名 称

ひろしまけんみんのもり(けなしやま~えぼしやま~ひばやま)

所在地

広島県庄原市

標 高

毛無山 1,144m、烏帽子山 1,225m、比婆山 1,264m

山行日

2017年9月13日

天 候

晴れ

同行者

「大山、立山の会」の仲間たち

アクセス

車で広島県民の森駐車場へ

マップ

    

このマップは、国土地理院の電子国土Webシステムから提供されたものを使用しています。

コース概要

広島県民の森駐車場 8:50~8:54広島県民の森公園センター 8:55~9:10毛無山登山口 9:14
出雲峠分岐 10:15毛無山山頂 10:44~11:01出雲峠 11:40避難小屋(昼食)11:44~12:27
烏帽子山山頂 13:25~13:42比婆山御陵 14:17~14:21「太鼓岩・産子の岩戸」道標 14:23
<命神社~太鼓岩~産子の岩戸>「太鼓岩・産子の岩戸」道標 14:32公園センター分岐 14:38
県民の森スキー場ハウス 15:46広島県民の森駐車場に帰着 15:58

1.広島県民の森公園センターから毛無山登山口へ

 岡山自動車道を北上して霧深い高梁SAで小休止、北房JCTから中国自動車道に出ていっきに東城まで走り抜ける。東城ICを下りるとすぐ右手の道の駅で昼食弁当などを用立てて、広島県民の森には8時50分に到着した。移動時間は2時間半、新郷町のあたりから青空が広がり絶好の登山日和である。車を降りると、東側の山から落下する滝の心地よい音が響く。

 公園センターに立ち寄って地図などを入手し、準備を整えて9時10分にスタートする。

 「県民の森案内板」を見ながらコース説明を聞き、おもむろに歩き始める。

 にぎやかな道標の最上段が指し示す方向に進むと、すぐに「毛無山」の道標が立ち、ここが登山口だ。

2.まずは毛無山を目指して

 県民の森公園センターの標高は約800mなので、毛無山との高度差は約350m。ゆっくりとしたペースで歩き始める。

 しばらく進んだ分岐で進行方向の判断に戸惑い一時停止、安全サイドに立って出雲峠寄りの左の道を選択する。その先で、仲間の一人がスズメバチに刺される。肩に木の実が落ちたように感じて無意識に手を回したら、それが蜂だったとのこと。不意打ちを食ったわけで、これでは注意しようがない。別の羽音が聞こえたので急いで場所を移動する。大きさと姿からキイロスズメバチのようだ。痛いのを我慢して傷口を指でしごいて毒を出し消毒する。

 自然林が空気を浄化してくれているようで気持ちいい。淡黄色で唇形のこの花は名前が分からない。後で調べるとキバナアキギリと判明した。上唇から紫色の長い雌しべが伸びているのが面白い。

 登山口から1時間で出雲峠分岐が現れ、先の分岐での判断は間違っていなかった。それにしても少し時間がかかりすぎている。左に進むと出雲峠に出るのだが、ここは毛無山へと直進する。萩の花が咲き始めている。

 出雲峠分岐から20分少々、急に視界が開けた。よく登って来たものだ、眼下はるかにスタート地点の公園センターが見えている。

 足元には点々とマツムシソウが咲く。そして、君の名は? 花弁が散りかかってはいるが、シロヨメナ、それともシラヤマギクかな? 他にもサイヨウジャジン(シャジン)だかツリガネニンジンだか判らない可愛いのが咲いていたが、写真がピンぼけだ。

 毛無山山頂に到着して山頂標識を撮影する。登山口からちょうど1時間30分が経過しており、予定より大幅に遅れての到着だ。標識の下部に標高を刻んだプレートが取り付けられている。

 その脇にケルンがあり、まずは三角点にタッチする。

 山座同定盤があり東に眼を向ける。伊良谷山(いらたにやま)と牛挽山(うしびきやま)の稜線が美しい。

 同じ方向を、少しだけカメラの位置をずらせてのぞき込む。左は船通山(せんつうざん)、その右奥にある伯耆大山には雲がかかっている。右端には岩樋山と道後山、三国山が見えているはずだが、しかとは同定できない。

 これから向かう烏帽子山から比婆御陵方面を眺める。左には池ノ段と立烏帽子山(たてえぼしやま)、右には吾妻山(あずまやま)も見える。

3.出雲峠~避難小屋~烏帽子山山頂

 毛無山ではゆっくりと周囲の山々に見とれて過ごし、これから出雲峠へと下る。傾斜が急なので、転倒しないように気をつけて進む。

 かなり下りたところで「出雲峠 0.7km」の道標。その先で「ききょうが丘」への分岐に出合う。

 左は自然林、右は植林という対照的な道を行く。

 しだいにブナの木が増えて風景が明るくなり、やがてベンチが並ぶ出雲峠に到着した。

 左に進むと100mばかり先に避難小屋があり、トイレも設置されている。

 しっかりした避難小屋で中央には囲炉裏があるが少々薄暗い。ここで湯を沸かして昼食にしようということになるが、自分は外の湿った草の上にレジャーシートを広げる。付近には湧水を引いた掛け流しの水道があり、冷たい水で顔と手を洗って弁当を広げる。
 と、突然、山小屋から「ギャ~、ウワー」の声。天井からヘビが降ってきたと大騒ぎだ。天井の梁でくつろいでいたヘビが、弁当の香りに惹かれてか、はたまたガスバーナーの火に驚いたのか、大ジャンプを敢行したらしい。

 ゆっくりランチタイムを過ごして出発する。時刻は12時27分、烏帽子山へ1.6kmの道標が立つ。足元にひっそりと、花が開き始めたアキノキリンソウ。

 木の根っこが張り出した植林の道を登って行くと、再び自然林になる。

 浅い沢を渡って少し進むと「烏帽子山 1.0km」の道標。もう一踏ん張りだ。

 あちこちに小さなキノコの姿。おいしそうだが、これは見るだけ。

 急に傾斜が緩くなり、木々の背丈が低くなったら山頂だ。出雲峠からほぼ1時間で到着した。

 ここにも山座同定盤が設置されている。しかし、木々が茂って見通しが悪くよく分からない。

 これは烏帽子の形をした「烏帽子岩」、裏に回り込むとお地蔵様が祀られていた。

4.比婆山御陵を巡る

 行程に遅れが出ているので烏帽子山の先の分岐から下山しようかと提案があったが、この遅延は、公園センターから出雲峠へ直行する当初予定が、毛無山まで足を延ばしたことによるもの。みんな元気いっぱいなので問題なしと比婆山へ向かう。「御陵 1.0km・池の段 3.0km」の道標、やはり池ノ段は遠いなあと実感する。

 緩やかに下ると鞍部に道標が立っている。御陵まで0.7kmだ。

 明るいブナの林を行くと、左に「ブナ林を経て管理センター 2.8km」の分岐道標が立っている。今年の春(4月23日)に歩いた時は、この先から雪原が広がっていたのを思い出す。

 少し急な坂を登ると右手に大きな岩がある。これが現れると山頂が近い。

 ひと登りすると支柱に「御陵」と書かれた道標があり、ここが山頂だろうか。

 その先に「比婆山(御陵)十合目 1,256m」の標識が立っている。地図上の比婆山の標高は1,264mなので、御陵はわずかに低いことになる。やや奥まった所にイチイの古木に囲まれた巨石があり、これが「伊邪那美(いざなみ)神は出雲国と伯伎(ほうき)国との境の比婆の山に葬りき」と古事記にある御陵である(庄原市教育委員会の解説板から)。

 祠があり、その先に「太鼓岩へ 100m、産子の岩戸へ 150m」の道標が右の谷を指している。前回は踏み込めなかったルートで、有志数名といっしょに出かける。

 右に手水鉢があり、小さなまだ新しい祠が見えてきた。祠を取り囲む石が敷石のように配置されているので、元はもっと大きな社だったのかも知れない。これは命神社(みことじんじゃ)で、「古事記に伊邪那美命を比婆山に祭るとあるのは、この社であると伝えられる(庄原市役所比和支所)」と解説板に記されている。

 隣り合って別の祠があるのだが、これは何か分からない。そして「太鼓岩」に到着する。後で知ったのだが、この岩を叩くと音がするそうで、残念!

 さらに50m先の「産子(うぶこ)の岩戸」へ向かう。今にも赤子を産み落とそうとする姿に似ているのが名前の由来とか。あまりに神々し過ぎて近寄れません・・・。

 戻り道で巨石を押さえ込む古木を発見、何とも不思議な一帯だ。元の道標まで戻って、再び全員で移動を始める。御陵の南側正面に、「門栂(もんとが)」と呼ばれる栂の大木が聖域の門を形造っている。栂はイチイの別名である。

 ここから越原越(おっぱらこえ)を経て標高1,279mの池ノ段まで尾根歩きが続くが、今回はここまで。すぐ先の「公園センター」の道標に従って左折する。

5.ブナ林を県民の森公園へ下山

 素晴らしいブナの林を下りて行く。この林は「比婆山のブナ純林」として国の天然記念物に指定されている。ガマズミが赤い実をつけている。

 足元に気をつけながらの長い下りが続く。比婆山御陵から1.5kmを下りたあたりに公園センターへの分岐がある。ここは距離が短い方へと直進する。

 背丈を超えるススキの原を抜けるとスキー場だ。リフト乗降場がありゲレンデが広がっている。

 傾斜のついた長いゲレンデを下りるのは単調でけっこうキツイ。リョウブの花が咲いている。

 あちこちにツリフネソウの花が咲き、県民の森スキー場ハウスのそばに下りてきた。

 園地の広場を通りかかると若者たちがボールを囲んで集っている。和気藹々の何とも好ましい風景を眺めながら、せせらぎの音に沿って駐車場を目指す。

 駐車場脇の方角指示板を頂く標識に、今日歩いた三座の方位が記されている。いや~、皆さん本当によく歩きました。足を痛めてしばらく休んでいた仲間が元気に完歩できたのも嬉しい限り。時刻は4時過ぎだが、山には低い雲がたちこめて、公園センターのあたりは幾分明るさが失せたようだ。