JR三島駅から特急バス「三島・河口湖ライナー」で河口湖へ向かう。所要時間は1時間35分、道中の車窓風景を楽しみながらの移動。道中ではこんなに美しい富士山を観ることができた。
1.河口湖駅からロープウェイ河口湖駅へ
河口湖駅には観光客が溢れていて外国人の多いことに驚かされる。駅前を北に向かい、国道137号に出合って進むと河口湖通りになる。
少し行くと河口湖が見えてくる。その一角に、楓が朱く染まり観光バスがたくさん駐車している。
河口湖駅から20分でロープウェイ乗り場に到着した。が、長蛇の列ができている。手前の青いコーンは「ここからの待ち時間、約60分」の標識。一瞬、歩いて登ろうかと思ったのだが、相棒が「え~、どうして~」、と言うことで待ち行列の最後尾へ。
天上山は、太宰治の短編集『お伽草子』に収められた「カチカチ山」の舞台になっている。これにちなんで名付けられた「カチカチ山ロープウェイ」には、あちこちにウサギやタヌキの人形がある。マスコットのような可愛いのを見ているとほのぼのとした気分になるが、ご存じの通り「カチカチ山」はかなり怖ろしいお話。天上山へ登るにあたって、インターネットの電子図書館「青空文庫」で読み直したが、やっぱり面白くも怖ろしい話である。そんなことを思い出しながら待っている背後には、秋色をたたえた河口湖畔の風景。
==> 青空文庫:太宰治(著)『お伽草子』はこちら!
2.ロープウェイ富士見台駅
結局40分足らず待って乗ることができた。湖畔駅から富士見台駅までの標高差219mをわずか3分で移動する。
途中で見えた河口湖と湖畔の風景。降りて車両を振り返ると、何と、屋根にウサギのかごやが乗っている。
富士見台駅の上には天上山公園が広がる。展望台周辺は町のような賑わいだ。時刻は14時53分、少し霞んではいるが美しい富士山を観ることができた。
たぬき茶屋では炭火で焼いた熱々の「たぬき団子」をいただく。小さな丸餅を3つ串刺しして、みたらし団子のタレのようなのをたっぷりかけていて、ボリューム満点だ。ここには、タヌキの背中の薪に火をつけているウサギの人形。
富士山を仰ぎ見ながら打つと御利益があるとされる「天上の鐘」。うさぎ神社もある。
美しい裾野が広がる富士山の大パノラマを望むことができる。この風景、相棒も大満足のようである。
3.天上山山頂を往復
広場の東端に「三ツ峠方面」へのゲートが設置されている。くぐると「三ツ峠3時間40分、天上山山頂・小御岳神社」の道標がある。広場の賑わいと打って変わって、ここから先へ行く人は少ない。
ゆるやかな階段の道を上がって行く。
ベンチが設置された広場があり、紅葉狩りを楽しむ人たちの長閑な姿。
そこから少し登って行くと三ツ峠への分岐がある。ここを天上山山頂へと進むと山頂広場に出る。
北側に小御嶽神社の石祠があり参拝する。南には樹間に富士山の麗姿を望むことができる。
下山は10万本のアジサイがあるという「あじさいハイキングコース」を行く。まずはロープウェイ富士見台駅への階段を下りる。
4.あじさいハイキングコースを下山
ロープウェイ富士見台駅を右に見て下山路を直進する。紅葉に囲まれた階段を下りて行くと「あじさいハイキングコース」の道標がある。
15分ばかり下りるとナカバ平に到着する。ここから見る富士山も素晴らしい。
太宰治の記念碑があり「惚れたが 悪いか」と刻まれている。この碑文の意味は、『お伽草子』の「カチカチ山」を読んでないと分からないだろうなあ。
さらに下りると「危険・注意」の貼り紙がある。イノシシが出没したこと、クマ出没の恐れがあると書かれている。
傾斜が緩くなって展望台に到着した。1階にトイレがあり2階が展望台になっている。
展望台に上がると、夕靄に包まれた湖畔の風景が絵のようだ。
忠魂碑が建つ天上山護国神社(てんじょうやまごこくじんじゃ)の境内を通り抜ける。
一角に「秋晴や 富士明(あきらか)に 水鏡」と絶景を詠んだ巌谷小波(いわやさざなみ)の句碑が建つ。巌谷小波は童謡『ふじの山』の作詞者でもある。
あたまを雲の 上に出し
四方の山を 見おろして
かみなりさまを 下に聞く
富士は日本一の山
青空高く そびえ立ち
からだに雪の 着物着て
霞のすそを 遠く曳く
富士は日本一の山
護国神社の石鳥居をくぐって、道標の河口湖駅方面へと進む。
山裾のしゃれたブロック舗装の道を行く。やがて民家が見えるあたり、夕日に富士山がピンクに染まっている。
16時35分、国道137号に出合ってここが今回のゴール。夕暮れの河口湖畔を宿泊先へと歩く。