◆山歩きの魅力
・重いザックを背負って急坂を登る。汗をかき息が上がる。下りでは足元への注意で気が抜けない。
・だけど、それでも山歩きは楽しい。それって、どうして? 楽しみ方は十人十色ですが・・・・・・。
・魅力と楽しみを思いつくままにピックアップして、最後に「私の山歩き」を簡単に振り返ります。
※旧版の「私の山歩き」も残しておきます。右のリンクをクリックしてください。
===> 古い「私の山歩き」
○絶景との出会い
・山頂からの眺望、大パノラマ
・重畳する山並みのグラデーション
・道中で変化する美しい風景
○自然との出会い
・高山植物や山野草、野生動物など
・巨石や不思議な地形
・原生林や巨木
・倒木や苔むして朽ちた木など
○自然体の時間を過ごす
・日常から解放された何も考えない時間
・特定のことについて熟考する時間
○季節を楽しむ
・花見や紅葉狩り
・緑や紅葉に囲まれた森林浴
・冬景色
・青葉若葉の散策も
○計画~行動~評価の過程
・地図を眺め山行ルートと時間など計画を練る
・交通機関やアクセスの確認と手配
・計画に沿った行動と臨機応変の判断
・一連の山行活動を通しての達成感
○体調確認と危機への対応策
・経年変化(老化)や環境変化に伴う体調の確認
・岩場、崖、急坂、強風、雨・雷などへの対応と回避行動
・心地よい疲労感と達成感
○山行の記録作業
・山行のメモやノートの整理、写真・ビデオの編集など
・一期一会の自然との出会いを記録に留めること
○その他
・複数のルートから望める風景
・ピークハント
・下山後の反省会と旨いビール
◆私の山歩き
○私自身のこと
まず冒頭で明らかにしなくてはならないのは、自分の体のことです。男としては小柄で筋肉質でもなく、外見からは登山を好むことなどとても想像できないでしょう。登山を始める数年前から徒歩の会でウォーキングをやっていて、これで足腰をかなり鍛えられましたがそれ以前はほぼ運動量ゼロの生活でした。山を歩けるようになったのは、ひたすら近場の里山へ出かけて山に馴染むことができたこと、そして山歩きの魅力です。
次に打ち明けておかなくてはならないのは、自分はとても臆病だということです。危険な岩場などにはできるだけ近づかず、蜂の羽音や蛇との遭遇には注意を凝らす。道に縄状のものがあると2~3m手前で急停止できます。今までの山歩きで大きな事故を起こさずにすんだのは、ひとえにこの臆病のせいと思われ、そうであれば長所と言えなくもないのかも知れません。
○山行計画の楽しさ
山歩きの楽しみは、計画段階から始まります。山の選定は、山岳雑誌の記事やネットからの情報が主です。ただし移動は公共交通機関頼りなので、それがムリなエリアは対象外です。対象の山が決まると大まかなコースの見通しを立てます。山頂を単純に往復するのか、循環コースが考えられるか、周辺に縦走できる山があるかなど、また付近に立ち寄れる寺社や施設などを調べるのは楽しいものです。
続いて交通機関の調査です。利用できる電車やバスの便や登山口までのアクセスを調べます。エリアによってはこれにいちばん手間がかかります。バスの便が極端に少なかったり、電車との接続が難しかったり、場所によっては交通渋滞で乗り換え接続できなくなることも勘案し、代替案を検討しなくてはなりません。面倒ですが、迷路探しの面白さも! これらが決まってようやく、山歩きの計画を立てる運びとなります。
ルート設定は地図読みが基本です。国土地理院の電子国土Webシステムで検索して、山と周辺の地図を入手します。地図上のルートを確認して往復あるいは縦走のコースを決めます。行程が長い場合は、体調が悪化した場合に備えてエスケープルートを検討します。多くの山は地図上に林道や山道が記載されていますが、ない場合は地形を確認しながら(等高線から傾斜を想定したり、崖に近づかないようにとか)コースを書き込みます。最近はコースの標準タイムを掲載しているサイトが多いので、それを参考に歩行時間を設定して、山頂やピークなどポイントごとの通過時刻を決めます。高齢の自分は、歩行時間の設定を標準タイムの1.3~1.8倍と余裕を持たせています。花や寺社や展望所などの状況から、必要な滞在・休憩時間を加算すれば最終プランがほぼ完成です。もう実際に山歩きをしているようなワクワク感を味わえます。
そして旅費やその他の費用を計算します。これで頭を傾げることもありますが、ここまで詰めたところで経済的事情で却下されるのは辛いので、間違いなく決行となります!
ここで、もう一つだけ決まってないのは日にちです。山行日は天候しだいです。天気予報が外れないのは三日前までと確信しているので、決めるのは直前です。そしてたいていは好天に恵まれます。しかしこれには大きな問題があって、事前に予約して出かけるのをためらうことになり、山小屋泊などはできなくなります。天気を心配しなくてよい代わりに、満天の星空を仰ぐことは諦めなくてはならないわけで、これまでを振り返るとちょっと悔いが残るところです。
○山の歩き方
余裕をもった行程計画に従って、時々地図とコンパスで位置を確認しながら歩きます。山頂や展望所からの眺望は大きな楽しみですが、山野草や地形を観察したり鳥の声を聴くのもいいものです。「閑かな山歩きを愉しむ」というスタンスなので、眺望がないから嫌だということはありません。眺望がなくても、ブナの原生林などを歩いていると、不思議なパワーをもらえるように感じますし、まるで踊っているような木々の姿には頬が緩みます。また、急峻な地形をこなして出会った山野草に、足が止まることもしばしばです。
山には岩が積み重なったガレ場や、細かい石や砂で滑りやすいザレ場、つまずきやすい木の根の急坂、崖や両側が切れ落ちた道、細い小川の渡渉(沢渡り)など、移動に困難や危険を伴う場所があります。事前によく調べて自分の力が及ばないコースは避けるべきですが、注意深く行動することでしだいにコツがわかってきます。グループ山行でアドバイスやアシストを受けることができれば最高、テクニックがつくのは嬉しいものです。
山歩きが楽しくなると、大げさかも知れませんが、少し世界観が変わるように感じます。自分にとっては森林は自然の隠れ家でもあり、尾根歩きは大空を散歩しているようで、心が癒やされます。また頭を空っぽにしたり、散策のリズムで思索できる効用もあります。きわめて個人的なことですが、山歩きの途中に思案中の技術的なテーマについてヒントが閃いたことが何度もありました。
これは単独行動ゆえの悩みですが、最近は熊鈴の着用をどうするかで戸惑うことが増えています。山では鹿やタヌキ、キツネや猿などに会えるのも楽しみですが、そのためには静かに移動する必要があります。ところが「熊出没注意!」の看板が増えていて、ここは覚悟を決めて歩くか、あるいは賑やかに駆け抜けるか、それとも「忍び足」なら大丈夫だろうか、などと迷ってしまいます。その点、仲間たちとの団体行動は安心です。ただ安心だけでなく、会話を楽しみながら苦楽を共有できる素晴らしさがあります。「独り歩き」は自分の大切な山歩きのスタイルなのですが、所属する山の会での山行はとても楽しく、山行の都度、会の皆さんには感謝しています。
○山から下りて
自分はアルコールに弱いので山での行動中は決して飲酒しません。厳しい山行に備えて、万一のためにウィスキーの小瓶を携帯することはありますが、飲みません。山開きでの御神酒の振る舞いも「見てるだけ」です。しかし、下山してからのビールの沁みること、生き返りますね。小料理に地酒が並べば、もう天国です!
帰宅してからは山行記録の作成です。地図に歩いたルートをトレースして通過時刻をまとめる、カメラの画像をパソコンに取り込む、そして地図を見ながら写真を整理して記録を綴ります。これは手間がかかる作業ですが、もういちどその山を登り返しているようで気づきが多く、楽しい時間です。ただし、それぞれの山の備忘録なので、同じコースを歩いてとくに気づきがなかった場合は記録していません。
こうして書いてきた山行記録は300編に近づきましたが、記録を読み直すと「歩いた山がいつでもそこにある」こと、そして同行した仲間たちの顔がそのまま浮かぶことなど、やってきて良かったと独り悦に入っています。
しかし、体力や諸事情でそろそろ引き際かと感じています。そのひと区切りにあたり『想い出の山々』を取りまとめることにしました。この文章に続いて、標高1,000m以上の山行を『中低山以上の山々』としてまとめました。いずれも素晴らしい山なので、写真帖共々ご覧いただければ嬉しいです。さらに、花の山や1,000m未満の山についても同様の計画をしています。
ふり返れば、山歩きの楽しさばかりが想い出されます。自然とのふれあいの素晴らしさもさることながら、ハイカーとの会話に一期一会を感じるのも山ならではと思います。ちょっとしたひと言が響きますね! そんな出会いを求めて、バスやロープウェイなど安直な移動方法を選ぶかも知れませんが、もう少しだけ山に向かいたいと思っています。
では、またどこかでお会いしましょう。