1.出発~スタート地点
梅田から京阪京都線での移動はスムーズにいったのだが、清滝バス停への到着は昼前になってしまった。やはり新幹線を利用すべきだったのでは、とどうにもならないことを考えながら坂道を下りて行く。
それにしても紅葉が素晴らしい。金鈴橋のあたりもしばらく観賞したくなる。
ところが、急にガス欠状態。なにしろ朝食のサンドウィッチはとうに消化済みで、これではとても先までもちそうにない。周囲を見渡すが食べ物を買える店は見あたらない。
なんとラッキーだろう! 渡猿橋の手前に「あまざけ・ぜんざい」の店。ここでとても美味しい「かやくうどん」をいただくことができた。食事を待っている間に、窓の外を大勢の園児たちが通り過ぎて行った。
ここが西山コースの出発地点だ。
2.清滝橋~潜没橋~落合橋
食事に満ち足りて渡猿橋を渡る。西山コース始点の道標1があり、渡猿橋からは彩りに満ちた川畔が見通せる。
渡猿橋から川畔に下りてきた。落ち葉の絨毯を敷き詰めた道が伸びている。
清滝橋を渡って行く。突き当たりには道標2が見えている。
道標2からふたたび川へと下りる。
川向こうに紅葉の木々に囲まれた建物が見えるが、これは廃屋のようだ。落ち葉に埋もれた橋を渡って行く。
しばらく寡黙に渡ってきた岩場をふり返ると、ゾクッとする。険しい岩場をよく頑張ったものである。何とか乗り越えた相棒の表情は柔和である。
やがて川畔のしっかりした道になり足どりが軽くなる。
金属製板敷きの橋を渡ると道標3がある。
比較的歩きやすい河原を15分ばかり歩く。
標識4を確認して、その先の潜没橋を渡ろうとすると遠くに何かが動いている。。
いやはや、潜没橋の向こうには、「あまざけ・ぜんざい」の店で食事をしていた折に通過していった園児たちがいた。あの険しい岩場を越えて来ているわけで、あらためて子供の逞しさに感心する。道標4の傍から上りの階段が始まる。
階段を上がると落合橋のたもとに出た。
ここの紅葉も一段と美しい。以前、落合橋から落合トンネルを通って保津峡へと歩いたことがあるが、今回はここでストップして方向を変える。
3.六丁峠~嵯峨野鳥居本
道標5-1から左に進んで、勾配のきつい車道を登って行く。
右側にはゆったりとした牛松山がそびえ、その左山裾に保津峡が見える。
保津峡にズームでせまると、あれはカヤックだろうか、小舟が流れを下って行く。
やや進むと桂川の流れ。その向こうに山陰本線の鉄橋が見えている。
ここが、きつい坂道の終点。六丁峠に着いた。道標も語呂合わせのように6だ。
道標6から車道を下って行くと鳥居本で、いきなり風景が変わって、左に愛宕念仏寺(おたぎねんぶつじ)の一之鳥居が現れる。大勢の参拝者がいたが、ここは道標8を確認して手を合わせただけで通り過ぎる。
一之鳥居のすぐ先には、歴史の香り漂う御茶屋の「つたや」。鮎料理屋として有名な店だとのこと。その先の玄関には、かようなワンちゃんがうたた寝をしていた。
4.化野念仏寺~落柿舎~常寂光寺
化野念仏寺の素晴らしい紅葉。もみじの紅に圧倒されてか、西院の河原(さいのかわら)が以前より狭くなったように感じられた。
なんとも風情のある通り。その先にある道標11。
道標11傍の二尊院をのぞいてみた。ここも紅葉の下を大勢の人が行き来する。
落柿舎のあたりには独特の風情がある。落ち着いた様子がなんとも好ましい。
道標12・13を確認して常寂光寺に入る。本堂までは行き着けなかったが、境内とその周辺の素晴らしい紅葉を満喫させていただいた。
5.トロッコ嵐山駅~渡月橋~阪急嵐山駅
かくして、ようやくトロッコ嵐山駅にさしかかり道標14をチェック!
そして大河内山荘前を通過。付近の竹林はいつも人が溢れている。
道標16をマークして嵐山公園にやって来た。
嵐山公園を南に下りると桂川に遊覧船が浮かんでいる。すでに15時を過ぎており渡月橋を急いで渡る。
にぎやかな土産物店の前を歩いていると、急に空腹感に襲われた。考えてみれば、昼食はしかるべき食事処でと思っていたので、スタート時の「かやくうどん」だけで歩いてきた。しかし時間の関係で、いまさら昼食というわけにもいかない。土産物店に入ってみるが、これといった昼食の代用品は見つからない。しかたなく、5種類の豆が袋詰めにされた「京の豆・ジャンボ袋」を購入した。
阪急嵐山駅で道標24をチェックして松尾山登山口へと急ぐ。
6.松尾山登山口~松尾山山頂~西芳寺~阪急上桂駅
松尾山登山口に着いたが時刻はすでに15時半。松尾山の下山が17時を過ぎるのは確実であり、途中で暗くなる恐れがある。しかし、ここで中止してもう一度来ることも考えにくく、強行することに決めた。
駐車場裏の路地のような道から入って行くが、思いのほかの急坂に息が上がる。軽装の若いカップルが先行しており、大丈夫かなと、自分たちのことはさておいて心配する。
松尾山の最初の道標29にたどりつき、30に向けて懸命に登って行く。標識30のあたりで先のカップルが立ち止まっており、どうやら続行を諦めたようだ。
誰もいない山道脇の木々が、夕方の柔らかい光に輝いている。こんな時間ならではの光景に見とれそうになる。
高度が上がると、平坦な道が続いており歩きやすい。
道標32の四つ辻に着いた。ここから山頂までを一巡するルートが始まる。一瞬、周回ルートをバイパスしようかと思ったが、これを打ち消して早足に入り込む。
道標32から北に広がる夕暮れ時の京都は幻想的だ。光線の関係から、山並みの陰影が立体感を際だたせる。登ってきてよかったと感じたひとときだ。
ついに松尾山山頂に着いた。東に比叡山をいただく京都の全景が広がっている。もうあちこちに街の明かりが灯っている。
すでに16時25分だ。ここからまだ図根点ピークに登り直して下山することになるので、先を急がなければならない。
アップダウンを繰り返しながら、いくらか明るい状態で図根点ピークの道標43に着くことができた。道標の撮影時に、デジカメの赤外線が白いプレートを真っ赤に染めるのが不気味だ。
薄暗い図根点ピークの林をかき分けて、東と思われる眺望に見入る。時刻は17時ちょうどである。
17時15分、暗くて周囲がほとんど見えなくなってきた。ヘッドライトを着用して注意深く下りて行く。少し進んでは後続する相棒の前方を照らすため、進行速度は極端に遅くなる。幸いなことに風が弱いので神経を集中できる。いったん暗くなれば、もうそれ以上暗くなる心配はないので、かえって気分は落ち着いてくる。妙な生物と出合わないかどうかが唯一の気がかりだ。
ゴール標識51をチェックしたのは17時26分。この11分間は3倍も長く感じられた。道標に隣接する西芳寺は暗闇の中である。
東に向かって歩き「華厳寺(鈴虫寺)150m」の標識を認めるが、近くのバス停の位置も判然としない。しばらく歩き、通りがかりの人にたずねて阪急上桂駅への経路を確認し、さらに20分近くかけて無事にたどり着く。
最終回のトレイルはかなりムリがあった。スタート時間があまりに遅すぎたことを含め反省点は多い。
しかし、これで3年がかり全8回にわたる京都一周トレイルを無事に終えることができた喜びは大きい。途中で腰痛に襲われて苦しむ時期もあったが、それも克服でき、相棒と二人で元気に完歩できたことは最高に幸せである。
このトレイルから、自分たちの力を超えた大きなものの存在を感じることができた。時折、何かに力を与えられて前進できていると感じることがあった。それは気分をリラックスさせる青葉の息吹であったり、心をやさしくする可憐な花であったり、アップダウン時に手を添えた木々や草が与えてくれるサポートであったりとさまざまである。これらはいずれも、自然という大きなものが授けてくれたパワーだと思っている。今、これらのすべてに感謝したい。