名 称

むろうこどう

地 域

奈良県宇陀市

距 離

約7.5km

日 付

2016年4月5日

天 候

晴れ

同行者

相棒と

マップ

このマップは、国土地理院の電子国土Webシステムから提供されたものを使用しています。

コース概要

近鉄榛原駅(はいばらえき)到着 10:23駅前でタクシー乗車 10:40頃高井バス停スタート 10:53
仏隆寺 11:31~11:52唐戸峠(昼食)12:23~12:51カトラ新池 13:00腰折地蔵 13:30
西光寺 13:45~14:00室生寺 14:28~15:10室生寺バス停で乗車 15:30大野寺バス停で下車 15:42
大野寺 15:43~16:05近鉄室生口大野駅 16:10

 岡山方面から始発の普通電車で出発し、JRと近鉄大阪線を順調に乗り継いで榛原駅に到着した。まずは昼食を用立てに駅前の「手づくりそうざい」の店へ立ち寄る。「安くて美味しいと評判が良い」とは相棒のネットによる事前調査評。とりわけ美味しそうなのを買い込んでタクシー乗り場へ戻ると、10人ばかり並んでいる。バスの便が少なくて利用できないので、ここはタクシーを待つしかない。それでもグループが多かったので10分ほどで乗車できた。

1.高井バス停~仏隆寺

 榛原駅からわずか10分ほどなのだが、少しばかりくたびれ気味のタクシーのブルブルという震動と、たび重なる鋭いコーナリングで急に腹が減ってきた。降車してバス停の路線表示を見ると、読めナイ! 後で調べると自明は「じみょう」、赤埴口は「あかばねぐち」だそうで、異国に舞い降りたようだ。立派な「高井周辺観光案内図」が設置されている。

 整備されている道標。これなら地図をもたなくても道迷いの心配はない。「大和茶発祥伝承地・摩尼山仏隆寺」「左・室生山道」などの石柱が立ち、道標にしたがってスタートする。

 3分ばかりで分岐に出合うと、これまた分かりやすい道標があり室生古道側へ入る。

 小さな頭矢橋(とうやばし)を渡って少し進むと石柱と道標が並立しており、左側を直進する。

 すぐ先に「ギャラリーカフェ Some Time」の洒落た店名プレート。純和風建築のどっしりとした建家の前に、グランドピアノを模した案内板があり「金・土・日曜美術館」と表示されている。今日は火曜日なのでお休みだ。そこから2分、「壹丁」と刻んだ丁石が立っていた。

 緩やかではあるが坂道が続く。その坂道を絶え間なく車がやってくるので気を抜けない。傾斜が増してスリップ防止の路面になってきた。

 「仏隆寺 0.5km」の道標から先はさらに傾斜が急になり、蛇行した道路を進んで行く。やがて仏隆寺の駐車場が見えてくると、たくさんの乗用車が停まっている。

 仏隆寺は茅葺きの地蔵堂に着いた。石に刻まれた地蔵さんが祀られている。

 山門までの石段は197段とか。下りてくる姿も大変なようだが、登るのはかなりなもの・・・。が、千年桜はまだ咲いていないようだ。

 相棒も頑張って登ってくる。左手に、キツイ登りを忘れさせるように華やかな桜。山門に到着した。賽銭箱に入山料を納めて境内に入る。

 正面に本堂があり、「大和茶発祥伝承地」の石碑が立つ。仏隆寺は空海の高弟である堅恵(けんね)により創建された名刹で、室生寺の南門と言われる真言宗室生寺派の末寺である。空海が唐から持ち帰ったお茶をこの地で栽培したことから、大和茶発祥の地として知られている。

 本堂で参拝を済ませて、東に隣接する白岩神社へ向かい鳥居へと下りて行く。

 桜の大樹はまだ花をつけていない。その向こうの千年桜もまだ咲いてない。右手に水車小屋を見ながら坂道を登る。

2.唐戸峠~カトラ新池~腰折地蔵

 室生寺まで5.6kmの道標は山中への上り坂を指している。これは厳しい道程になりそうだ。

 予想通りどこまでも急な上りが続く。息が上がってくるが、できるだけ休まないように小さな歩幅でゆっくりと登って行く。この歩き、もはや山歩きのペースである。

 杉の林と、枝打ちされた杉の小枝を敷き詰めたような道が続く。

 左手の山側に大きな一枚岩が見えてきた。岩がゴロゴロした、これぞ室生古道といえる道を行く。

 役行者が祀られた祠。そのお姿をカメラに収めると唐子峠に到着だ。東屋で先着のご夫婦と話しながら、待ちかねた昼食をいただく。さすが評判の店の弁当とあって、美味しく腹一杯の満足感。

 東屋を後にして、道標の室生寺方面へと向かう。

 山間にタムシバが純白の花をつけている。舗装道だが車はほとんど通らない。緩やかな坂を相棒とスタコラと下りて行く。

 唐戸池かと思ったらカトラ新池だった。坂道を急いでいたら逆方向からやって来た7~8名のグループとすれ違う。

 室生寺まで3kmになった。道の右側を渓流が流れている。

 桜並木に差し掛かったがほとんど蕾状態で寂しい感じ。辛うじて一輪咲いていた。葉芽と花が同時についているので山桜と思われる。開花すると素晴らしい景色が広がるに違いない。

 おお、これはなんだ! 相棒は狒々(ヒヒ)のようだと言い、自分は獅子(シシ)かと思ったのだが・・・。桜の木に枯れた木が被さって生き物のようだ。室生寺まで1.5kmまで近づいた。

 このあたりは室生赤目青山国定公園の一部である。室生赤目青山国定公園は、近畿地方中部・三重県から奈良県にまたがる山間部の国定公園とのこと。初めて聞く名前だ。その一角に、淡色の桜花があたりの空気を染めている。

 害獣保護フェンスがあり、ゲートを開けて通過し確実にロックする。間もなく腰折地蔵に到着する。地蔵堂の中に石地蔵が安置されている。何度も倒されて腰の部分が折れているのが名前の由来、腰から下の病に霊験あらたかとされる。

3.西光寺~地蔵院~室生公園

 腰折地蔵から5分、素晴らしい枝垂れ桜に出会う。白壁と日本瓦の大きな屋敷に寄り添うように咲く桜。これはそのまま絵のようで、いつか観たジュディーオングさんの版画を思い出す。

 芸術の森と室生山上公園の分岐に出合ったが、この道標の手前を室生寺の方に蛇行しているもう一本の坂道があり、それを下って行く。遠目にもハッとするような見事な桜が見えてきた。

 西光寺は天正8年(1580年)に西光が開基した融通念仏宗の寺である。境内にある城之山枝垂れ桜は樹齢約四百年と言われる。(以上は境内に立つ室生区作成の説明板「西光寺の由来」より。樹齢について宇陀市では約300年としている)
 実物の素晴らしさとはほど遠いが、城之山枝垂れ桜の美しい光景を何枚か切り取ってみた。

 そして花に見とれていた相棒も一枚。眼下に広がる室生の里の風景を眺めながら下りて行く。

 歩行者用の古い道標を室生寺方面へ進むと地蔵院があった。

 やがて室生公園を通り、あさぎり橋に着いた。あさぎり橋は渡らず手前を右折する。

 突き当たりに道標があり室生寺まで0.4kmの表示。家並みの間を下り進む。

4.室生寺

 「女人高野室生山」の石柱が建つ室生寺の正面に下り立った。旅館や茶店を通り越し朱色の太鼓橋を渡って境内に入る。

 表門は閉まっている。ここにも石柱があり「女人高野室生寺」と刻まれている。女人禁制の高野山に対し、古くから女性の参拝が許されていたことから女人高野の別称で親しまれている。右手に進むと「三宝杉」と呼ばれる巨木があり、その先が受付だ。

 拝観料を納めて右手に進むと仁王門が建つ。元禄に焼失したままになっていたが昭和40年に再建されたということで、色鮮やかで美しい。門の奥に進むと左手に長い石段がある。これは「鎧坂」と呼ばれ、気合いを入れて登る。

 上り詰めたところに国宝の金堂がある(写真左)。寄棟造りの柿葺(こけらぶき)で平安時代初期の建造。前面に張り出した高床の部分は、江戸時代に礼堂として付加されたものである。写真右は、金堂の左に建つ弥勒堂で、鎌倉時代の建築。重要文化財に指定されている。厨子入りの弥勒像が安置されているとのこと。

 金堂の左にある石段を登ると本堂がある。真言密教の最も大切な法儀である灌頂(かんじょう)を行う堂であることから灌頂堂とも呼ばれる。鎌倉時代の建立で国宝。

 本堂からやや離れたところに北畠親房の墓がある。鎌倉時代後期から南北朝時代の公卿で、著書の『神皇正統記』で知られる人物である。

 そして、さらに石段を登ると美しい五重塔が建つ。屋外に立つ五重塔としては最も小さく、平安時代初期の建立で国宝に指定されている。屋根は檜皮葺(ひわだぶき)で高さは16.1m、法隆寺の五重塔に次ぐ古塔である。
 五重塔の先には奥の院へ通じる長い石段が見えるが、奥の院はここで参拝を済ませて引き返す。

 室生寺発行パンフレットの「室生寺縁起」によると、奈良時代の末期、桓武天皇が皇太子のころに病気になり、この地で行われた祈願に卓効があったことを感謝されて、勅命によって創建されたのがこの室生寺であるとしている。各宗兼学の寺院であったことから、独特な仏教文化を形成するとともに数多くの仏教美術を継承しているとのことである。
 室生寺の境内を移動しながら石段が多いことに驚いた。しかし女人高野の別称を持つだけあって、建ち並ぶ堂塔が大寺院のそれと違って威圧的でなく、ほど好い大きさで美しさをたたえている。境内の景観と合わせて、ここには心なごむ空間が広がっている。
 そんな思いを抱きながら石段を下りて行く。最後に太鼓橋で相棒の笑顔を一枚。

 室生寺バス停には早めに着いたが、ウォーキングを楽しむグループなどで長蛇の列。それでも何とか全員バスに収まり、蛇行がすさまじい奈良県道28号線を大野寺へ向けて移動する。

5.大野寺~室生口大野駅

 役小角(えんのおづぬ)が開基したとされる古寺で、本尊は弥勒菩薩。室生寺との結びつきが強く室生寺の西門と言われる。門から一歩入ると2本の見事な枝垂れ桜に目を奪われる。

 「小糸枝垂桜」の名板が立つこの桜は、コイトザクラという珍しい品種だそうで樹齢は三百余年。西光寺の城之山枝垂れ桜が親木といわれている。はてさて、プライオリティを考えると、まずは相棒の写真からということになる。

 大野寺は花の寺だ。他にもいっぱい咲いている。
  〔紅い椿、レンギョウ〕

  〔紅枝垂れ桜〕

  〔土佐水木(トサミズキ)〕

  〔白い椿、ボケ〕

  〔木蓮、ソメイヨシノ〕

 境内から、宇陀川対岸の高さ30mの大岩壁に刻まれた弥勒磨崖仏を観る。岩壁を高さ13.8mにわたって光背形に掘り、その内面を水磨きして、像高11.5mの弥勒仏立像を線刻したものだ。ズームで頭部を撮影してみた。

         

 遙拝所から磨崖仏を拝し、もういちど小糸枝垂桜に目を向けて大野寺を後にする。

 ゴールの近鉄室生口大野駅は高台にある。長~いスロープを年輩のご婦人二人連れがゆるゆる移動している。少しだけ余裕を残すことができた我々は階段をエッチラオッチラ。プラットフォームでも素晴らしい景色が待っていた。