1.レイアウト
ケースにどのようにボードやパーツを収納するか。まずは完成品の状態を掲載しておきましょう。ただし、これは一例に過ぎず、もっと良い配置があるかも知れません。これを参考にプランを練ってください。
左上の「Headphone Amp. & EQ Buffer Amp.」は2つのボードを二階建てにしたもので、第3項「取り付け前の準備」で説明しています。
〔ヒント〕
組み付けにあたって両面スルーホールユニバーサル基板の不要部分を除去する場合は、次の手順で行うと簡単できれいに仕上げることができます(部品表で紹介している基板に限定です。他の基板では切断できなかったり破損も)。
1) ホールの間などホールに重ならない位置を選ぶ。
2) カッターナイフで表裏両面から切り込み線をつける(ていねいに、しっかりと)。
3) ニッパーで切り込み線の端を軽く切ると、切り込み線に沿って連鎖的に切り離される。
4) 切り口を目の粗いサンドペーパーで磨いて、必要な寸法に切り詰める。
5) 切り口を目の細かなサンドペーパーで磨いて仕上げる。
2.使用部品・材料など
組立・配線ではたくさんの部品や材料を使用します。必要な部品類は以下のとおりです
(No.2以降の価格は秋月電子通商調べ)。
No. | 名 称 | 数量 | 参考単価 | 備 考 |
1 | サンハヤト 工作用ベーク板 NO.1 100x150x1.0mm | 1 | \139 | |
2 | ケース タカチ電機工業 YM-150 150x40x100(mm) | 1 | \1,180 | |
3 | Raspberry Pi Pico | 1 | \600 | |
4 | 両面スルーホールユニバーサル基板 3 * 7 | 2 | \40 | 1枚は端材でよい |
5 | LED 3mm 青色 | 1 | \20 | |
6 | LED 3mm 赤色 | 1 | \10 | |
7 | 3mm LED用ブラケット&カバー | 2 | \25 | |
8 | 3.5mm ステレオミニジャック | 2 | \80 | |
9 | パネル用押しボタンスイッチ オルタネート 丸型 赤 | 1 | \70 | |
10 | 分割ロングピンソケット 1x42 | 1 | \80 | |
11 | ピンヘッダ (オスL型) 1x40 | 1 | \50 | |
12 | M3プラネジ+六角スペーサー(14mm)セット | 2 | \50 | |
13 | プラスチック鍋小ネジ M3x10mm 6本入り | 3 | 八幡ねじ製 ホームセンターで | |
14 | プラスチックスペーサー M3x5mm | 30 | ホームセンターで | |
15 | プラスチックスペーサー M2x10mm | 2 | \20 | |
16 | なべ小ねじ プラスチック M2x5mm | 2 | \10 | |
17 | M2六角ナット プラスチック | 2 | \10 | |
18 | 耐熱電子ワイヤー 2m 7色 | 1 | \480 | |
19 | カーボン抵抗 2kΩ | 1 | \1 | 1袋100本入り単価 |
20 | 積層セラミックコンデンサー 0.1μF 50V | 1 | \10 | 1袋10本入り単価 |
21 | ステンレス鍋小ネジ・ワッシャ・ナットのセット M3x10 | 1 | ホームセンターで | |
22 | 絶縁用ビニールPPシート(クリアファイルなど) | 1 | 百均などで | |
23 | ピンヘッダー 1x40 | 1 | \35 |
・No.1:ベーク板
ケースの内径に合わせてカットし、組み立て用のシャーシーとして使用します。
もう少し厚いものを使いたかったのですが、1.0mmが組み込み後の高さの限界です。
・No.4:ユニバーサル基板
1枚はPi Picoを取り付けるベッドに使います。
切れ端を使って、2つのLEDの取り付けと電源の共通ラインを設置します。
・No.13:プラスチック鍋小ネジ
ネジとワッシャ、ナットがセットになっていて価格も安くボードの取り付けに重宝します。
・No.15~17:M2のプラスチック部品
取り付けスペースの都合でLED取付基板をシャーシーに固定するために使用。余裕があればM3でも可。
・No.19,20:カーボン抵抗とコンデンサー
押しボタンスイッチのチャタリング防止に使います。
・No.21:ネジ類
ケースにアースを落とすために使います。写真を参考にしてください。
・No.22:クリアファイル
切り取って、イコライザーバッファアンプとヘッドフォンアンプを二階建て構造にするときに絶縁体として使用。
ケースの上蓋の内側に貼り付けて、ケースと部品の電気的な接触を防ぎます。
3.取り付け前の準備
ボードをシャーシーに取り付ける前に、次の組み立てを行う必要があります。
○ボードの二階建て構造
ボード類を単純に平面に配置するとケースに収まりきれません。そこで、苦肉の策で、イコライザーのバッファアンプの上にヘッドフォンアンプを二階建てにすることにしました。この工程の撮影を忘れていたので、組み込み後のわかりにくい写真ですが、構造を想像してください。
ヘッドフォンアンプを上にして、両方を長さ14mmのプラスチック六角スペーサーで止めています。そのままだとバッファアンプの部品がヘッドフォンアンプの裏面の配線とショートするので、クリアファイルを絶縁体に利用しました。ボードの大きさに切り取って四隅に穴を開け、上側にプラスチックワッシャーを糊付けします。それを挟んで六角スペーサーのネジ側を通してナットで締め付けました。
バッファアンプ側は、M3(3mm径)のビスに高さ5mmのスペーサーを通して、六角スペーサーのもう一方をシャーシーに固定します。
○Raspberry Pi Picoのベッドとソケット
Raspberry Pi Picoで電圧測定やリレー制御をしますが、プログラムの更新などで必要に応じて取り外しができなければなりません。簡単に取り扱えるように、ユニバーサル基板と分割ロングピンソケットを使ってベッドを作成します。
ベッドは、ユニバーサル基板をPi Picoのサイズに合わせてカットし、分割ロングピンソケットを20ピンに切り離したもの2組をハンダ付けすれば完成です。ユニバーサル基板には、シャーシーに取り付けるための径3mmの穴を四隅に開けておきます。
Pi Picoをベッドに取り付けるために、使用しないピン位置に、2Pづつ切り離したピンヘッダー4組をハンダ付けします。ピン位置は、第6と7ピン、第19と20ピン、第21と22ピン、第34と35ピンです。これをベッドに差し込むことで固定します。
Pi Picoへの配線は、Pi Picoに取り付けたロングソケットにオスのL型ピンヘッダーを差し込んで行うことにして、それに必要なロングソケットを上向きにハンダ付けします。ハンダ付けの位置は、
・第11~18ピンに8Pのソケット
・第30~33ピンに4Pのソケット
・第36~40ピンに5Pのソケット
です。これは下の写真を参考にしてください。ベッドに固定すると右のようになります。
○LEDポート
スルーホールユニバーサル基板の切れ端を使って、赤色と青色のLEDを取り付けます。ケースの穴に一致するように、あらかじめ横幅を決めてハンダ付けします。また、各ボードからの[Vcc]と[GND]をここに集約して結線するために、抵抗器のリード線を使って2本を並行にハンダ付けしています。
LEDのアノード側はPi Picoに繋ぐので配線用のワイヤーをハンダ付けし、カソード側は4.7kΩのカーボン抵抗で[GND]にハンダ付けします。このポートはM2(2mm径)長さ10mmのプラスチックスペーサーでシャーシーに固定します。LEDの縦方向の位置は、LEDのリード線を曲げることによって調整します。
4.ボードの組み付け
ケースの内径に沿って切り取ったベーク板に、それぞれのボードを並べて配置を決定します。配置が決まったらドリルで取り付け用の穴を開けます。参考までに、右の写真はボードを組み込んだ後の裏面です。同じサイズ(M3)のプラネジを上にねじ込んで固定しているので、ケースに入れると底面はピタリと収まります。
ベーク板は1mmと薄いので、穴の位置がずれていると、すべてのボードの組み付けが完了したときに歪みが起きるので注意が必要です。
5.ボード間配線
写真は、ボードをシャーシーに組み付けて、その他の部品類との配線が完了したものです。以下では、それぞれのボード/部品間の配線を取りまとめます。
ピンソケットが設置されているボードは、L型ピンヘッダーと耐熱電子ワイヤーを使って配線します。その他の小さなボードや部品は、ワイヤーを直接ハンダ付けします。L型ピンヘッダーを使う部分は、配線を取り外してボードのメンテナンスができるようにするのが目的なので、配線に余裕を持たせます。
○マイクアンプ
・Mic.(L), Mic.(R), GND
→ マイク用の3.5mmステレオミニジャック
・Output(L), Outpur(R), GND
→ イコライザーバッファアンプのInput(L), Input(R), GND
・Vcc, GND
→ LEDポートのVcc・GNDライン
○イコライザーバッファアンプ
・Input(L), Input(R), GND
→ マイクアンプのOutput(L), Outpur(R), GND
・Output(L), Output(R), GND
→ ヘッドフォンアンプのInput(L), Input(R), GND
・Cut(L), Boost(L), 1/2Vcc(L)
→ グラフィックイコライザーのCut(L), Boost(L), 1/2Vcc(L)
・Cut(R), Boost(R), 1/2Vcc(R)
→ グラフィックイコライザーのCut(R), Boost(R), 1/2Vcc(R)
・Vcc, GND
→ LEDポートのVcc・GNDライン
○グラフィックイコライザー
・Cut(L), Boost(L), 1/2Vcc(L)
→ イコライザーバッファアンプのCut(L), Boost(L), 1/2Vcc(L)
・Cut(R), Boost(R), 1/2Vcc(R)
→ イコライザーバッファアンプのCut(R), Boost(R), 1/2Vcc(R)
・Vcc, GND
→ LEDポートのVcc・GNDライン
○ヘッドフォンアンプ
・Input(L), Input(R), GND
→ イコライザーバッファアンプのOutput(L), Output(R), GND
・Output(L), Output(R), GND
→ イヤフォン用の3.5mmステレオミニジャック
・Output(L), Output(R), GND
→ リレーユニットの回路1[NO], 回路2[NO], [COM]
・Vcc, GND
→ LEDポートのVcc・GNDライン
○モバイルバッテリー受電部
・+-ピンソケット
→ Pi Picoの39ピン(VSYS)と38ピン(GND)
・分圧抵抗の100kΩ側
→ 降圧DCDCコンバーターの[出力]
・分圧抵抗の中間点(計測点)とUSBコネクター[-]
→ Pi Picoの32ピン(GP27)と33ピン(GND)
・USBコネクターの[+][-]
→ 降圧DCDCコンバーターの[入力]と[GND]
○降圧DCDCコンバーター
・[入力]と[GND]
→ モバイルバッテリー受電部USBコネクターの[+]と[-]
・[出力]
→ リレーユニットの電源接点a
・[GND]
→ LEDポートのGNDライン
○リレーユニット
・電源接点a
→ 降圧DCDCコンバーターの[出力]
・電源接点b
→ LEDポートのVccライン
・回路1の[COM]と[NO]
→ ヘッドフォンアンプのOutput(L), GND
・回路2の[COM]と[NO]
→ ヘッドフォンアンプのOutput(R), GND
・Signalの[Power], [Mute], [GND]
→ Pi Picoの16ピン(GP12), 17ピン(GP13), 18ピン(GND)
○Raspberry Pi Pico
・11ピン(GP8)
→ LEDポートの青色LEDアノード
・12ピン(GP9)
→ LEDポートの赤色LEDアノード
・13ピン(GND)
→ 押しボタンスイッチ
・14ピン(GP10)
→ 押しボタンスイッチ
・16ピン(GP12)
→ リレーユニットのSignal[Power]
・17ピン(GP13)
→ リレーユニットのSignal[Mute]
・18ピン(GND)
→ リレーユニットの[GND]
・32ピン(GP27)
→ モバイルバッテリー受電部の分圧抵抗の中間点(計測点)
・33ピン(GND)
→ モバイルバッテリー受電部のUSBコネクター[-]
・38ピン(GND)
→ モバイルバッテリー受電部のピンソケット[-]
・39ピン(VSYS)
→ モバイルバッテリー受電部のピンソケット[+]
○LEDポート
・赤色LED
→ Pi Picoの12ピン(GP9)
・青色LED
→ Pi Picoの11ピン(GP8)
・+共通ライン
→ リレーユニットの電源接点b
→ 各ボードのVcc
・-共通ライン
→ 降圧DCDCコンバーターの[GND]
→ 各ボードのVccとペアの[GND]
→ ケースのアースポイント
○押しボタン
・両端子間に0.1μF積層セラミックコンデンサーをハンダ付け
・片端子をPi Picoの13ピン(GND)
・もう一方の端子にカーボン抵抗2kΩをハンダ付けしてPi Picoの14ピン(GP10)
○マイク用3.5mmステレオミニジャック
・マイク用ジャック
→ マイクアンプのMic.(L), Mic.(R), GND
○イヤフォン用3.5mmステレオミニジャック
・イヤフォン用ジャック
→ ヘッドフォンアンプのOutput(L), Output(R), GND
○ケースのアースポイント