1.生瀬駅(なまぜえき)~旧福知山線廃線跡開始点
何ともモダンな造りの駅舎だ。大勢のハイカーたちで賑わう駅前を西に進む。すでに先行の人たちが列をなしている。
JR宝塚線をトンネルで抜けると西宝橋南詰めの交差点で、これを左にとって進む。
中国自動車道の高架下をくぐって、緩い勾配を上って行くと横断歩道があるので渡る。
下り坂をジグザグに進むと廃線路に出る。少し先にJR西日本の告知板が立っていて、ここが今回のスタート地点である。
2.北山トンネル~武庫川第二橋梁~長尾第一トンネル~親水広場
スタート地点では名塩川(なしおがわ)と武庫川が合流している。まずは名塩川に架かる鉄橋を渡って行く。右側には武庫川の流れが美しい。
まだ新しい注意標識が立ち、次の橋に差し掛かる。たもとに古びた「橋りょう上 歩行禁止」の表示がある。が・・・、注意しながら二つ目の鉄橋を渡り進む。
これだけ風景のよい廃線路は、歩くのを我慢するのが難しいのではないか、などと思いながら鉄橋を渡り終えると、枕木が残る路。側道はコンクリート舗装になっている。見て味わい深く歩きやすくもある、これはたまらんなぁ~。
北山第一トンネルに入る。少し進むと真っ暗闇で明かりがないと歩けない。常時装備しているヘッドライトを着用する。
北山第一トンネルの出口風景。しっかりとしたフェンスが設置されている。
山腹に沸き立つように咲く桜。前方をほのぼの父娘が歩いている。
川が緩やかに右へカーブして北山第二トンネルが見えてきた。このあたりは桜の木が多いのだが、残念ながらまだ花をつけていない。
長い北山第二トンネルを抜ける。壁の下半分は堅牢な石積みになっており、上部はタイル状のものがビッシリ貼られている。見事な工事に感心する。さて、次は第三の鉄橋だ。
これもトンネルかな? こんな鉄道施設も残っている。
このあたりでは川の表情が急に険しくなる。大きな岩が流れを遮り部分的に溝滝が形成されている。
路はいよいよ穏やかで、見通しの良い直線レールを想起させる。周囲の地形が複雑な場所には落石注意の標識が立っている。
溝滝の先には百畳岩、天狗岩、仙人岩などの名前がついた岩があるらしいのだが、どれがどれやら判らない。
横溝尾トンネルに入る。このトンネルも素晴らしい。まるで幾何学模様を描いたような内部。枕木の周囲には砕石がていねいに埋め込まれている。
横溝尾トンネルを抜けると武庫川第二橋梁だ。枕木が残る橋の上を渡るのは危険なので、フェンスで遮断されている。
左側につけられた歩道を渡る。真下を覗くと急流が見える。整然と並ぶ枕木が美しい。
渡り終えた橋を振り返り立ち止まる人たちが多い。すぐに長尾第一トンネルに突入する。鉄道での移動なら瞬く間の橋梁風景だったろうが、歩くとまことに味わい深い場所である。
鉄道作業員の退避場所と思われる施設だが、今は閉鎖されている。桜の園入口が近くなり周囲には桜と思しき木が並ぶが花はない。
桜の園入口に到着した。生瀬駅から1時間半での到着である。桜の園へ向かう前に、まず親水広場へ行って昼食をとることにする。
川辺の岩に腰を下ろして愛妻弁当を開く。穏やかな流れを眺めながらあちこちで歓談の声。広場にも大勢の人たちが憩う。桜の木に「ササベザクラ」のプレートが掛けられている。ササベザクラは、桜博士と言われた故笹部新太郎氏の庭に芽生えた新品種に命名されたもので、カスミザクラとオオシマザクラの交配種とのこと。開花は4月中旬ということでお預けだ。
3.桜の園入口~さくらの道~大峰道~大峰山山頂
「桜づつみ回廊誕生記念」の碑が建ち、12時18分、桜の園入口の階段を上がる。
「さくらの道」と「遠見の道」の分岐を「さくらの道」へと進む。階段を下りると桜の園「亦楽山荘(えきらくさんそう)」の案内図がある。一帯の里山は「亦楽山荘」と呼ばれ、先にもあげた桜博士なる故笹部新太郎氏が、昭和40年代まで研究のための演習林として使用されていた場所だそうである。 ここが「山荘めぐり」「城ガ丘周回」「南尾根周回」「大峰山道」の4つのルートの起点になっている。大峰山道に向かうべく、板橋を渡って「さくらの道」へ踏み込む。
緩やかな道はほんのわずかで、遠くの山がチラリと見えるあたりから急登の階段が始まる。紫色のスミレが道の辺を飾る。
階段の右側に黄色のヘルメットが見える。故笹部新太郎氏は水上勉『櫻守』のモデルだが、その「櫻守」のヘルメットをかぶったリスの「しんちゃん」と出会った。
次の道標を「育樹の丘」へと向かう。未だ花のないヤマザクラの大木をやり過ごしなが登っていたら、急に開けた一角に淡雪のような桜花が漂い、息を呑む。
育樹の丘の東屋が見えてきた。ひと休みしたかったが東屋は満員で、すぐに林間広場を目指す。
東屋周辺でくつろぐ人たちを後に、再び急な階段に一歩を踏み出して行く。
目が覚めるようなコバノミツバツツジが待っていた。あたりを鮮やかなピンクに染めて春の到来を歌っている。
数少ないビュースポット。武庫川と、名前はわからないがその向こうの山を一望できる。思わず、ズームイン!
そして林間広場に着いた。小休止したかったがここも大賑わいで、大峰山へと左の坂を登り始める。
青空と白い雲、それに映えるミツバツツジのピンクを見ながら進むと、もうひとつのビューポイントがあった。ここからは、武庫川が細い帯のように見える。
山道に不思議な形のオブジェ、と思ったら「桜の園3級基準点」だった。
案内マップが設置されていて、ここが大峰山への分岐であることがわかった。少し進むと大峰山への手書き道標があった。
左の一角から白が溢れている。目をやるとタムシバの花だ。好い香りを放っているに違いないが、いささか距離があり望遠で寄って嗅ぐ。かなりしんどい登りをこなして、やっと山頂かと思ったら510mピークだった。気を取り直して進むと谷に導かれ、また登りが待っていた。
大峰山山頂に到着だ。山頂標識を確認したところで、先ほど着いたらしい女性2人から「到着早々で申し訳ないけど、写真撮ってくださる」とのリクエスト。ていねいに、力いっぱい美しく撮ってさし上げる。
10分少々休憩して下山に向かう。写真の右に小さく移っている人物は、登りの道中で出会った若者。それぞれのペースで登りながら何度か顔を合わせ、山の話などを交わしてやってきたので仲間のように感じてしまう。彼は、これからさらに周回コースを歩くそうなので、ここでエールを交換して別れる。
4.往路を下山~長尾トンネル~武田尾駅
下山の足は速い。すぐに510mピークを越え3級基準点を過ぎて、発芽の息吹きを感じながら山の遠景を一望する。
登りでは気づかなかった黄色いプラスティックの道標を見ながら下りると、はや林間広場に帰着した。もう誰もいない。何種類もの鳥の鳴き声が聞こえるのだが、まったく知識がないのが残念。
そして間もなく育樹の丘の東屋に帰着した。その先にはウグイスカグラ(鶯神楽)が可愛いラッパの花をつけていた。
案内図「亦楽山荘」があった場所まで戻り、桜の園入口付近から長尾第二トンネルに向かう。
かなり暗いが、このトンネルは照明なしでも何とか歩くことができた。
第二トンネルから約200m、このコース最後の長尾第三トンネルを通過する。
穏やかな流れと平坦な枕木の道が廃線跡の最後の風景だ。
やがて廃線跡を離れて車道に出ると、工事中で回り道を進むことになる。
左手には武田温泉のアーケードを飾る桜。しばらく直進して、桜咲くJR武田尾駅のスロープを上って行く。
JR武田尾駅は、武庫川に架けられた橋梁とトンネルの開口部に築かれている。そしてここが今回のゴール地点。無事の帰着に感謝しながら電車に乗り込む。