4. イコライザーの製作①

 8バンドのグラフィックイコライザーを製作します。8つの周波数帯域(音域)をそれぞれ強調または減衰することによって、全体の聞こえ方を補正することができます。マイクアンプとヘッドフォンアンプの間に設置して使用します。



1.使用する回路

 グラフィックイコライザーは音響機器の音質調整や音響補正を行うものです。ネットで製品情報を調べると、いくつかの周波数帯域から30を超えるもの、つまり30バンド以上の製品まであり、音楽の制作現場などで重宝されていることがわかります。聴覚補助の観点からはさほど多くのバンドは必要なく、むしろ多すぎると調整が難しくなるのでどこで折り合いをつけるかがポイントになります。
 5~10バンドの製品を調べると、周波数帯域の設定は種々様々であり、まずは周波数帯域をどのように設定するかを決定しなければなりません。また、それを実現するためにどんな回路・部品を使用するか、多数の部品類をどう組み立て配線するか等々、事前に検討すべき事項がたくさんあります。

 なかなか的確な情報に巡り会えず、先に述べたように、CQ出版『トランジスタ技術2020年7月号』の富沢瑞夫(著)「ギター/ベース向け8バンド・グラフィック・イコライザ」を参考にして製作することにしました。
 もとの回路では、バンドの中心周波数が次のようになっています。
    100, 200, 400, 800, 1.6k, 3.2k 6.4k (Hz)

 今回は中心周波数を次のように設定することにしました。ステレオなので2回路製作します。
    50, 100, 200, 460, 1k, 2k, 5k 10k (Hz)

 各バンドのイコライザーは、回路図中央下部の破線で囲んだ回路「アクティブフィルター」で作成します。これはLCR共振回路(L:インダクター、C:コンデンサー、R:抵抗)を、オペアンプでシミュレートした回路になっています。Lにコイルを使うと大型になり隣のバンドの影響を受けるなどの問題がありますが、オペアンプを使うことでこれを回避できます。
 次図にその対応と、中心周波数\(f_0\)の算定式、および\(Q\)値と\(Ca\), \(Cb\), \(R\), \(r\)の関係式を示します。\(Q\)値は共振の鋭さを表すもので、値が大きいほど周波数の選択性能が鋭くなります。つまり選択できる周波数幅が狭くなります。バンド数が多い場合は、この値を大きくとることで他の周波数帯域への影響が減少します。
 今回はすべてのアクティブフィルターの抵抗値を、\(r=1.2kΩ,\) \(R=100kΩ\)で固定し、\(Q=2.89\)として、上記の中心周波数に近似する\(C_a,\) \(C_b\)を求めることにしました。

 ただし、入手可能なコンデンサーの容量は限定されている点を考慮する必要があります。この計算を簡単にできるツール『エフェクター自作/モディファイで使用する計算フォーム』を見つけたので、利用させていただきました。計算結果は次の通りです。

\(C_a(μF)\)\(C_b(μF)\)\(f_0(Hz)\)\(≒f_0(Hz)\)
 1.0 0.146.0 50 
 0.47 0.04797.8 100 
 0.22 0.022208.9 200 
 0.1 0.01459.7 460 
 0.047 0.0047978.0 1k 
 0.022 0.00222.1k 2k 
 0.01 0.0014.6k 5k 
 0.0047 0.000479.8k 10k 


2.回路の分割とテスト

 製作にあたって回路を2つのブロックに分割します。回路図のIC1aとIC1b周辺はインピーダンス調整をするバッファ機能を担うので、バッファアンプと呼ぶことにします。8個の半固定ボリュームとアクティブフィルターの部分をグラフィックイコライザーと呼ぶことにしましょう。
 必要なパーツを取りそろえて、ブレッドボード上にバッファアンプとグラフィックイコライザーを組み立ててみました。写真は1チャンネル分のグラフィックイコライザーで、8個の半固定ボリュームと抵抗・コンデンサー、それに2つのオペアンプNJM074から構成されています。NJM074は4回路入りなのでこのような構成になります。


 製作に先立ってこのような回路を組み立ててテストをするのですが、ここでテスト以前に大きな問題が起きました。コンデンサーのサイズが大きすぎて、これでは、最終的に予定している基板サイズ(72 x 48mm)に収まりません。すべてフィルムコンデンサーにしたためで、0.47μFは14.0×15.5×9.0mmもあります。これら容量の大きなものはサイズが小さいメタライズドポリエステルフィルムコンデンサーなどに変更する必要があります。
 テストは期待通りだったので、容量が0.1μF以上のコンデンサーはメタライズドポリエステルフィルムを手配しました。

3.使用部品

 必要な部品類は以下のとおりです(価格は秋月電子通商調べ)。
No.名    称数量参考単価備  考
1片面ガラス・ユニバーサル基板 72 x 48mm1\80
2両面スルーホールユニバーサル基板 3 * 71\40
3オペアンプ NJM4558DD2\198個入りの1個単価
4オペアンプ NJM0744\120
5丸ピンICソケット(8P)2\15
6丸ピンICソケット(14P)4\25
7カーボン抵抗 1kΩ2\11袋100本入り単価
8カーボン抵抗 1.2kΩ8\11袋100本入り単価
9カーボン抵抗 4.7kΩ4\11袋100本入り単価
10カーボン抵抗 10kΩ12\11袋100本入り単価
11カーボン抵抗 100kΩ10\11袋100本入り単価
12カーボン抵抗 1MΩ4\11袋100本入り単価
13フィルムコンデンサー 470p 50V2\10
14フィルムコンデンサー 1000p 50V2\10
15フィルムコンデンサー 2200p 50V2\10
16フィルムコンデンサー 4700p 50V4\10
17フィルムコンデンサー 0.01μ 50V4\10
18フィルムコンデンサー 0.022μ 50V4\10
19フィルムコンデンサー 0.047μ 50V4\10
20フィルムコンデンサー 0.1μ 50V2\10
21メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー 0.1μ 100V4\20
22メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー 0.22μ 100V2\25
23メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー 0.47μ 100V2\30
24メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー 1.0μ 100V2\40
25電解コンデンサー 4.7μ 50V2\10
26電解コンデンサー 47μ 50V2\20
27分割ロングピンソケット 1x40P1\80
28ピンヘッダ 1x40P1\35
29ジャンパーピン青色2\41袋25個入り単価
30その他配線など少々


4.バッファアンプの組み立て・配線

 バッファアンプの外観と外部接続端子の機能です。
 入力(Input)、出力(Output)、電源(Vcc)はマイクアンプやヘッドフォンアンプなど他のユニットと同様ですが、BoostとCut、1/2Vccはこのユニット特有の端子です。これらは
 上から見た部品配置と裏面の配線の状況です。
 IC1bの6ピンと5ピンを1/2Vccに接続すると、すべてのバンドの可変幅が±14dBになります。この部分は2Pのピンヘッダーを設置して青色ジャンパーピンで接続するようにしました。ジャンパーピンを外せばこの機能は無効になります。


 回路図は簡単ですが、実際に配線をしてみるとかなり込み入っています。出力側の100kΩはスペースの関係で裏面に取り付けています。外部との接続端子が多いので、端子間がショートしないように気をつけなければなりません。完成後のバッファアンプは、さらに複雑なグラフィックイコライザーと接続してテストすることになるため、ここでミスをしないように仕上げておく必要があります。目視とテスターでしっかり確認しておきましょう。

 長くなりそうなので今回はここまでとします。次回は残りのグラフィックイコライザーの組み立て配線と動作確認を取りまとめます。