昨夜、東京ドームの巨人戦でリーグ優勝を決めた広島東洋カープ。広島駅に到着すると駅構内のグッズコーナーは大盛況で、優勝記念福袋の販売コーナーまでできている。記念すべきタイミングでの広島入りである。
特急バス乗り場は駅北にある。広島駅は橋上駅舎の建設という大工事の最中で、新幹線口(北口)周辺は工事用の橋脚などがむき出しの状態だ。駅北バスターミナルには3人のハイカーたちがいて、9時43分発の益田行き特急バスに乗り込む。
1.いこいの村入口バス停から南登山口へ
猛烈な交通渋滞で、普通なら17分で着く広島バスセンターまで40分もかかった。広島バスセンターでは先のハイカーの仲間5~6人が乗り込んで出発。所要時間は予定より20分遅れで約2時間、いこいの村入口バス停には11時46分に到着する。
バス停付近に車2台が待っていて、ハイカーのグループはそれに乗り込んでいこいの村方面へ。心配していた天気はまたまた予報が外れて青空がのぞいている。ゆっくりと上り坂へ向かうと、「西中国山地国定公園 深入山」の堂々とした標石が立つ。
坂を登り詰めると三差路で、小高い場所に「いこいの村レストハウス」があったが閉まっていた。道標には「←グリーンシャワー・いこいの村ひろしま→」とあり、左折してグリーンシャワーに向かう。
舗装道路を行くと左手にテニスコートが見えてきて、隣接してきれいなトイレがある。
さっそく道辺に美しい花を見つけた。キキョウとアザミである。
向こうに南登山口と思しき景色が見えてきた。右手には緑に覆われた深入山の姿。何とも穏やかにして優美な山容である。
左側のオートキャンプ場を過ぎると深入山グリーンシャワーで、緑の屋根の管理棟の方へ進む。
広い駐車場があり車が20台ばかり止まっている。一帯は安芸太田町の森林セラピー基地に指定されている。周辺に草原散歩が楽しめる深入山セラピーロードが設定されているようだ。
南登山口に着いて、まるで丘のような深入山と対面する。「西中国山地はツキノワグマの生息地です」の立て札があり、このことが豊かな自然の証明であること、クマは刺激しない限り一方的に攻撃してくることはまずないこと、万一見かけたら速やかにその場を立ち去ること、などが表記されている。
2.林間コースを山頂に向けて
南登山口からは、急坂を登る「草尾根コース」と山裾を巻く「林間コース」の2つがある。今回は林間コースを登るので登山口から左に進む。山道の左側にはグランドゴルフ場が広がり、足元にヤナギタンポポが咲いている。
傾斜が緩くて歩きやすい道の脇には、ツリガネニンジンやシラヤマギクがたくさん花をつけている。
木陰に設置された木製のベンチ。陽光を受けてガマズミの紅い実が輝いている。
林間コース分岐の道標が立ち頂上側へと右折する。緩やかな道が続き、足元にヤマホトトギスの花を見つけた。
谷側にコナラの林を見ながら進む。林を抜けて左に巻くと絵のような風景が現れた。
西尾根休憩小屋が見えてきた。ススキの草原が広がり、たおやかな稜線が延びる。
まだかなり暑いのだが、オミナエシとワレモコウが花をつけて草むらはすっかり秋色だ。
西登山口出合に着くと下山中の男性が休んでいて、大汗をぬぐいながら予報外れの好天を喜び合う。山頂はとても涼しいとのことで元気が出る。ひっそりとヤマエンゴサクの花。登山口からまだ30分ばかりだが、何人ものハイカーたちと出会い、深入山がいかに人気があるかを知ることになった。
縦方向に複数の亀裂が生じた大きな岩に出会う。この辺りから石塊の多い道になる。
「頂上 0.8K」の道標が見えるとすぐ絶景岩(展望岩とも)に着いた。遥かに見える山並み、足下は吸い込まれそうに切り落ちている。
石塊が消えた道を行くと、ヤマボウシの実が色づき始めている。
9合目休憩小屋が見えてきた。身を乗り出している若いカップルに挨拶を送って、左への緩いカーブを辿ると山頂が近づいてきた。
この辺りにもたくさん花が咲いている。
(マツムシソウ、ウメバチソウ)
(ホクチアザミの蕾と花)
一気に視界が開けて山頂はすぐそこ。オヤマボクチが悠々と下界を見下ろしている。
天上に誘うような道を登り進むと、山頂に立つ人の姿が見えてきた。
3.深入山の山頂風景
ゆっくり写真を撮りながら、南登山口から1時間15分で山頂に立つ。広場の中央にハイカーが運んできたと思われる石が積まれて、三角点を取り囲んでいる。
山頂標識の向こうには大勢の人が座り込んで食事中。ほぼ同時に、バスで見かけたハイカーが到着して言葉を交わす。
山頂には北と西を中心とした2枚のパノラマ山名案内板が設置されている。それにもかかわらず、大半の山々を同定することができなかった。また、広島・島根両県の最高峰である恐羅漢山(おそらかんざん:1,346m)がある南西方向を撮らなかったのは失敗だった。
〔北側〕
〔東側〕
〔西側〕
のんびりと昼食をとって下山の準備をする。下りは東登山口コースを行くので、途中の分岐「深入山の肩」まで草尾根コースを歩く。バスで一緒だったハイカーのグループも下山準備が整ったようだ。
山頂に咲くハギとアキノキリンソウをカメラに収めて、14時ちょうどに下山開始だ。
4.東登山口コースを下りる
下りかけると、急坂を3人の幼児を連れたパパが登ってくる。少しずつ這うようにしながらも確実に高度を上げて行く。幼児や小学生などの登山風景を見るたびに、その粘り強さと楽しそうな表情には感動してしまう。行き過ぎるまでしばらく待って、滑らないように注意深く下降を開始。ここで転んでは恥ずかしいので注意を集中!
向こうのピークの手前で道が分かれているところが「深入山の肩」で、そこまでの中間点に白く写っているのは幼児たちのママ。「おくつろぎですね!」と声掛けすると、「ここから上はパパに任せました」とのこと、なるほど。
深入山の肩に着いて山頂を振り返ると、グループの一行が列をなして下りてくる。白いのはカワラボウフウかな?
ピンクの花が可愛いのはモリアザミとカワラナデシコ。
ピークに駆け上るとオヤマボクチが眼下を見下ろしている。時間が停止したような瞬間を撮って駆け下りる。
グループの隊列が草尾根コースを下りて行く。ピークを右に巻いて下りに掛かるとベニバナゲンノショウコ。
サワヒヨドリの咲く草むらを抜けると行く手に大きなブナが二本立っている。
その間を下り進むと左には豊かなブナ林が続いている。右手の草尾根は一面緑に覆われて、草原を下って行くようだ。
今回も下山途中に思わぬプレゼントだ。先日の鉢伏山で出会った絶滅危惧種の蝶、ウスイロヒョウモンモドキが撮影をどうぞと留まっている。嬉しいねぇ。
東登山口コースの半分を歩き、いこいの村の建物が明瞭に見えるようになってきた。ところがその先で、ガイドマップに載っていた一本松が枯れているのを見つける。何が原因なのだろうか、しっかり立ってはいるが完全に枯死しているようだ。
ここから木段の急坂が続いている。おやっ、その先に元気な松の木が立っているぞ。一本松の後を継いで全部元気に育っておくれ。近くに、ハナウドが飛びっ切り綺麗に咲いている。
長い階段も終わりに近づいて駐車場が見えてきた。そして無事東登山口に下り立つ。爽やかな草原あり花もありで、名残惜しい山歩きではある。
バス待ちの30分ばかり、「いこいの村ひろしま」のロビーに腰を落ち着けて缶ビールで体を潤す。心地よさに気が遠くなるようなひととき、午後一便だけのバスに遅れぬように、気合いを入れてバス停までひと歩き。