1.黒髪山登山口へ
JR岡山駅から約1時間半、新見駅には10時49分に到着した。市街地循環バスに接続しており、ライトグリーンにレインボウを配した「ら・くるっと」に乗車する。思誠小前バス停で降りて信号を左折する。
同校のホームページで今回初めて知ったのだが、宝暦5年(1755年)に創立された新見藩校の思誠舘という歴史をもち、教育目標は「誠者天之道也 思誠者人之道也 至誠而不動者未之有也」。誠を持って実行する人間の育成を目指している。左手に2012年に改築した近代的な校舎が現れる。
雲居寺の駐車場を目指して歩く。見えてきたのはNTTドコモの電波塔。手前を右折すると市営斎場で、見送りのバスや車のじゃまにならないように歩く。
駐車場に到着した。向かいにNHC新見ハイキングクラブ手作りの道標が立つ。ここが登山口だ。
2.沢分岐~青龍寺観音堂
まずは緩めの坂を登って行く。その先に見えるのは、今回の山行では数少ない眺望のひとつ。すぐ手前には岡山県立新見高等学校、遠くには天神山の方が見えている。
間もなく舗装道から山道に変わり、15分ほどで沢に出合って徒渉する。
渡った後、しばらくは急坂のジグザグをこなす。汗が噴き出してハンカチを絞るとしたたり落ちそうな状態が20分、右に沢を感じながら登りに登って、やっと小休止する。仲間からいただいた冷たいフルーツゼリーが、身に浸みるなぁ。
さらに続く急勾配を登る。手書きの道標が現れて、少し風景が変わってきたようだ。
後から考えると、このあたりが沢分岐だったように思える。「第二五号」と刻まれた石柱が立っていた。
雑木で見通しが利きにくい。小さな道標のプレートや細いロープでの誘導を見失わないように前進する。
道が平坦になってホッとする間もなく、笹やら雑草やらが前方をふさいで藪こぎで前進。
藪こぎは間もなく終わって丸山分岐を通過する。新見ハイキング倶楽部が設置してくれた見やすい道標に感謝。手書きの地図もあった。
続く下りの杉林を進むと角山・黒髪山分岐の道標。これもNHCの製作だ。
分岐からの道のりをずいぶん長く感じた。曲がりくねった落ち葉の道が続く。やがて「四十八番」と刻まれた石仏と出会い、この道が巡礼道であることを知る。
平坦地に出た。ロープが張られた右側南面にはアテツマンサクが自生している。1914年(大正3年)に植物学者の牧野富太郎博士によって発見されたもので、3月上旬に細長い4枚花弁の黄色い花をつける。曇天下に朧気ではあるが南に広がる風景に見入る。
その先には青龍寺観音堂が建つ。1575年に毛利・三村の争乱で焼失したが、水谷伊勢守勝隆が備中松山城主の1660年前後に再建されたそうである(解説板:新見市教育委員会)。寄棟造りに茅葺き屋根のお堂は清楚な美しさを漂わせている。
境内の傍らには石造りの五重塔。東の端からは、釉薬瓦が美しい青龍寺を窺うことができた。
3.黒髪山山頂~青龍寺
観音堂から来た道を少し戻り右へとって山頂を目指す。いきなり大きな岩が現れて驚く。
大岩を越えたあたりにも石仏が並ぶ。山頂までは急な丸太の階段の連続で、小休止しながら足を運ぶ。コナラに取り囲まれた古木は舞を舞っているようだ。
黒髪山山頂に到着した。素敵な山頂標識を撮影して二等三角点にタッチする。周辺は木々が繁ってまったく眺望がない。小さなレジャーシートを敷いて弁当を広げる。
30分のランチタイムを終えてスタート。森の探索気分で東の電波塔を目指す。
見えてきたのは防災行政無線の黒髪山中継局だ。ところが想定していた電波塔から南への下り口が見当たらない。そのまま尾根を東へ下りて行くと手書き道標があり右折する。
山腹を一気にトラバースして舗装道路に下り立つ。
舗装道路を1~2分進むと、山号に黒髪山を戴く青龍寺に着く。
参拝して山行の無事を感謝する。オレンジ色が美しい瓦は石州瓦だろうか。庭には咲き初めのアジサイを背景に、サツキがこぼれるように咲いている。
塀に沿っての植え込みもサツキだろうか。樹種は定かでないが花がつくと美しいに違いない。一角に、簡素だが周辺の風景と融和した落ち着いた感じの鐘楼がある。
4.南へ下りて車道・舗装道路をJR津山駅へ
手ぶれ写真だが、下山はこんな道を南へ下りて行く。途中に「萬霊」と刻まれた石仏が立っていた。
15分ほどで舗装道路出合に着いた。下から車でやって来ても、ここで舗装道路を選べばさらに青龍寺まで上れることが分かる。標識に隣り合って帽子をかぶった石柱があり、「許酒肉五辛入山門」と刻まれている。思わず「エエッ!?」。
これは仏の世界との境を表す結界石で、普通は「不許酒肉五辛入山門」と彫られて酒や肉、匂いの強い五辛(ごじん:ニンニク、ニラ、ネギ、ラッキョウ、ノビル)など修行の妨げになる物の持ち込みを禁じている。どうやら、その先頭の「不」だけが消されているようで、ヤレヤレ・・・。
もう登りはない。が、緩い下りの車道を延々と歩く。
車道脇の谷側にユキノシタ、ドクダミが群生してる。
最初に見えた小さなお店で、缶ビールやら冷たいものやらを銘々買って喉を潤す。養源寺を過ぎて民家が並ぶあたり、素敵な雰囲気の喫茶店が現れた。洒落た銘板には「COFFEE SALONIKA」、サロニカはエーゲ海の入江にある港湾都市の名前。ステンドグラスのシェードランプを配した調和が素晴らしい。
有名な新見大名行列が通るのはこの通りだろうか。突き当たりを右折すると蔵造り風の御殿町センター。
江道橋(えどうばし)で高梁川を渡って県道8号線を西へ進み、昭和橋南詰めの交差点を左折するとJR新見駅に帰着。列車待ちのわずかな時間に、近くの土産物屋の自販機で缶ビールを買ったら、掃除をしていたお婆さんが手を止めて「ありがとうございます」と会釈。「どういたしまして」とは言葉に出さず頭を下げる。