1.八鹿駅前からハチ高原・高丸山登山口へ
八鹿駅は、先月「神鍋山(神鍋高原)と神鍋溶岩流」を訪れた時に下車した江原駅の一つ手前の駅だ。駅前に出ると養父市の観光スローガンを描いた「やぶラッピングバス」がやって来た。「虎臥山(竹田城)」で出会った「天空バス」もしかり、全但バスは面白いことをやっているようだ。
待ち時間がたっぷりあるので、駅前バスセンターの涼しい待合室で昼食の弁当を開く。11時45分、鉢伏行きバスは定刻に発車。帰りはこのバスで鉢伏から戻ることになる。
あちこちに「氷ノ山・ハチ高原」の掲示や標識が見える。途中のバス停で小学生の集団が乗ってきた。通学に利用しているらしく、複数の教員も同乗。30人ばかりが全員クマ鈴を付けていて、その賑やかさは半端でない。カラカラ・ジャラジャラ・わいわいと乗り換え先の出合ターミナルに向かうのだが、接続時刻に間に合わないほど遅れていて気が気でない。
だが、心配は無用だった。出合ターミナルで子供たちは2つのコースに別れて、マイクロバスに乗り換える。つまり小学生たちは、「関宮ふれあいバス」の主な乗客だったのである。「ハチ高原」行きに賑やかに乗り換える。
30分足らずではあるが、バスはどんどん高度を上げて行く。やがてホテルやロッジなどが見え始めるとハチ高原中バス停で、子供たち何人かが下車する。その次が終点のハチ高原バス停で、広い駐車場脇に停車した。周囲にはホテルやペンションが並び、降車した子供たちが連れ立って帰っている。向こうには奈良観光バスから大勢の大学生が着いたようだ。
12時55分、北西に向かう舗装道路を歩き始める。希少生物保護の掲示板が立つ。このウスイロヒョウモンモドキには鉢伏山山頂近くで出会うことになる。
北には小代越~高丸山~鉢伏山が連なり、ハチ高原スキー場の広大なゲレンデ。何本ものリフトが設置されている。右に「中央クワッド」のリフト乗り場を見ながら進むと、高丸山が近づいてきた。
アサヒロッジ前にある鉢高原公衆トイレで準備を整える。少し歩くと、右側にオリエンテーリングのポイント標識「P」が現れる。その手前を右に踏み込んで行く。ちなみに、その先の標識「一般車両進入禁止」から入っても同じ道に合流する。
2.小代越~高丸山山頂
緩やかな舗装道路を進むと砂利道に変わり、右手に高丸山が迫ってくる。
道辺に咲く小さな花々。ピンクはベニバナゲンノショウコ、黄色いのはかなり花も葉も傷んでいるので判りにくいが、ヤナギタンポポかな? それにシロバナツリガネニンジン、一輪だけとは珍しいのだが・・・。
南には氷ノ山がそびえている。ズームで迫ると山頂の避難小屋が見える。2013年の山開きの神事を行った場所だ。
「氷ノ山山頂まで6.0km」の道標が立っている。小代越が氷ノ山と鉢伏山の分岐なのでこんな標記になっている。
予定よりかなり早く小代越に到着した。ここが氷ノ山・鉢伏山の分岐である。氷ノ山への山道をカメラに収める。これを登って南に取ると赤倉山に至り、左に巻いて氷ノ山へと続く。
高丸山に向かって稜線歩きが始まる。階段を登って行き途中で小代越を見返す。小代越の標識が点になって氷ノ山への道が延び、ハチ高原への道が左に下りている。
木道に差し掛かると高丸山山頂だ。木道は山頂部だけに設置されている。一段高いブッシュの中に三角点があるようなのだが、見つからないので早々と諦める。
せめて山頂標識をと探すが見当たらない。南には氷ノ山と赤倉山、東にはこれから歩くピークと鉢伏山への緩やかな稜線が延びている。
3.1,114mピークを越えて鉢伏山へ
高丸山の東直下にあるリフト降り場を過ぎて、次のリフト降り場へ向かう。
リフトのラインに沿った緩やかなスロープ。そしてさらに小高い位置のリフト降り場へと向かう。
そのリフト降り場に着くと、眼下にハチ高原スキー場を一望することができる。白銀の季節になると、スキーヤーには胸ときめく世界になるに違いない。もう50年も昔、週末に職場の仲間たちと出かけていたスキーバスの光景が、夢のように思い出される。
もうひと登りで1,114mピークである。いささか陽差しがキツイが、爽やかな空気に心地よさが勝る。
氷ノ山方面を見ながら1,114mピークを通過する。いよいよ鉢伏山への登りになるが、この辺りから道の両側は笹やコナラなどの雑木が視界を遮る。
道に降りて、2mくらいまで近づくと飛び立って、またその先に降りるのはウスイロヒョウモンモドキだ。数匹いるようである。ようやく草に留まったのでお姿を頂戴する。
山頂へ向けての最後の尾根道歩きだ。アキノキリンソウが可愛い花をつけている。
少しボケボケのキセルアザミはうつむき加減、シシウドが花火のように咲いている。
ここのツリフネソウは遠慮がちに咲き、オレンジの花はフシグロセンノウか。
急な木段を踏んで行くと山頂広場が見えてきた。
4.鉢伏山山頂風景
山頂小屋が建っている。予定より20分も早く到着できた。山頂はかなり広くて中央部に山頂標石と木柱の山名標識が立っている。その上に電光表示の温度計があるのだが作動していなかった。
窪みに設置されている三等三角点に、タッチ! 後方に見えるのは、北に隣接するハチ北高原のリフト乗り場である。
〔東側の風景〕 但馬妙見山(1,139m)と宝引山(ほうびきやま:804m)。
〔北側の風景〕 瀞川山(とろかわやま:1,039m)と蘇武岳(そぶだけ:1,074m)、扇ノ山はわからない。
〔南側の風景〕 藤無山(ふじなしやま:1,139m)。
南から少し西に振った位置に氷ノ山。山頂の避難小屋をズームで撮って切り出してみた。
下山の前に山頂小屋の方を見る。向こうにはハチ高原へのリフト乗り場がある。この小屋はいったい何のためのものだろうか。スピーカーが取り付けられ、屋根にはアンテナらしきものがある。確かめはしなかったが、入室できないのではないかな。どうも避難小屋ではなさそうである。下山は東側の山道から始まる。
5.林道に出てハチ高原バス停へ下りる
下りかけるとすぐ、正面にあるピークが気に掛かる。天辺に岩がケルンのように積み上げられている。時間の制約もあり、ここは立ち寄れなかった。ピークを右に巻いて行く。
登りで辿ってきた稜線が一望できるビューポイントに出た。ピーク直下の磐座には祠が祀られている。
長い木段を下りていたら、ふわりと蝶が舞い降りた。美しい姿は今回の山行へのプレゼントに違いない。そっとカメラに収め、帰宅して調べるとルリタテハだった。急な階段が続いている。
遠くの山並みを眺めながら快調に足を運ぶ。と、木々の間から鳥の美しい声が聞こえてきた。辺りを見渡すが姿は見えない。せめて声を記録しておこうとカメラのビデオボタンを押す。
25秒間の収録結果がこれ!(ブラウザがHTML5 videoに対応していない場合は再生できません、悪しからず!)
【野鳥の鳴き声】 |
神戸村野工業高校の遭難慰霊碑と出会う。すぐそこに林道が待っていたのに、悔しいねえ。悲しさ無念さが碑文から滲み出ているようだ。
慰霊碑から1分で林道出合に下り立つ。
山頂から20分が経過している。順調な運びだが、ここから延々と舗装道路歩きだ。ガマズミやアジサイの花などを見ながらの下山だが、トレッキングシューズがひときわ重く感じられる。
この道標で一瞬足が止まる。ゲレンデを行けば大幅にショートカットできそうで地図を見直す。しかし、時間的な問題もないので、計画通り舗装道歩きを続行することに。
ウォーキングモードでハチ高原中バス停付近を通過し、ハチ高原バス停に帰着する。時刻は15時51分、鉢伏バス停での乗車は16時39分なので余裕は十分。
6.ゲレンデを鉢伏バス停へ下りて帰路に
ところが、大久保方面への道が判らない。すぐに見つかった舗装道路は車両通行用と思われ、安易に踏みこむわけにはいかない。近くの「ロッヂ みやま荘」にお邪魔して案内を請うと、親切にお教えいただき大変ありがたかった。ロッヂそばの細道が探していた道だったのだが、道が細くてゲレンデ歩きが必要になるから車が通る道路の方が安全と勧められた。しかし、どうしてもバスに間に合いそうにないので計画通りのルートを選ぶ。
いきなりこのルートに入っていたら、道なき道を行くようで不安になったかも知れないが、ゲレンデ歩きの話を聞いていたので気持の準備に問題なし。さらに、これから下山が続くことが分かったのも有意義だった。「ロッヂ みやま荘」さんには本当にお世話になりました。
こんな状況では、25千分の1地図に描かれたリフトの記号が大変役に立つ。送電線をチェックするのと同じ要領でリフトとの位置関係を確認しながら進む。
オリエンテーリングのポイント標識が見え、家屋が現れ、舗装道路が見えてきた。
ところがここを右に曲がってしまい、大回りすることになった。どんどん進んで行くと道が細くなり、その道でヘビに会って思わぬ時間を消費する。そのあげく道が無くなってUターン。害獣捕獲の仕掛けを横目に急ぎ足。迷いやすい枝道が多いので地図に注意書きしていたのだが、思わぬところで失敗した。
バスの時刻が迫ってきて駆け足状態、その先に「大久保方面」の道標が目にとまる。が、道の分岐が待っている。
畑仕事の女性に尋ねて分岐を切り分け、鉢伏バス停に到着するとバスがやって来た。発車5分前、今回も辛うじて予定の便に間に合った。
かくして充実した山歩きは終わった。素晴らしい山だったが、この暑さと出だしが遅かったからか、まったくハイカーと会わなかったのは意外であった。八鹿駅に帰着したが駅構内の売店は開いていない。列車待ちの二十数分、匂いをかぎ分けて酒屋を探し出して缶ビールとおつまみをゲット。ビニール袋を抱えて列車の到着を待つ。