1.奥播磨かかしの里を歩く
岡山駅西口に8時集合、8時20分に出発。山陽ICから山陽自動車道を姫路方面へ向かい、姫路西ICで国道29号を北進して、鹿ヶ壺山荘には10時25分に到着した。準備を整えてさっそく歩き始める。
ベンチで語らう二人、バスの窓から見た時にはこれが案山子とは思えなかった。近くには別の案山子がお願い事のプレート、「住民に向けた執拗な写真撮影はおやめください」を抱えて座っている。
畑仕事の人とベンチに腰を下ろした御老体は何を話しているのだろうか、反り返って大笑いしている。民家の玄関ではミカンを収穫した二人が、道行く人を見て微笑む。
花畑で作業に余念が無い二人。畑の二人は農作物を取り込もうとしているのだろうか。
農作業を終えてリヤカーに座った二人は、何となくポーズをとっている。バスを待つ二人。とにかくカップルが多いのが寂しくなくていい。
働く人もみな二人。消防団員さんは二人で作業。薪を山積みした大八車を引くお父さん、後ろを押すのはお母さん。
おや、危ないあぶない。トタン屋根の上で二人の子供が遊んでいる。その向こうには、お爺ちゃんがお孫さんの虫取りを応援中。どちらも、思わず声をかけたくなってしまいます。これが案山子に見えますか?
オヤッ、小屋の中を覗き見している男性! 何が見える、何んだっ!? 近くの広場にはヤマボウシの満開の花。
ふるさとかかしギャラリーへの道辺では、家族が楽しんでいるティータイムの風景。着いた部屋では幸せなアルコールタイムの最中。
部屋の隣にはミシンを踏むお母さん。庭には天秤棒をかつぐお父さん。
正面に見える山の風景。「普通檜は杉林より高いところに植えられるのですが、珍しく杉林の中に檜が2本混じっています。それにしても杉の木の形がおかしいな」とスタッフの声。「杉のシルエットは先が尖っているのですが、ここの杉は丸まっています。地質が痩せているのではないかと思われます」。たしかにモコモコと丸くなっている。
庭の別の一角には子供の姿。左の男の子は膝をついている。傍らに咲いてるのはタチバナかな?
西へ西へと歩いて、奥播磨かかしの里の入口までやって来たようだ。
水尾神社の磐座(いわくら)が現れた。これはどでかい。昔々、伊和の大神が姫に求婚したが聞き入れてもらえず、怒った大神が大岩でここを堰き止めた。それがこの岩で、そのことからこの集落が「関(せき)」と呼ばれるようになったとか(解説板「宮ノ下渓谷の巨石群」より)。岩に貼り付いている植物を観察して、ここからUターンする。
桜餅を包むような柔らかな葉はフサザクラ(房桜)。普通の桜が開花するより前に赤っぽい花をつけるので、花を見た人は少ないのではとのこと。これからは気をつけておきたい。周辺にたくさん白い花をつけているのはアオダモ?
引き返しかけると間もなく、林田川の方を指さして「カワセミがいるよ!」と小声の合図。川に倒れた竹の上に鮮やかな水色が留まっている。少し離れた場所にもさらにもう一羽見える。しばらく観察するが逃げる様子がない。「小さいので親鳥が餌を持ってくるのを待っているのかも知れない」との声も。傍らのフサザクラの色づいた葉が美しい。
見えてきたのは奥播磨小学校かかしの里分校。誰かが教室を覗いている。もちろん、これも案山子である。
窓越しに覗いた教室の中は参観日の授業中だろうか。バケツを持って立たされている反省中の生徒が1名。他にも懲りないやんちゃがいるようだ。教室の隣の部屋ではこんな案山子たちが待機していた(写真右)。
鹿ヶ壺山荘への帰り道。ちなみに、写っているのは案山子ではありません。鹿ヶ壺山荘には12時ちょうどに帰着して、40分間の楽しいランチタイムがスタート。
2.鹿ヶ壺への周遊
12時40分、鹿ヶ壺へ向かって歩き始める。ふれあい橋を渡って左へ取ると立派なコテージが並んでいる。
コテージの先のキャンプ場を眺めながら道標の「鹿ヶ壺」へと進む。キャンプ場では裸の若者が準備体操をしている。
ここには岩山の急斜面を流れる多段の滝と数十の滝壺がある。もっとも大きい滝壺が鹿ヶ壺であるが、落差70mを超える滝と滝壺全体の総称でもある。急な坂道や階段を登っていくが、入口に当たる部分に解説板が設置されている。
登り始めるとすぐに現れるのが尻壺(しりつぼ)。今日は水量が少ないようで、一条の流れが上部で振り分けられて落ちている。階段を注意しながら登って行く。
「この黄色いのはモミジイチゴです。とても美味しいですよ」と男性の声。カメラを構えようとしていたら、すぐ前の女性がサッと手を伸ばしてパクり、「おいし~イ」。で、残った小ぶりのものに急いでフォーカスする。上から眺める五郎在壺(ごろうざつぼ)には細い流れが注ぎ込んでいて、水面に箒目のような模様が描かれている。
雑樋壺(ぞうげつぼ)はフラットな感じで、水たまりのようだった。道の滝側には鎖が張り巡らされ、足元もしっかり整備されているので歩きやすい。ドッボーンという音に続いて、賑やかな叫び声が聞こえてビックリする。どうやら、先にキャンプ場で見た若者たちが滝壺に飛び込んだり、岩場を滑って遊んでいるらしい。
階段の正面に見えるのが駒ノ立洞(こまのたてどう)だ。ここも水量が多ければ見応えがあるに違いない。
一番上の鹿ヶ壺に着いた。滝壺を上から眺めると、その形が鹿の寝姿に似ていることからこの名前が付いたそうである。その頭にあたる部分、写真では奥の方に滝があるのだが、水量が少なくてわずかに流れが認められる程度だ。
復路は北に回り込んで、緩やかな九十九折りの道を下りて行く。下り始めたころ「ルリビタキが居る」の声で目を凝らす。濃い青色で腹部が白い鳥が小枝に留まっている。これは幸せを呼ぶ青い鳥だ。鳥のことはほとんど知識が無いので、帰着後に念のために調べてみた。ルリビタキは青い羽根と白い腹部の間にオレンジ模様があるはずなのだが、写真からは確認できない。もしかするとオオルリではないのかな? ま、青い鳥にかわりないんだけど。
下りは速い。エッサカエッサと下りてきてキャンプ場を通過する。
3.三ヶ谷の滝を往復
鹿ヶ壺山荘付近で20分ばかり休憩して三ヶ谷の滝へ向かう。歩き出して間もなく、右側の森の間に見える池にモリアオガエルの卵を発見(写真右・赤矢印)。会員の皆さんの目と耳と勘には驚きだ。
車道へ出て鹿ヶ壺ふれあいの館前の案山子を撮影して、その裏手の道を進む。
歩きながら、山林や山腹の保全状態の良さに感心する。地滑り対策と思われる土留めが幾何学模様のように美しい。急斜面は専用のコンクリート部材で石崖を形成し、緩斜面では木材の柵と砕石を段組みしている。
道の山側には、山裾から少し距離を取って木材柵が設置されていて、万一の落石に備えている。涸沢と森林の境界も石垣で保護している。
人工林では間伐が行われている。伐採材の搬出と利用が課題と思われるが、今春見学した真庭市のバイオマス発電の仕組みが良くできていたのを思い出す。刈られた杉の小枝の間にマムシグサが生えている。
谷を挟んだ向かいの斜面には、水辺に鋼製の篭に砕石を詰めた三段の構造物を配置し、その上に木材柵を段組みしている。
滝が近くなると歩きやすい木道に変わる。山側は落石防止の木組みの壁で覆われている。
そして三ヶ谷の滝に到着した。落差は20mあるが水量が少ないためか迫力は無い。しかし岩盤を打って流れる姿はとても優美で、滝の音にも趣がある。真ん中の岩盤がくびれたところには、雨乞い祈願のお不動さんが祀られているそうだ。写真右は滝壺を斜め上から眺めたもので、右側の岩盤を伝い落ちた水流が同心円状の美しい波紋をつくり出している。
この先は千畳の滝や千畳平へ通じるが今回はここまで。来た道を引き返す途中に、朽ちた木が創り出した幻想的なオブジェが!
鹿ヶ壺山荘のコテージ付近で全員の帰着を待っていると、すぐそばの草むらに小鳥の姿。カメラに収めて帰宅後に調べたらホオジロだった。
今回も大変楽しい有意義な時間を持つことができた。かかしの里ウォーキングでは、その他にも途中で見つけたサンショウが話題になる。2つの棘が対になってつく「対生」のものが芳香のある「サンショウ」で、棘が互い違いになっている「互生」のものは「イヌザンショウ」で香りがないそうである。これは新知識になった。
ところで、帰着後数日経っても周囲のあれこれが、時おり案山子に見えてしまうのはどうしたものか・・・。