1.買い物と登山口探し
楯越山の山腹に植生された「ひなせ」の文字がはっきり見える。後方にいた十人ほどの山歩きのグループは登山口の方へ行ったようだ。自分たちは前回登った登山口を通り越して、車道に沿って信号機がある交差点の手前まで歩く。左折して右に海岸線を見ながら進む。
左に車数台が駐車できる場所があり、そこに「髙良八幡宮の社叢」の解説板が立っている。すぐ上の山手にある髙良八幡宮(こうらはちまんぐう)は、日生港を守る八幡宮と金比羅宮を祀る神域であり町民の憩いの場所でもある。ウバメガシを主とする周辺の森は、瀬戸内沿岸の自然植生をよく表しているので県指定郷土記念物に指定されているとのことである。
日生港に赤白の配色が鮮やかな船がやって来る。船体に「HINASE ISLANDS LINE」、船名は「NORINAHALLE」とある。日生諸島を結ぶ定期船である。後で調べて分かったのだが、大生汽船が運航しているもので、船名は『のりなはーれ』だそう、これはおまけで「座布団3ま~い!」
ずいぶん道草をしながら20分ほどで日生漁協五味の市へ着いた。平日なので人も車も少ない。
カキのシーズンも終盤だからか、あるいは平日のためか、はたまたコロナ禍のせいだろうか、人が少ない。鮮魚フロアの大半を占めるカキ販売店では一店しか営業していない。その他の鮮魚類や野菜果実フロアには商品が並べられているのだが、以前の賑やかさはない。道路を隔てた海の駅しおじで、焼きたての太いアナゴと干しアミを買い求める。
さて、これから登山口探しだ。今回は地図を持参してなくて、以前にネットで見つけた地図にないルートから登る予定だ。海の駅の南を左折すると道路が日生駅前港(寒河港)方面に延びている。
山側にはカキ養殖用のホタテの貝殻が積み上げられている。加子浦歴史文化館などの案内標識が立っている。
海側にもホタテ貝殻の山がいくつも。おやっ、洒落たカフェがあるぞ。その名は「Stella」。何て良い名前だ。Stellaは星または星光の意、そして『Stella by Starlight(星影のステラ)』はジャズ・スタンダードナンバーのひとつであり、手元に何枚かのCDをもっている。貼り紙があり「3月は土日祝のみの営業とさせていただきます」、残念!
このあたりに登山口があるはずだと探す。何度も往復を繰り返していると、家の間から山腹に道があるのを発見。車庫と家の間から登れそうである。
2.南側から山頂を目指して
やっと見つかった道は、かなり古くからあるもののようだ。丸太の階段と土道が交互に続く。
少し登ると南の頭島(かしらじま)方面が見えてきた。
背の低い松を避けながら進むと溢れるようなコバノミツバツツジ。もうこんなに咲いているんだ!
ジグザグの坂道は東へ回り込んでいるようだ。備前♡日生大橋が見えてきた。
右へ足を滑らせないようにと相棒に声をかける。今度は真南の頭島と鴻島(こうじま)のあたりが見えてくる。
今日は二人とも軽装で、相棒は街散歩スタイルだ。分岐が現れて、ここは右へ登ることにする。
東へせり出したようなコースで階段の丸太があちこちで破損している。しかし、時折見える眼下の眺望は秀逸である。
シダが茂って道を覆っている。あまり歩かれていないのかも知れない。朽木とコバノミツバツツジとシダがコラボで港を彩っている。
いよいよ道が狭くなり右側へ踏み外さないように要注意。左からせり出した枝を避け、くぐりながら前進する。
進行方向にアンテナが見えてきて舗装道路に飛び出したが、どこかわからない。向こうの方にあるのが駐車場のトイレであることがわかり、山頂近くまで登り着いていることに気づいた。間もなく桜祭りが始まるので、紅白の提灯が飾り付けられている。
駐車場東に建つのはNHK日生FM中継所の電波塔。その隣りには「RSK管理地」のプレート。ここにも電波塔ができるのかな。
階段との分岐は坂道の方を進む。桜とミモザが混じりあっている。
前回ここへ来た時の記録で、本来のミモザとはオジギソウであること、フサアカシアやギンヨウアカシアも俗称でミモザと呼ばれると述べた。しかし花がついてなかったのでどちらのアカシアかは判らなかった。今回はこの花の密集状態からギンヨウアカシアであることが判った。ところが、ギンヨウアカシアは葉の裏が銀色であることからそのように呼ばれるそうなので、それなら前回わかっていたはずで、これにはガックリ。フサアカシアも見てみたいものだ。
ミモザの下の桜の花は純白で、すでに葉が成長している。花の色と花弁の数、先端が尖った葉の形からオオシマザクラではないかと思う。
こちらの桜は今満開で、まさにミモザと桜の競演といった感じだが花弁の形がよくわからない。ヤマザクラではないかと思われるのだが。そうこうしている間に山頂に到着だ。
3.山頂風景
左は備前市防災行政無線の楯越山中継局アンテナ。右はNTTドコモ日生基地局の電波塔。
日生港の眺望は何度観ても良い。港の見える丘公園と呼ばれる所以だ。港を見下ろす大木はミモザだった。こんなに大きくなるとは知らなかった。
ここまで桜を観ながら登ってきたが、山頂のソメイヨシノはまだ蕾の状態。桜祭りに合わせて咲くことだろう。
何度観ても素晴らしい眺望である。船の動きだけが時間を刻んでいるような風景。東屋のベンチに腰を下ろしたまま緩やかな時の流れを愉しむ。
小豆島からのフェリーが日生駅前港に入港していくのを見送り、「幸福(しあわせ)の鐘」をついて下山に取りかかる。
4.下山後は・・・
ミモザと桜の競演あり、コバノミツバツツジのピンクがさらに彩りを添えた行程。下山路にもミツバツツジ、さらにヤブツバキとソメイヨシノ(のような花)まで登場してオールキャストの出演だ。予想通り最高の春のひと時をもつことができた。
下山後は、カキオコをいただくべくお好み焼き「もりした」へ直行する。ところが、若者でほぼ満席状態。それは良しとして席に着いたが、若い女性の大声でのおしゃべりがとまらない。一部の男性はマスクを外して笑っている。これには我慢できず、店主に理由を述べて店を後にする。コロナ感染対策の呼びかけが、はたして若者に届いているのかが問題になっている向きもあるが、日常に利用している交通機関での若者のモラルには感心するところが多く、これほど酷い状況に遭遇するとは思わなかった。一部の若者だけだと思うが、今回は残念な幕引きとなった。