1.南方交番前バス停~国道53/130号陸橋
岡山駅バスステーションから約5分、南方(みなみがた)交番前で下車する。降りるとバス停の正面にトマト銀行本店ビルが建つ。ここがスタート地点だ。すぐ先の左手にはどっしりとしたベネッセの本社ビル。
バス進行方向の数メートル先を左折して進む。通りの向こうには新幹線の架橋が見えている。100mばかり行くと右側に美しい和風建築の吉備路文学館が現れる。特別展「没後70年・薄田泣菫展」が開催されており、あわせて倉敷市所蔵「15人の文豪による泣菫宛書簡展」が開かれている。ちなみに、名だたる文豪たちが泣菫に寄せた書簡の内容はとても面白い。
間もなく西川と出合うので、その手前を左折して川沿いを歩く。やがて煉瓦造りのパーゴラが現れて公園らしくなる。このあたりが西川緑道公園の北端である。パーゴラは藤が茂ってぼさぼさ頭になっていた。
平成24年(2012年)に完成して、まだピッカピカの岡山後楽館中学校・高等学校を左に見ながら進む。校門前のあたりの西川は妙な具合になっている。遊歩道脇の階段から川へ降りられるのだが、舗装された底部は流水に洗われている。川の側はフェンスで仕切られているので船着き場でもなさそうだし、いったい何だろう・・・・・。そして最初の水上テラスに近づくと、煙草をくゆらせる男性の姿。
やがて国道53/130号と交差するが、いったん左手前の南方公園の敷地へ入り込んで横断陸橋へと向かう。
2.時計台の水上広場~電車通り噴水広場
陸橋を渡って、信号に注意しながら西川へ再アプローチすると、緑道公園の案内板が設置されている。遊歩道には川を背にしたベンチが設置され(バス停なので)、川には小さな橋がいくつも架かっている。
時計台のある水上広場が見えてきた。西川の美しい一角である。いつも何人かが憩っているのだが、この時は珍しく誰もいないのでこんな角度でシャッターを切る。
このベンチからは川の流れを間近に見ることができる。川辺に生えている緑は黄菖蒲(キショウブ)で、初夏には一面が鮮黄色に染まる。後楽園通りが交差しているのは青柳橋(あおやぎばし)で、翼を広げた優雅な鶴の姿をしている。
ちょっと腰を下ろしてひと休みできるように、石の椅子が並ぶ。この時期は山茶花が紅の花をつけている。
桜の花模様を配した天城上橋(あまきかみはし)の向こうに「ROCK FIELD」の文字。素敵なギター専門店がある。ドアのガラス越しにエレキギターやアコースティックギターが並んでいる。思わず入りたくなってしまう雰囲気だ。
続いて御影石と緑の幾何学模様の天城橋(あまきはし)。その先から煉瓦造りのパーゴラが続いている。
煉瓦の八角柱の上に八角形のコンクリート部材を戴く凝った造りだ。この一帯は桜の木が多く、春には空と川面をピンクに染める。しゃれた街灯が設置されている。
川底に根を張った大木と水面の境目にハトが遊んでいた。
上西川橋を行き過ぎると十字路になり、そこを右折すると岡山駅前商店街だ。電車が走っているのは「桃太郎大通り」である。
円形噴水が設置されているが、水が出ていないのは残念だ。桃太郎大通りから見える「若き日の母」の像。長崎平和祈念像の作者として有名な彫刻家北村西望(きたむら・せいぼう)の作品である。
桃太郎大通りにある西川橋。北側の欄干のそばには子供の桃太郎と、家来の犬のブロンズ像が立つ。交差点を渡って、大通りを挟んで向かいに見える緑屋根のあたりへ移動する。
3.西川橋交番~ほたるみち
緑屋根の建物はちょっとイキな西川橋交番。その前の欄干にもう二匹の家来であるキジと猿がいた。猿の写真は撮り忘れてしまった。
交番のすぐ裏にある桶屋橋に立って、これから歩く西川緑道公園を望む。
先と同じ北村西望作の「夢」。 頭に蝶をとまらせた少女像の台座プレートには、作者の書で「ねむの花 しばし まどろむ ゆめの夢」と刻まれている。その近くにあるお店に向けてシャッターを切る。このあたりから国道2号線の手前まで、公園の両側には道路を挟んで個性的な店がいくつもある。
高らかにハトを掲げた平和像が立つ。彫刻家岡本錦朋(おかもと・きんぽう)の作品だ。台座裏に以下が記されている。
「この像は郷土の香り高い文化を象徴するとゝもに空襲當時の惨禍を囘想して再び戦争の不幸を繰返さないよう世界恒久の平和と郷土永遠の幸福を希う心の道標として建設したものである どうか往く人も環る人も均しくこの像を親しみ仰ぎ常にほのぼのとした愛の心を寄せられんことを 昭和二十九年六月二十九日 岡山市長 横山昊太 撰」
緑のパラソルの下は、岡山市が実施しているオープンカフェ社会実験(2015年9月19日~11月30日)「そらカフェ」だ。
川に柵のある風景、変化があってしかも歩きやすい遊歩道。川にはイルミネーションが設置されている。
風情のある街灯をのせた野殿橋(のどのばし)。その先に文学碑がある。
「冬夜の駅 妻一人の 出迎えがよし」
作者の和田博雄は岡山で左派社会党から代議士となり、「第1次吉田内閣で農林大臣、片山内閣で経済安定本部総務長官、その後左派社会党政策審議会長・書記長、 日本社会党政策審議会長・国際局長・日本社会党副委員長を歴任」した(「」内はWikipediaより)。新幹線も飛行機も利用できなかった時代、激務を終えて故郷に戻るのを出迎える妻への思いやりが溢れている。
灌漑用水路としての西川にはところどころに樋門がある。古いものが多いのだが、この樋門は新しく電動のようだ。取り入れた先の水路は暗渠になっているので見えないが、側溝の蓋をたどって行くと、中四国最大規模の都市型大規模モール「イオンモール岡山」の方に流れている(「たのしい散歩入門」で確認)。
県庁通りが横切る平和橋に着いた。左折して東に歩くと岡山県庁、右折して進めばイオンモール岡山へ通じる。
信号待ちの平和橋の向こうに、アーチの門のようなものが見える。電気工事をやっている人たちがいて、「西川イルミ2015」の準備が進んでいるようだ。11月29日から12月27日まで、「水と緑の回遊路」と題してLEDのイルミネーションが公園を彩ることになる。
平和橋のたもとに建つ岡崎平夫(おかざき・ひらお)氏の顕彰碑。岡崎氏は昭和38年に岡山市長に就任し、5期20年にわたって「緑と花 光と水」を基本理念に街づくりを推進、足掛け10年を費やして西川緑道公園・枝川緑道公園を完成させた人物である。その先には新聞少年の像。彫刻家朝倉響子(あさくら・きょうこ)さんの1958年の作品で、正式名称は「新聞を配る少年像」。
古い橋が架かっている。橋名板はかなり痛んでいるが「さいわいばし」と読み取れる。
ふたつの東屋(あずまや)と川岸を何本もの通路で結ぶ水上テラスだ。いつも誰かが憩っている西川緑道公園の中心的なエリアである。西は下石井公園で、図書館・多目的ホール・展示コーナーなどのある西川アイプラザが建っている。
愛称「あくら通り」が横切る出石橋(いづしばし)。ちなみに「あくら」はクロガネモチの岡山独特の呼称で、岡山市の木に指定されている。川には大きな石がいくつも・・・・・、これってオブジェかな? 好い雰囲気だなぁ。
市街地の喧噪を忘れてしまうような風景。ここからしばらくは「彫刻の森」が続く。遊歩道沿いの素晴らしい彫刻に、歩みが遅くなるエリアである。光が飛びっ切り美しい場所でもあり、11月にもかかわらず、木々も橋も陽光に輝いている。
彫刻の森を抜けると田町橋だ。古い欄干の両側に歩道をつけて新しい欄干で挟んだ、サンドウィッチ構造になっている。傍らに「岡山大空襲による被災建築物説明板」が設置され、このあたりの被害が特に大きく多数の人びとが亡くなったが、田町橋は欄干に大きな傷跡を残しながらもかろうじて焼け残ったと記されている。写真右の橋柱にも、破損後に再接合したと思われる傷が見える。
この一帯は「カスケード」と呼ばれている。カスケードと聞けば、すぐにネットワーク機器の接続方式やデータベースの更新手法を連想してしまうのだが、もちろんそんなものは関係ない。小さな滝や滝状の流れのことで、子供たちの水遊び場として整備された3段の小さな滝だ。
カスケードエリアの端には北村西望氏の「平和の女神」ブロンズ像が建つ。美しさと力強さを感じる、好い作品だ。薬研堀橋(やけんぼりばし)を過ぎると風景がガラリと変わる。
両岸に木々が鬱蒼と茂る「ほたるみち」である。名のとおり蛍を飼っている区域だ。川の一部を溝のように仕切って流れをコントロールしていて、遊歩道は木道に変わる。木道から溝をのぞき込んだら、ホタルのえさのカワニナと思われる貝が生息していた。
4.枝川緑道公園入口~噴水広場~大学病院入口バス停
西川緑道公園は国道2号に突き当たる。国道の通る橋は瓦橋と呼ばれ、よく見れば欄干があるのだが、交差点の信号に気をとられて見落としてしまう。ここで西川は南東方向(左斜め)に曲がり、支流の枝川が真っ直ぐ南へ延びる。
交差点を渡って向かいの枝川緑道公園へと移動する。山茶花が咲く遊歩道を行くと、敷石の道に風情が漂う花木園エリア。
庭瀬口橋から先は池沼エリアで、東屋には憩う人たち。手前の垣に囲まれたところは菖蒲園で、春になると沢山の菖蒲が生え揃う。
東屋を過ぎると、池に見立てた川に橋を架け庭石や草木を配した日本庭園が広がる。視野には周辺の建物が入ってくるが、そんな市街地にあっても安らぎが感じられる空間である。欄干に花を配した新内田橋を行く。
新内田橋の先は石を敷き詰めた水上広場で、その一角に稲荷大明神が祀られている。隣は枝川橋だ。
続くはトレリスのエリア。トレリスはツル性植物を這わせるための格子状の垣のことだが、ここのトレリスは少し様子が違う。石柱づくりの立派な棚になっている。広い花壇に植えられた沢山の苗、開花が楽しみだ。
柳と橋が調和した日本庭園のエリア。味のある木製の橋は京町橋だ。
ここも緑と光が豊かで、下枝川橋までの空間は陽光に輝いている。
南端の噴水広場に着いた。岩を立てかけて造られた芸術的な噴水なのだが、残念ながらこの季節は水が出ていない。周辺には石のベンチがあり、地域の人たちが歓談している様子が見られた。そして公園最後の橋は鹿田橋。
鹿田橋を渡って大学病院通りを西へ向かう。岡山大学病院正門の先が大学病院前バス停である。巡回バス「めぐりん」に乗って岡山駅方面へと帰る。