1.出発~スタート地点
10時37分、鷹峯(たかがみね)源光庵前バス停にやって来た。千束に向かうため、あの転げ落ちそうな急坂を下る。
「古道 長坂越 至京見峠」の道標が立っている。落ち着いた雰囲気の家並みを進んで行く。
千束の分岐点へ着いた。が、「沢の池分岐から中川方面へは人も車両も通れません。解除時期は未定」の貼り紙。足が凍りついてしまった。様子をうかがうが、近辺を通るのは車ばかりで誰もやって来ない。
しばら待つ間に犬を散歩させている御仁が通りかかり、「そんなことはない、人は問題なく通れますよ」と聞き、不安を残しながらも10時55分にスタートする。
2.千束~上ノ水峠
千束から上ノ水峠までの北山コース迂回路は、紙屋川に沿って上る。ゆるやかな清流が美しい。
ところどころに民家がある。20分ほどで「千束から1.4km」の道標に出合う。
すこし進んで右折した先に、左へ向かって「中川3.7km」の道標が立っている。
そこを左折して、最初はゆるい階段を登る。やがて山道になりしだいに傾斜が増してくる。わずかに開けた木々の間から比叡山が見えている。
ところどころで倒木が道を横切っていたりするが、進行には問題ない。路面も橋も整備されているので、淡々と登るばかりである。
そして、今回初のトレイル道標76に到着した。上ノ水峠である。
3.沢ノ池~仏栗峠~高雄
上ノ水峠からの山道は歩きやすい。どんどん歩いて行くと中川方面からの車道と出合う。
ここが道標79で、京都一周トレイル「北山西部コース」の案内板が設置されている。
舗装道を進んで行くと、やがて山道に変わって沢ノ池に行き着く。そこに道標80が立つ。
美しい池と周辺の山々の風景に見入っていると、何人ものハイカーと出会った。この先の道路工事を心配している人には、千束の御仁から聞いたことを話す。
そんな折り、50歳前後と思われるカップルがやって来た。二人とも山を歩き慣れた感じで、北山の地図を広げながら、しばらくその素晴らしさについて話してくれた。山シャクヤクが咲く頃の桟敷ヶ岳が印象深く、その時期にぜひ出かけてみたいと思う。こんな出会いは最高に嬉しい。
沢ノ池を右手に見ながら南に進む。透明度が高くあまりに美しいので、水辺まで下りてみた。波ひとつない水面は、山を映し空を映して異次元空間をつくり出している。何組かの人たちが語り合っていて、しばらく腰を下ろしていたい思いに駆られた。
池が見えなくなってしばらくは平坦な道が続く。道標81を過ぎると急坂の根っ子道になる。
坂を乗り越えると道標82がある。標高410mの仏栗峠である。
道標84まではゆるやかな尾根道。そこからの急坂を下ると道標85になる。
道標85からは、ひたすら北山杉に囲まれた舗装道を下って行く。
やがて、車両進入禁止のロープが張られた道標87が待っている。
すぐ近くに「茶山栂尾」の石碑が建つ。伝えによると、鎌倉初期に栄西禅師が、養生の仙薬として宗から持ち込んだ茶種を明恵上人に贈り、栂尾にこれを植えたとのことである。宇治その他の地の茶も、もとはここから移し植えられたそうで、鎌倉時代、室町時代を通じて栂尾は茶の本園、その茶は本茶といわれ天皇への献茶が毎年行われたらしい。
旅館や食事処が並ぶ高雄の通り、時刻はすでに13時40分である。このあたりの店で昼食としたいのだが、ザックには弁当が入っている。そして、弁当を広げられそうな場所が見つからない。しかたなく道標88をやり過ごして清滝川の方へ進んで行く。
4.西明寺
「もみじの名所」西明寺へ差しかかる。これはもう立ち寄らずにはいられない。
以下は西明寺庭園の紅葉。30分足らずではあるが、高雄の秋を堪能することができた。
5.高雄橋~潜没橋・広場~清滝
西明寺から道標89を左に回り込んで高雄橋に来た。ここには道標90がある。
橋の上から、行く手に川床料理の店が見える。しかし、ちょっと寒くないかい? ちなみにこの川床、鴨川では「かわゆか」、貴船・高雄では「かわどこ」と言うそうで、おもしろい。
しばらくトイレがないのでここで小休止をとり、清滝橋を渡って清滝方面へと向かう。
歩き出してすぐ、学生と思われる青年が行きつ戻りつしている。話しかけると、この時間から清滝まで行けるかどうか思案中とのこと。まだ14時半前なので、自分たちも清滝を目指していて問題ないと話す。これがきっかけで、途中まで3人で歩くことになる。それにしても空腹が限界状態なのだが、弁当を広げられる場所はいっこうに見つかりそうにない。
北山杉に囲まれた道を行く。疲れを忘れ心が癒される風景だ。先ほどから、同行の青年が苔類についてしきりにしゃべっている。そう言われてみれば、たしかにいろんな種類の苔が生えている。変わり種があったのでデジカメを向ける。
青年は、さらに紅葉の美しさと光の関係について話し、太陽が傾いて光が弱くなっているという。そんな折りに、鮮やかなシーンが出現したので撮影する。道標91のすぐ手前である。
潜没橋を渡ると広場に出る。すでに15時前、やっと昼食にありつける。青年とはここで別れ、伊勢丹地階で買ってきた弁当(いつもはコンビニ弁当)を広げる。これは美味だった。
食事中に何人ものハイカーたちが通り過ぎた。このコースがいかに多くの人に親しまれているかを感じる時間になった。
15時20分、元気よく午後の部を再開する。岩肌の色・形が変わったのに気づき、以前栂尾から清滝川沿いに保津峡まで歩いたとき、このあたりから道が険しくなったことを思い出す。
出だしはできるだけ川から離れた位置を歩いていた相棒も、道がなくなれば岩の上を歩かないわけにはいかず、時には手を使わなければならないケースも・・・・。
こんな岩場は、這うしかないではないか!! それでもよく乗りきって、道標92が見えてきた。
清滝川を道路側に上がると道標93があり、右手にとって清滝へと向かう。
清滝まで1kmを切った。歩きにくい岩場の後の舗装道路は軽快だ。
北山コースのゴール道標94に到着。ここは愛宕山登山道入口でもある。
金鈴橋を渡ってバス停への道を急ぐ。やや急でダラ長のこの坂、かなり足腰にこたえるなぁ。
16時2分、余裕をもって清滝バス停に到着する。16時10分の四条河原町・三条京阪行きに乗車し、二条駅でJRに乗り換えて京都駅に向かう予定だ。
実はこの後が大変だった。バスは、バス停に人がいると停車していったんドアを開け、乗車客がいないことを丁寧に確認して発車する。おまけにラッシュタイムとあって、京都駅に着くまでに1時間半以上もかかってしまった。
京都駅では、急いで入ったイタリアンの店のセットメニューが出揃わぬ間に、予定電車の時刻が到来。食べ残したまま店を後にするが、今度は切符の購入に手間取って乗り遅れる。結局、予定より1時間あとの電車で岡山へ向かうことになった。清滝からの戻り時間にはこりごり、次回のアプローチは再検討しなければならない。