1.出発~スタート地点
全国的に晴れという絶好のお出かけ日和。早朝から起き出し、長男の車で岡山駅まで送ってもらう。
岡山発8時6分の新幹線こだまで姫路まで出て、新快速で山科駅に向かう。山科駅ではコンビニで昼食弁当を買い、地下鉄東西線に乗り換えて蹴上には11時前に到着。蹴上駅の案内地図の前には、元気なウォーキング姿の女性たちが見える。
前回にチェックしていなかった道標30-2を確認し、ねじりマンポの方向へ進んで行くと桜が開花していた。まだ二、三分咲きだがすっかり春の様子に相棒はご機嫌。
スタートは11時10分。道標から少し北に歩くと「ねじりマンポ」が見えてくる。春を楽しむ大勢の人たちが歩いている。
2.ねじりマンポ~インクライン
「マンポ」とは、近畿地方で使われていた小さなトンネルを意味する方言らしい。上部に「雄観奇想」と記されている。蹴上駅方面からの進入口右に道標31があり、ここが第2回目の出発点である。
なお「ねじり」は、トンネル内部のレンガの積み方からこのように呼ばれているようだ。レンガを斜めにねじるように積むことで、力学的な強度を確保しているとのことである。
インクライン沿いの道を行く。右側のインクラインに上がって、レールの敷石を踏みながら桜並木を進む。
左の階段を上がると、琵琶湖疎水の流れと水門が広がる。
大きな鉄管が展示されていた。これは琵琶湖疎水を山ノ内浄水場まで運ぶ導水管で、太さ1.65m、長さ4m、重さは5トンもある。
インクラインの入口だ。英語で傾斜鉄道を意味するインクラインは、ケーブルカーのような仕組みになっている。琵琶湖から疎水を上ってきた船は、この台車に乗せられて陸へと引き上げられていったのである。引き上げの動力には、これまた琵琶湖疎水を利用した水力発電所の電力を利用した。日本で初となる水力発電所の誕生である。
インクライン全体は、蹴上船溜から南禅寺船溜までの長さ582m、落差36mの間に引かれた4本のレール上を、旅客や貨物を載せ替えることなく運行する大掛かりなもので、平成19年度に近代化産業遺産に指定されている。
向こうの水門の袂に道標32があり、階段を上がり疎水をまたいで進んで行く。
階段のすぐ先に大神宮橋の親柱がある。ここから右手に、現在も稼働中の水力発電所が見える。琵琶湖疎水に映えるたたずまいが美しく、桜や木々が情緒に彩りを添える。
3.日向大神宮~七福思案処
緩やかな上り坂を進んで行くと「イノシシ出没注意」が、さらに進むと「野生日本ザル出没注意」の御触書が貼り出されていた。
日向大神宮(ひむかいだいじんぐう)の鳥居が現れたところで、道が3本に分かれている。通りがかりの人に尋ねたら、左を上がると墓場へ出るとのことなので、まっすぐに鳥居をくぐって進む。
そして、無事に日向大神宮に行き着いた。神社の石段の手前で昼食を楽しむグループがいる。右奥に道標があるのに気づき、後でチェックしようと考えていたのだが、結局、これは確認しないままに左側へと進んでしまう。右側のルートを進むと、七福思案処で左側ルートと合流することが後でわかった。
左の階段を上る途中に観光トイレがある。この先しばらくはトイレがないのでここを利用するようにと、何かの資料に親切なコメントが載っていたのを思い出す。
境内には美しい外宮がある。外宮の手前には能舞台が建っている。
さらに一段高いところに本宮があり、敬虔な気持ちでお参りする。
ここには天の岩戸があり、「開運厄除の神天の岩戸くぐり」の表示がでていたので、手前の穴を直進して左折するようにくぐり抜けた。
山道を行く。でこぼこ道、穏やかな道、根っこの張り出した道をどんどん進む。
やがて五叉路の七福思案処に着く。道標38と39が隣接していて、2本の道路は蹴上からのルート、左へ進むと南禅寺へと至る。右は山科方面へ向けての道、直進すると大文字山方面である。
時刻は11時58分、スタートからまだ50分ほどだ。ゆったりとした日だまりがある平地に、ビニールシートを広げて昼食にする。食事中に二人連れがやってきて挨拶。そばのベンチで休憩して先に発っていった。
4.大文字四つ辻~大文字山頂~大文字火床
ゆっくりと休憩して12時25分に出発する。歩き始めると眼下の谷に、大きな竹細工の篭のようなものが見える。送電鉄塔のようでもあるが何か判らずじまいだ。
今回初めて使用するストック。こんなスタイルで凸凹道をすいすい歩くので、道標41付近で、先に会った二人が昼食をとっているのを追い越して、「お先に~」。
両側が林で見通しの悪い山道が続く。可愛い外人の娘さんの姿が見えたのと同時に、左側にポッカリと穴が空いて景色が広がる。手前左には平安神宮の大鳥居が見え、しばらく美しい景観に見とれる。
そこを過ぎると、道標42、43-1~2、44-1~2とねばり強く前進する。路肩が谷へと落ちている道や、根っこ道などを根気で前進だ。
13時35分、ついに道標45の大文字山四つ辻に到着した。大文字山を示す手製の案内板がナビゲートしてくれる。
京都一周トレイルのコースからは外れるが、大文字山頂行きは最初から計画済み。コンディションがよければ火床まで行きたいと思っていた。
この時間とコンディションでとまどう理由はまったくなし。山頂までは200mほどなので即前進する。
前方が急に開けて、建設省国土地理院の「菱形基線測点」の碑と人影が見えてきた。眼下には絶景が広がり、しばし風景に見入った。やはりここまで来てよかったなぁ。
そして、相棒は双眼鏡で下界ウォッチング。京都御所や平安神宮がよく見えたそうだ。
標高465mの三角点をカメラに収めて、しばらく風景を楽しむ。汗が乾いたら大文字火床に向けて出発!
山頂から火床までの距離は650mばかりなのだが、なかなか行き着かない。途中、息を切らせながらすれ違うトレイルランの若者2~3人。さらに、銀閣寺から登ってきた青息吐息状態の母親を含む家族もいて、先頭を行く父親の不機嫌な様子が印象的。
そのうち、汗だくの3人娘に出会ってルートを確認する。火床という言葉が通じなかったのだけれど、「もうすぐそこ」と聞いて安心。しかしそれからも、なかなか先が見えず路面の険しい下りが続く。
ああ、やっと視界が開けた。もうすぐだと確信した風景がコレ!
14時20分、ついに火床に到着した。しかし火床といっても、あの大きな文字をつくるのだからこれはほんの一部に過ぎない。他の部分はどうなっているんだろう?
送り火の基地だけあってさすがに見晴らしは良いが、あの街の一角から、ここはいったいどのように見えるのだろうか。
眼下には急角度の階段が遙かに下へと続いている。その階段を一組のメンバーが上ってきた。これは息切れするはずだと納得する。一方で、そんなことなどお構いなく大勢のウォーカーが絶景を楽しんでいる。
頂上からここまでの道程を振り返ると、もういちど四つ辻に戻る気は遠に失せている。しかし、この階段を下りるのも楽ではなさそうだ。
そんな折り、一団が下山を始めた。それを見ながら、やはりここから銀閣寺方面へ下りるのが正解かなと決心する。だがこのルートを選ぶと、コースのかなりの部分をショートカットすることになってしまうので、それをどうするかは銀閣寺に着いてから考えることに・・・。
かかる状況でも、こんなにゆるりとくつろぐ人も居たりして・・・。
一段下りると小屋がある。大の字の中央に位置している大師堂で、弘法大師をお祀りしている。
「+」の形に組まれたレンガ。これが大の字の中心になる火床なのだろうか?
大学生らしい娘さんが大の字になって撮影中、となりからパチリといただきッ!
写真右中央の可愛い娘さんが大の字の人。そんなポーズを教えたのは左端の大学教授らしき人。この人は、娘さんの立っている向こう側のレンガから京大の学生たちが首だけ出してずらりと並び、「さらし首」撮影をやって喜ぶ話もしておった。
下り始めた坂道に沿って並ぶ火床。これは大の字のハネの部分かな?
長~い階段を降りてくる相棒。下りは苦手な二人なのだが、ここはよく整備されていて段差が小さいこともあり、足を前に出すだけで降りて行ける、まるで空を歩くような感じで軽快だ。
何百段を歩いたのだろうか。平地が近づくと燻蒸中の材木の山がビッシリ。ここでも、カシノナガキクイムシを燻蒸駆除しているのだ。
また、この一帯には森林管理事務所などの掲示板がたくさんあり、森林の状況や保全の大切さをPRしている。数十年とか百年単位のスパンで取り組まなければならない大事業なので、たいへんなことである。
あとは銀閣寺方面へ向かってひたすら下る。傾斜はゆるくなったけれど距離はしっかりあった。
5.哲学の道周辺~銀閣寺
到着は15時15分。咲き初めの花もきれいで、銀閣寺そばの哲学の道には大勢の観光客。中央に道標51が見えている。ここで、短絡してしまったルートを取り戻すべく道標48まで逆方向へと進むことに。
まずは、哲学の道独特の雰囲気・風情を楽しみながら、道標50までを散策する。
法然院にやってきた。門をくぐって庭園に向かう。伽藍内の春期特別公開を開催中でにぎわっていた。
椿の高い生け垣が美しい。
安楽寺は閉門の時間が迫っていたので外から拝観。霊鑑寺はすでに閉門されていた。
こうして道標48に到着、続いて拝観を予定していた銀閣寺へとひたすら歩く。
銀閣寺到着は16時ジャスト。閉門まで1時間の余裕にホッとしているところ。
椿の垣に囲まれた道を行く。修復後の姿を楽しみにして訪れた銀閣寺は、予想を超えて立派になっていてびっくり!
素敵な庭にしばし立ち止まり、最後に頂きの鳳凰をパチリ。
6.哲学の道~北白川ゴール道標54へ
16時半頃、ふたたび銀閣寺から哲学の道へと急ぐ。夕方が近かったが、道標51のあたりは花で明るく染まっていた。
途中の北白川天神の枝垂れ桜が満開で、しばらく足をとめる。
こうして、京都一周トレイル第2回の終端道標54に到着。向こうに見える日本パブテスト病院の手前が次回のスタート地点だ。
ここまでのアプローチにはバスを利用することになるが、便数が少ないので事前に十分チェックする必要がある。
この後、四条河原町でバスを下車して「おめん」にて反省会。京風の味に舌鼓を打ちながら春の宵を堪能しました。