1.岩屋谷公園駐車場から北尾根を登る
9時10分頃に岩屋谷公園駐車場へ到着して各自で準備運動を始める。北端のピークに建つ送電鉄塔が見えている。
するとリーダーは山と反対方向に歩き始める。フェンスに掛かった「北尾根登山口」の手書き道標を見て、これは面白いことになりそうだと思う。途中に3つのピークがあり急な起伏と岩場がある経験者向きのコースである。
北へ50mほど進むと左手に「北尾根登山口・烏帽子古墳」の小さな道標がある。気をつけていないと見落としそうなので要注意! まずは階段を登って行く。
最初から傾斜のきつい坂をぐいぐい登るが、笑顔も見える。むむ、余裕がありますねぇ!
このあたりからロープが現れるが、登りでは使わなくてもだいじょうぶ。20分ばかりでこんなに高くまでやって来た。西下には長池、北の山並みの少し東寄りには以前歩いた新龍アルプスと電波塔を頂いた的場山が見えている。
登山口から25分、駐車場で見上げた送電鉄塔の真下に到着する。ここが一つ目のピークだ。行く手に第2・第3のピークが見えるが、山頂はその向こうに隠れている。
鉄塔のすぐ先に「とんび岩」があり、みんな次々に上がっている。
そろりと上がって谷側をのぞき込むと、エメラルドグリーンの岩谷池と堰堤に描かれた相生市章が見える。とんび岩の後頭部に、小さな松の木が力強い生命の息吹を放っている。
急傾斜を下って眺めるとんび岩は二つの巨石で出来ている。巨大な動物のようで、空を舞うトンビは想像しにくいなぁ。少し下りてまた登り返す。
急な登りの途中で振り返ると、先のとんび岩が何となくクチバシのある鳥のように見える。これってインコのようでもあり、いや、やっぱりトンビでなっとくです。そして2番目の253mピークを通過する。南に山頂付近の電波反射板が見えてきた。
赤い標識から、北尾根コースは「ダイセル播磨送電線路」の送電鉄塔保守道であることが分かる。傍らに「ささゆり・・・」の案内板がある。ここは「ささゆり苑コース」への分岐になっているようである。
10分少々で次の送電鉄塔に着く。すぐ先の最後のピークを越えると山頂への登り返しだ。このピークの下りには急傾斜の岩場が待っていた。一本流儀のストックでバランスをとりながら慎重に下りる。距離は短いが、下りて見上げるとこの通り。
渋滞気味のカーブの先はクサリ場で、真新しいクサリを右手でつかんで左手でストックを操り、ゆっくりと下る。姿勢を低くして転倒しないように気をつければ問題ない。距離は短い。
峠に着くと木に縛り付けられた「烏帽子古墳」の道標。進入路は確認しなかったが、ここから分岐しているようである。さて、山頂へ向けて最後の登りのスタートだ。
ダラ長の道を登るとベンチがある。西には天神山から相生湾方面を展望できる。IHI相生工場と関連企業がよく見える。
少し先に右側への脇道があったので行ってみる。相生湾がさらに近づき、正面には関西電力相生発電所。
元に戻って進み始めると左側に電波反射板がある。山頂はすぐそこだ。
2.天下台山の山頂風景
11時31分に山頂に立つ。登山口から2時間6分での到着だ。「天下台山 321.4m」の山頂標識が立っている。
その南近くに「水戸大神」と刻まれた石柱が立つ。今日は参加者が多いので、山頂はこのとおりの賑わい。ここでランチタイム。途中で買い求めた穴子巻き寿司をパクり、またまたコーヒーやお菓子をご馳走になって至福の時間。
南向きに、地名が刻まれた半円の方位盤が設置されている。中央に立つと一段低い場所で先着のハイカーが食事中。
東には播磨臨海工業地帯が延び、写真では分かりにくいが遠くに明石大橋の橋脚を目視できる。南には播磨灘の家島諸島が連なる。
西には先に眺めた相生湾と関西電力相生発電所。その向こうは赤穂市あたりか。湾の手前にはケミプロ化成と関連工場。写真右は、その少し北寄りにあるIHI相生工場で、手前にはクレーンが見える。同じIHIの敷地に削り出されたような断面を見せているのは、火山岩の一種である流紋岩を削り出して生コンクリート用の骨材を製造する関西マテックの採取現場である。
北東から南東にかけての大パノラマ。小さくて分かりにくいが、左の一角には斜めに山陽新幹線の橋脚が延び、揖保川が流れる。右手前は嫦娥山(じょうがやま)、その奥は梅林がある綾部山と思われる。その間に白いのはタキロンシーアイ揖保川事業所。さらに彼方に霞むのは播磨臨海工業地帯である。
3.岩屋谷コースを岩屋谷公園駐車場へ下りる
下山は歩きやすい岩屋谷コースだ。3分ほど東へ下りると「山頂まで300m」の標識。これなら楽に下りられそうだ。
平坦な道になり「東尾根・野瀬奥山方面」と「馬場坂地蔵」の分岐道標に出合うと、道は左へカーブする。
すぐに送電鉄塔の脇を通過する。ここから急な階段が続く。
昨日の雨のせいかも知れないが、道端のビニール管から清水が流出している。やがて「山頂まで700m」地点を通過。
山頂から15分、右手に東屋を見て通過。
ロープを張った柵がある急勾配の階段をゆっくり下りて行く。渓流のせせらぎを聴きながら下り進むと舗装道になる。
岩谷池まで下りてきた。堰堤には「とんび岩」から見た相生市章があった。
岩谷口遊園地でトイレ休憩をして、岩屋谷公園駐車場には13時15分に帰着した。山頂から50分ちょうどで下山だ。
4.寄り道①:世界の梅公園で観梅
車を利用しなければできない寄り道は実に嬉しい。寄り道の第一弾は観梅で、当初予定していた綾部山梅林に立ち寄る。ところが、期待していた一目2万本の開花状況が今ひとつで、近くにある「たつの市御津自然観察公園・世界の梅公園」へスイッチする。満開にはほど遠いが、日本の梅に加えて中国・韓国・台湾など豊富な樹種が眼を楽しませてくれる。
梅資料館の「尋梅館(じんばいかん)」を取り巻く白梅。1階が展示室で、2階は展望室になっている。
「唐梅閣(とうばいかく)」が見えるあたりには淡い色の枝垂れ紅梅。緑の池面に触れそうに垂れ下がる。
「獅子吼亭(ししくてい)」で撮影している仲間二人もろとも撮る。周辺には薄くピンクがかった白梅。
「鷹羽(たかばね)の魚見台」に仲間たちが群れている。スチール製の展望台が載っている台座が魚見岩で、魚群探知機が普及するまでは地元の古老をここに立たせて、魚群で黒く変化する海面を見晴らせたという。魚群を発見すると、ホラ貝を吹き鳴らし手旗を振って船団にその場所を伝達したという(播磨ライオンズクラブ設置の解説板から要約)。海面に映える陽の光が銀色に輝いている。
唐梅閣に近づいて、周辺を染める紅梅を観賞する。青空とのコントラストが素晴らしい。
再び尋梅館へ向かい二階の展望室に上がる。中華風の格子窓を通して家島諸島を望む。
ひときわ高い展望台から南を望めば、家島諸島が浮島のようだ。
5.寄り道②:室津漁港と万葉の岬
室津港に下りる車道で先頭を行く会長の車が停まり、漁港の風景を指さしている。まさかここで下車できようとは、心憎い配慮である。この配慮は自分にとって値千金だ。今まで何度かここを訪れたが、満足できる写真が撮れなかったビュースポットであり、セピア色が似合うシーンである。かつて、多忙な仕事に段落をつけようと思った年の賀状に、この風景を人生の寄港地に例えたことを思い出す。
※マウスのポインターを置くとカラーに変わります。iPadなどでは画像にタッチするとカラー画像に切り替わります。
室津海駅館に入って、たつの市の歴史と文化財を鑑賞する。歴史に詳しい会長の解説もあり、有意義な滞在になった。だが、会長イチ押しの「みなと茶屋」は、残念ながらタイムアウト。15時30分で閉店だった。
「ここまで来たんだからもうひとつ綺麗な場所に行こう」とリーダー。着いたのは「西播磨花の郷・万葉の岬」。車でなければこんな芸当はできない。南に広がる家島諸島を撮影する。
家島諸島の東端にある男鹿島(たんがしま、だんがじま)にズームイン! 変わった形をしている島は全体が花崗岩で出来ていて、石材の採取搬出が産業の柱とか。真東には室津の岬があり、その向こうに播磨臨海工業地帯が続く。
万葉の岬の高台から少し南にある鳴島万葉歌碑。作者不詳で
室の浦の 湍門の崎なる鳴島の 磯越す浪に 濡れにけるかも
とある。近くのHOTEL万葉岬の前には「山部赤人万葉歌碑」。山部赤人が四国への旅路で、故郷に思いをはせた一首と反歌三首が刻まれている。
かくして今回の山行は終わり帰途につく。素晴らしい景観の天下台山と観梅、そして室津の歴史探訪と万葉の岬からの眺望、ないまぜになったイメージを少しずつ整理しながら車に身を預ける。