6. 電源とリレーユニットの製作

  ここでは、USBケーブルでモバイルバッテリーと接続する受電部、9V電源供給のための昇圧型DCDCコンバーターなど、システムに必要な電源部分を製作します。また、電源とミュート制御のためのリレー回路、電圧計測回路などの付帯回路を組み付けます。



1.電源周りの製作

○モバイルバッテリーの仕様

 電源への使用を考えているモバイルバッテリーAnker PowerCore 10000の仕様は次のとおりです。
  ・入力  5V 2A
  ・出力  5V 2.4A
  ・容量  10000mAh
  ・コネクタタイプ 入力 USB Type A、出力 Micro USB
  ・安全性 サージ保護機能とショート防止機能による多重保護システム
  ・サイズ 9.2 x 6 x 2.2 cm
  ・重量  180 g
  ・その他 電池残量がわかりやすい


○モバイルバッテリー受電部

 モバイルバッテリーからHAT22には、USBケーブル(USB2.0 Aオス-マイクロBオス)で接続します。受電用のマイクロUSBコネクターをプリント基板(切れ端でも可)に取り付けます。同じ基板に電池の電圧測定用の回路も組み付けます。
 バッテリー電圧は9.0Vを上回る可能性があるため、余裕をもって最大計測電圧を10Vにします。電圧はPi Picoのアナログ入力ポートを利用して測定しますが、最大計測電圧が3.3Vなので降圧する必要があります。このために、下図のような抵抗器を使った分圧回路を作成します。
 100kΩの抵抗器3本を使って、2本は並列接続にして50kΩとし、これともう1本を直列に繋いでいます。①に加えた電池の電圧は③GND間の抵抗値によって分圧され、GNDに対する中間点②の電圧は3.3Vになるので、ここをPi Picoのアナログ入力に繋ぐことで計測することができます。
この分圧回路は次のように接続して使用します。
 ①は計測対象電池の(+)へ
 ②はPi Picoのアナログ入力ピンへ
 ③は計測対象電池の(-)と
 Pi PicoのGNDピンへ
 写真は、最終的に組み付けた状態です。わかりにくいかも知れませんが、マイクロUSBコネクターから+-が取り出せるようにピンソケットに配線し、空きスペースに100kΩ抵抗3本をムリヤリ詰め込み配線した状態です。


○昇圧型DCDCコンバーター

 5Vのモバイルバッテリー出力を、秋月電子の「昇圧コンバーターキット」で、9.0Vにアップします。
 写真左が組み立てキットの昇圧電源のプリント基板です。多くの部品はあらかじめ実装済みで、これに付属のピンヘッダーやコンデンサー、可変抵抗器、スイッチなどをハンダ付けします。プリント基板上部の3つの穴には昇圧とバイパスを切り替えるトグルスイッチを取り付けるようになっていますが、それに代えて3Pの細ピンヘッダーをハンダ付けし、ジャンパーピンで昇圧動作に固定するように設定しました。このあたりの詳細は上記リンクの付属資料に記載されているので参照してください。
 写真左、基板右側の5つ穴にピンヘッダーを取り付けます。②と③は内部でつながっていますが、大電流が流れるので端子間を配線します。なお⑤は使用しません。
 主な仕様は次のとおりです。
   ・入力電圧範囲 2.3~5.5V
   ・出力電圧範囲 5~25V
   ・最大出力電力 5W
   ・スイッチング周波数 1.2MHz
   ・その他 過熱保護回路内蔵
 コンバーターが完成したら、モバイルバッテリー受電部にUSBケーブルで接続します。受電部のピンソケットの+-を、それぞれDCDCコンバーターの入力端子とGNDにジャンパーワイヤーで接続します。出力端子とGNDをテスターに繋いで出力電圧を測定します。DCDCコンバーターの可変抵抗器のネジを、ドライバーで回転して電圧が9.0Vになるように調整します。


2.昇圧電源の動作テスト

○オーディオユニットとの接続

 前回にテストしたオーディオユニットに、電源供給するブレッドボードから乾電池を取り外して、代わりにDCDCコンバーターの出力端子とGNDをブレッドボードの赤・青ラインに接続します。マイクの音声がイヤフォンから再生されていることを確認してください。


○電圧の降下テスト

 電圧がどの程度まで下降すると発振が起きるのかを確かめます。発振すると大きな音が出るので、イヤフォンを外してから取りかかります。
 テスターを電圧測定に切り替えてDCDCコンバーターのGNDと分圧回路(先の略図)の②(Pi Picoアナログ入力ピン側)に繋ぎます。DCDCコンバーターの可変抵抗器のネジを、ドライバーでゆっくり左回転しながら電圧の低下を確かめてください。イヤフォンから発信音が出た時の電圧を読み取ってメモします。
 手元のテストでは2.2V前後で発振しました。十分な余裕を見て、Pi Picoでの電圧計測時の発振閾値を2.50Vに決めましょう。つまり、Pi Picoはアナログ入力から読み取った電圧値が2.50Vを下回るとオーディオユニットの電源を切るようにプログラムすることになります。これはDCDCコンバーター出力電圧に換算すると7.50Vになります。再度、テスターをDCDCコンバーターの出力端子に繋いで、可変抵抗器を調整して正しく9.0Vになるように調整してください。

 電源周りの作業で使用した部品類は次の通りです。
No.名    称数量参考単価備  考
1両面スルーホールユニバーサル基板 3 * 71\40切れ端で十分
2ISL97519A使用可変商圧電源キット1\650
3電源用マイクロUSBコネクタDIP化キット1\130
4カーボン抵抗器 100kΩ3\11袋100本入り単価
5分割ロングピンソケット 1x42P1\80
6ピンヘッダ 1x40P1\35
7ジャンパーピン青色1\41袋25個入り単価
8その他配線など少々\


3.リレーユニットの回路と外観

 リレーユニットには、電源のON/OFFとミュートのON/OFFを制御する2組のリレーを組み込みます。どちらもPi PicoからHigh/Low(3.3V/0V)のシグナルを受けることで、リレーを動作させます。


○リレーについて

 ここでは、リレーを左のような回路記号で表現しています。下部のコイルに電流を流すことによって、上部のスイッチが動作します。スイッチの接点には次の3種類があります。
  NC: Nomally Close
     コイルに電流が流れていない状態でONになる端子
  COM: Common
     NCの相手側の端子
  NO: Normally Open
     コイルに電流が流れるとONになる端子

 使用するリレーは秋月電子で調達しました。電源制御には1回路のY14H-1C-5DSを、ミュート制御にはステレオ用に2回路の941H-2C-5Dを使用します。仕様の詳細は後に掲載している部品表のリンクから参照してください。

○電源制御

 DCDCコンバーターとオーディオユニットを接続する電源回路をON/OFFします。リレーのCOM端子とNO端子を使って、HAT22の起動と同時にONにします。HAT22を停止する場合は、まずミュートをONにして音声出力をカットし、わずかな時間差で電源をOFFにします。電池の電圧が発振閾値を割り込んだ場合も、同様の順序でHAT22を停止します。


○ミュート制御

 ミュートは、ヘッドフォンアンプのステレオ出力端子を一時的にGNDと短絡することで実現します。右の図のように、リレーの2回路のCOM端子とNC端子をそれぞれ左右の出力とGNDに接続します。リレーが動作していない時はON状態なので、出力はGNDに短絡して音声が出力されず、ミュートが効いた状態になっています。コイルに電流が流れるとOFFになって短絡状態が開放されるので、音声はイヤフォンに出力されます。

 これを利用して、起動時のポップノイズを防止するために、電源は起動と同時にオンにします。この時ミュートが効いているので、ノイズはイヤフォンに届きません。しばらく時間が経過して(3~5秒程度)、オーディオ回路が安定した状態でミュートをオフにすると音声が出力されます。
 停止時のポップノイズは、まずミュートをオンにして、わずかに遅れて(1秒程度)電源をオフにすることでノイズを出力させないことが可能になります。

○リレーユニットの回路

 電源制御とミュート制御の2組のリレー回路で構成します。どちらも9Vで駆動し、トランジスターによるドライブ回路を備えています。Pi PicoのGNDとGPIOに接続したシグナル端子がHIGHになると動作し、LOWになると開放します。2つのリレーはどちらも次のような仕様です。
  ・コイル電圧: 5V(感動電圧: 4.00V)
  ・コイル電流: 29.9mA
  ・コイル抵抗: 167Ω
 これによってVccへ直列に入る抵抗値200Ωと、2SC1815のベースに接続する抵抗値880Ω(≒1kΩ)が決まります。リレーのコイル電流を急速に遮断すると、急激な高電圧パルスが発生してトランジスターの劣化や破損の恐れがあるので、コイルと並列に逆起電力防止用のダイオードを接続しています。
 なお、ミュート制御用のリレーは2回路ですが、回路図では1回路分を省略しています。


○外観と部品の配置

 リレーユニットは片端にシグナル端子を配置し、中央部分でVccへ接続するようにしています。ミュート制御用の2回路リレーのサイドに、リレー接点に対応した2組の接続端子を設置しています。電源制御用のON/OFF接続端子は、1回路リレーの横にあります。
 部品配置と裏面の配線です。最終的なケースへの収納時には、サイズを小さくするために基板の不要部分を切削しています。


4.使用部品

 必要な部品類は以下のとおりです(価格は秋月電子通商調べ)。
No.名    称数量参考単価備  考
1両面スルーホールユニバーサル基板 3 * 71\40
25V小型リレー 2回路C接点 941H-2C-5D1\100
35V小型リレー Y14H-1C-5DS1\100
4汎用整流用ダイオード 1N4007-B2\10
5トランジスター 2SC1815L-GR-T92-K2\51袋20個入り単価
6カーボン抵抗 200Ω2\11袋100本入り単価
7カーボン抵抗 1kΩ2\11袋100本入り単価
8カーボン抵抗 100kΩ2\11袋100本入り単価
9その他分割ロングピンソケット、配線など少々


5.動作確認

 乾電池とテスターを使ってリレーの動作を確認します。
 9V電池から基板中央のVccとGND端子に電源を供給します。別にシグナル用として、3Vの電池を準備して(1.5V電池2本を直列に接続)マイナス側をシグナル端子のGNDに接続します。この状態で、ミュート制御側リレー端子のCOMとNCが導通していること、電源制御側端子が導通していないことを、テスターの導通試験で確かめます。
 3V電池のプラス側をシグナル端子のPowerに接続すると、電源制御側端子が導通すること、Mute端子に接続するとミュート側のCOMとNC間が非導通になることを確認します。