1.出発〜登山口
思い立っての出発なので、岡山駅2Fのスーパーで弁当や飲み物などを用立て、JR備前一宮駅には正午過ぎに到着した。岡山駅からは10分少々である。駅前を右折して吉備津彦神社へ向かう。


突き当たりを右へとって踏切を渡ると石鳥居があり、その向こうに随神門(ずいじんもん)が見える。


まずは拝殿で柏手を打って参拝する。オッ、女性の快活な声が、と振り返ると「平成29年・八方塞がり表」を囲んではしゃいでいる。ふ~む、八方塞がりの歳があるなんて始めて知りました。賑やかな彼女たち、もう年齢がバレバレですね。


美しい流造りの神殿は奥から本殿、渡殿(わたりでん)、祭文殿(さいもんでん)そして拝殿。昨年、40年ぶりに葺き替えられたばかりの本殿が素晴らしい。


東側に移動して稲荷神社の赤鳥居を通り抜け、左折したあたりに「吉備の中山登山口」の石碑が立つ。相棒は軽装で、ビニール袋のお弁当をもって出発だ。


2.元宮磐座・龍王山山頂へ
歩きやすい道をハイキング気分で進む。右側の小高い場所に稲荷神社がある。


左側には真竹の林。少し行くと「龍神谷」の標識が立っている。


「御神木保護地区」を過ぎると傾斜がきつくなり、路面に木の根っこがむき出しになっている。


一面に落ちたドングリの実。繰り返し急傾斜が現れるけれど、ここまではふくらはぎに異常はない。


5年前と同じ道標が立ち、大きなクスノキには同じ名票が結ばれている。まるで時間が止まっていたかのようだ。


元宮磐座・八代竜王への道に踏み込む。「宮」と刻まれた標石がいくつも立っている。


さくら広場を通り過ぎると、緩やかな下り坂の向こうが水面のように輝いている。


こんなところに池はないはずだが、と近づいてみたら雪だまりだった。先日の雪が吹き寄せられたもののようだ。雑木を埋めた急階段をゆっくりと登る。


元宮磐座(もとみやいわくら)に着いた。その隣に経塚があり、すぐ隣が八代竜王で「吉備の中山龍王山山頂」の標識が立つ。これらについては5年前の山行記録のとおりであり繰り返さないが、巡らされたしめ縄は神の領域との結界、神聖な雰囲気があふれている。




東面にかけて緩やかに広がる斜面に男性が寝そべっている。大寒にもかかわらず無風で日差しが暖かい別世界。ここで昼食をとることにする。遠く南東には岡山ドームから旭川を越えて児島湾まで、東には一宮地域からシティライトスタジアムが見える。そんな眺望を楽しみながら食べていると、女性ハイカーがやって来て近くに腰を下ろして風景に見入っている。


昼食後、双眼鏡を忘れたのに気づいてカメラのズームでのぞいてみる。変電所と国際ホテル、金甲山方面、岡山ドーム、そして樹木の間に一宮高校・岡山商科大学・岡山大学・岡山理科大学が並んでいる。




3.木漏れ日の道を八畳岩から山頂三角点へ
約200m下の天柱岩までは急傾斜の坂が連続するため、今回はパス。クスノキのある分岐点まで戻って御陵へ向かう。以前にはなかった標識が立つ「木漏れ日の道」を行く。反対からやって来る何人ものハイカーたちと挨拶を交わした。


木々が少なくなって、拓けて陽が射している場所に雪だまりができているのはおもしろい。風の強い冬でも木々に囲まれた山中は比較的暖かいが、こんな拓けたところが風の道になって雪を吹き寄せているのだろう。その先に、またしめ縄が見えてきた。


「お休み岩」は神様のお休みになったところだろうか。腰を下ろすには大きく畏れ多い。その先にもしめ縄がある。


「環状石籬(かんじょうせきり)」だ。陽射しの具合でややわかりにくいが、岩が環状に配置されている。縄文時代の祭礼や埋葬の儀式に関連してつくられたものらしい。


道を挟んで反対側にある微笑む顔のような岩、愛嬌があるなぁ。少し進んで右折するとダイボーの足跡(大坊:大きな坊さんの足跡)と呼ばれる窪みがある。


近くに立つ「八畳岩・鏡岩」の道標にしたがって左折すると、すぐ右に八畳古墳。


左奥に大きな岩が散乱していて、一番大きいのが八畳岩。その裏側に回り込んでみる。


ふかふかの落ち葉を踏んで進むと広場があり、テレビの共同受信アンテナが立っている。


広場の一角に三等三角点が設置されている。滑らないように落ち葉の傾斜を下りると鏡岩。今回も岩肌に刻まれた多数の不思議な線が目を惹く。




4.穴観音~御陵
来た道を道標まで戻って再び御陵の方へ進む。ややわかりにくい分岐があるので(写真左)、穴観音へ立ち寄るには右側の一段高い細道を歩く。鉄線が張り巡らされてあちこちに「立入禁止 宮内庁」の標識。やがて右手に穴観音が現れ門扉を開いてお詣りする。


前回は赤い前掛けに隠れてお姿はわからなかったが、今回は正面の観音様(説明板には私見として、これは観世音菩薩ではなくて大日如来とある)の姿を拝むことができた。


気持ちの良い道である。ここまで肉離れの右ふくらはぎは問題なし。同行の相棒も安心の様子だ。


御陵には東側の横道から入り込む。南北に一対の標石があるが、大きな×印のほうは「界」の文字以外が判読しにくい。もうひとつには表裏に「備前」と「備中」が刻まれ、ここで中山茶臼山古墳の東半分が備前国、西半分が備中国に等分されている。



案内板には宮内庁の名前と共に「孝霊天皇皇子 大吉備津彦命墓」とある。整備清掃が行きとどき清々しい雰囲気。しばし立派な御陵に参拝する。




5.下山して吉備津神社参拝
今回は寄り道しないでこの長い階段から下山を開始。これを普段どおり下りることができれば足の調子はGood! 気合いを入れて少し速めに下りてみる。舗装道路に着地して振り返ると、相棒との差はこの程度で思わずにっこり。が、わざと遅く歩いてくれているのでは?


ここからは舗装道歩きで、車がどんどんやって来る。途中の分岐を左にとって車道と離れ、谷へと下りて行く。


ところどころに竹箒があり、落ち葉はきれいに掃きとられている。


再び車道に出合って左へ進むと、吉備津神社の南詰めの本宮社に出た。


緩やかに傾斜がついた廻廊を拝殿へと上がって行き、途中で振り返ると優美な曲線が延びている。


入母屋造の2棟を結合した比翼入母屋造(ひよくいりもやづくり)の吉備津神社本殿は実に美しい。吉備津造(きびつづくり)とも呼ばれ、本殿の正面に接続された拝殿と共に国宝に指定されている。拝殿で山行の無事を感謝して、JR吉備津駅から帰途につく。




かくして無事に歩き終え、今後も山歩きを続けられそうな感触を得ることができたことは嬉しい。昨年を振り返ると、山行の頻度や取り組みにかなりムリがあったように感じている。そろそろ歳を意識した歩き方に切り替えないと、早晩挫折してしまうのではないかと思われる。高山植物や山野草を観察しながら、鳥の声に耳を傾けながら、美しい風景にはゆっくりと立ち止まりながら歩いていたい。そんな自分の山歩きの姿勢を大切にしながら、もう少しばかり歳を重ねることができれば最高だな。同行してくれた相棒には心から感謝!