崎と詫間漁港のあたりにズームで寄ってみた。
石畳を山頂展望台に向かうと、途中に、三角点を示す黄色い三角のプラスティック板が立っている。周囲を探すが三角点標石が見つからない。後でわかったのだが、表示板前のコンクリート枡の中にあるらしい。
山頂展望台2Fから広場を見下ろす。桜の名所として知られた場所だが今は葉桜。一角にシャクナゲが咲き誇っている。
ゆっくりくつろげる展望台には緑青に染まった「幸せの鐘」。北には粟島と高見島が見える。
西にはこれから出かける仁老浜(にろはま)から三崎が広がり、手前は浦島太郎が生まれた里と伝わる生里(なまり)である。南の燧灘(ひうちなだ)には良質ないりこで知られる伊吹島が霞んでいる。
5.箱峠~仁老浜(にろはま)
次の目標地点は三崎灯台。桜並木の路を仁老浜へ向けて下り始める。桜の花びらが敷き詰められた路を行く。
箱峠まで1.85kmの道標。箱は、浦島太郎が玉手箱を開けたとされるところである。よく整備された木立の道を進む。
急傾斜の長い下りが続いて、また木段の登りになる。
山頂と箱峠の中間地点で振り返る。相変わらず皆さんは元気で、あの山頂から手前の谷までを20分足らずで一気に下りてきた。
「荘内半島は花の里 ここでちょっと休憩して行きませんか」の案内板。眺望がきき、三崎と生里の集落を一望できる。
さらに長い階段を下って行くと紫雲出山箱峠登山口に到着した。
分岐点に出て、仁老浜集落の「四国のみち」を進む。
海岸に出た。同行のMさんがクサフグがいると教えてくれる。堤防からのぞき込むと群れを成していた(赤丸)。
海岸を回り込むと「三崎灯台1.9km」の道標。再び山道に入って行く。
6.三崎灯台~糸の越バス停へ下山
緩やかな道で始まる。振り返ると富士のような紫雲出山の姿があった。
三崎・室浜分岐の標識だ。三崎灯台からの帰りは、ここから室浜へ下ることになる。その先に「どんどろ石」がある。「どんどろ」は讃岐方言で雷のことで、昔、雷の中には猫のような怪物がいると信じられており、そのひっかき傷が残る石だとか。ところで、自分は備中の生まれだが、子供の頃、たしか雷のことを「どんどろさま」と言っていたような記憶が蘇る。
立石休憩所で小休止する。広場の隣りに小高い丘があり巨石が並んでいる。
三崎神社の石柱があり注連縄をくぐって行くと石鳥居が現れる。
鳥居から400mほど平坦な道を行くと三崎灯台が見えてきた。
三崎灯台は四角形でタイルを貼り付けたとてもモダンな造り。ソーラーパネルが外観に調和している。
笠岡市の六島(むしま)が見える。この間は潮流が速い海峡であり大型船の航路になっている。岡山で最初に建設された六島灯台と三崎灯台とは、瀬戸内海の安全航行に重要な役割を果たしている。東には紫雲出山と生里の風景。
往路を三崎・室浜分岐へと戻り、室浜の方へと進む。
雑木林の道を5分ほど行くと民家が現れる。
遠くに海が広がり粟島と高見島の姿。シンパクと呼ばれる常緑針葉樹の大木がそびえる室浜大明神だが、ここは大急ぎで通り越すことに。と言うのも、黒い大型犬(?)が放されていて吠え廻るからだ。こちらの人数が多いので一定距離以内には近づかないが、かなりうるさく付きまとわれる。飼い主さん、ぜひぜひ繋いでお飼いアレ!
さらに10分ほど舗装道路を歩いて、無事に「糸の越」バス停に到着した。実はこの時点でメンバーが1名足りないのだが、これは、立石休憩所の近くではぐれたXさんが先に箱方面まで下りていたためだ。箱浦ビジターハウスのバス停で無事合流できたが、独り歩きでくだんの黒犬に吠えつかれて怖かったとの話に、一同、気の毒ながらも笑いをかみ殺した次第。怪我がなくてよかった!
※肉離れのその後
幸いにも、仲間に迷惑をかけることなく歩き通すことができた。そして嬉しいことに、残っていたふくらはぎの違和感を払拭する山行になった。痛みが遠のいてからは、しっかり歩くことでリハビリを目指していたが、なかなか違和感が消えず、その意味で、今回の山行は回復の総仕上げになったようだ。
今思うに、問題の原因は歩行の姿勢にあったと考えている。登りの段差は普通の椅子程度だったが、出した左足に体重を乗せない状態で右を蹴り上げたのが発端である。体重を乗せ、軽く前屈姿勢になっていれば、スクワットと似た筋肉負荷になり事故は起きにくい。ところが、左膝が斜めに伸びた状態で右のキックが足りなかったようで、体重と8kgのザックの重量に耐えきれず脹ら脛の筋組織が断裂したのであった。
以下を記して今後の教訓としたい。
●歩幅は小さめにとり、大股の荒い歩きは慎むこと
●段差では体重を確実に乗せながら踏み込むこと
そしてもうひとつ、常に意識に留めおく事項。
●段差を不用意に飛び降りると足腰にダメージを受けること