1.氷ノ越登山口駐車場から仙谷登山口へ
道の駅で休憩をとりながら約3時間、9時5分に氷ノ越登山口そばの駐車場へ到着した。周辺は「わかさ氷ノ山キャンプ場」で、炊事棟やトイレなどが完備している。駐車場のすぐ下には、大勢でキャンプファイヤーができるファイヤーストームサークルがある(写真右)。
今回は二班に分かれて、氷ノ越コースと仙谷コースを登る。氷ノ越コースは以前に往復したことがあるので、仙谷を登るメンバーに加えていただいた。
コースと行程などの説明があり、軽い準備体操をしてスタートする。氷ノ越コース班はすぐ近くの登山口へ向かう。
仙谷コース班は、北にある仙谷登山口へとしばらくは舗装道歩きだ。ナナカマドが枝いっぱいに実をつけている。真っ赤な紅葉は見事だが、染まるのにまだ2~3週間は掛かるのだろうか。
一昨日までの梅雨のような天候からは抜け出したようだが、また明日から崩れる予報。9月下旬の山行予定が台風や雨で二回にわたって繰り延べになったが、今日の青空には感謝したい。
道辺にはアキノキリンソウとヤマボクチが開花している。
両側を杉に囲まれた林道を抜けて、駐車場から18分で仙谷登山口に到着した。
2.仙谷登山口~仙谷分岐(八合目)
仙谷コースは途中に鎖場があると聞いているので、やや緊張してのスタートだ。登り始めるとすぐ、右手にリフト乗り場が見えてくる。
リフトに沿って200mばかり登って行くと「氷ノ山山頂 2.3km」の道標。隣に「クマ注意」の看板が立つ。
枝打ちされた杉を踏んで進むと「仙谷コース 1/10」の標識に出会う。一合目である。仙谷登山口から15分が経過、ここまでカメラ操作中に何度かふらつく。睡眠不足でバランス感覚がおかしくなっているようで気を引き締める。
二合目を越えるとすぐ、見事なブナの巨木が現れた。
三合目の標識を越えると急に道が険しくなってくる。行く手に沢と小さな滝が見えている。
最初の鎖場が現れた。木段の登りを補助する短いもので特に問題はない。ただし、木段が湿っているので滑らぬよう注意しなければならない。登り切るとすぐに沢渡りが待っていて、足場を踏み外さないようにゆっくりと進む。
四合目あたりから苔の美しさに癒やされる。と言っても、気分的にほとんど余裕はないのだが・・・。
「氷ノ山山頂 1.2km <=> 仙谷登山口 1.3km」の道標。距離的にはほぼ半分まで来た。しかし道はいよいよ険しくなりそうな気配だ。後方から迫ってきた男性に道を譲る。今日初めて出会ったこの方は山岳監視員で、月に2~3回このルートを登っているそうだ。他のルートもあり、さらに那岐山など周辺の山々も監視範囲とのこと。道の安全が確保されているのもこの方たちの活動のおかげで、感謝! と思っていたら、その身の軽いこと。1~2分後には写真中央上寄りの点のように遙か先にいて、すぐに消えてしまった。
五合目を通過する。ストックを使うよりも両手でよじ登るほうが多くなる。
「何の花?」「分からないので写真に撮って後で調べます」。引き続き険しい岩場が待っている。で、この花は、ユキノシタ科のダイモンジソウ(大文字草)と思われます。
やや長めの最後の鎖場を登る。木々の間からわずかに開けた風景に見入るが、どこが見えているかは定かでない。
ちなみに、鎖場は他にも2~3カ所あったのだが、足場がややこしくて撮影しなかっただけ。またよじ登るシーンは、自分にかまうのが精一杯で撮影できなかった。仲間たちといっしょに登ればストックを手渡すなどして助け合えるが、単独行では手間取るかもしれない。今回はベテランのリーダーと一緒だったので安心できた。そしてこれはリーダーからのコメントでもあるのだが、「下りには使わないほうがよいルート」であると身をもって感じた次第。いやはや、スリルがありました。
ブナの木にキノコが貼り付いたように生えている。美味しそうなので撮影したが、キノコ類は無知ゆえ怖くて近づけない。そして仙谷分岐(八合目)に到着だ。氷ノ越コース班の面々は10分ばかり前に到着していて、ここから一緒に山頂を目指す。
3.仙谷分岐から山頂へ
すぐそばに「こしき岩」と呼ばれる展望の良さそうな岩山がある。山頂へはその裾を巻いて急な岩場を登って行く。爽やかな5月に登った前回と比べて、雨天後の今回は道がぬかるんでいたり岩場が滑りやすかったりと、まるで初めての道を歩いているようで油断ならない。
皆の足が止まった。素晴らしい風景が広がっている。
下方に小さく氷ノ山越の避難小屋が見えている。その向こうにこんもりと高いのは赤倉山。進行方向には山頂避難小屋が見えてきて、木道を登り切れば山頂だ。
4.氷ノ山山頂風景
周辺の山々からも際だって見える、しっかりとした避難小屋が建っている。中央にあるのは一等三角点。入口右側にはケルン状の山頂標識、右脇には須賀ノ宮神宮跡を示す石の祠が建てられている。
北東には先月歩いたハチ高原から鉢伏山の風景が広がる。鉢伏山山頂にズームで迫ると、山頂山小屋やリフト乗降場がはっきり見える。
緩やかな尾根が左へと延びて、高丸山から小代越へと連なる。小代越から尾根を南にたどると、赤倉山を経てこの氷ノ山山頂へと繋がるのだ。ズームのまま氷ノ越を眺めると避難小屋がはっきり見えている。
山頂では風で体温が奪われ寒く感じる。さっそく避難小屋に入って楽しいランチタイムが始まる。しかし、途中で買ったコンビニ弁当が口に合わなくてほとんど喉を通らない。食べ物の好き嫌いはほとんどないのだが、山歩きでこんな状態になると辛い。ガスバーナーの熱いお湯でつくったコーヒーをいただいて、元気を取り戻す。
山頂からのパノラマ。
〔北西方面〕
〔北東方面〕
5.氷ノ越コースを下山
1時間ばかりの豊かな時間が過ぎて、13時20分に下山を開始する。お腹も気分も豊かになって、静かに山を下りて行く。
仙谷分岐に着いて山頂を振り返る。山頂を南東に見ると避難小屋を真横から眺めることになり、まるで電波反射板のような形に見える。この先、前回は何の問題もなく歩いた同じ道で転倒してズボンを土まみれにする。岩場から下りたとたんにぬかるみで足を取られてしまった。
ブナの原生林を歩く。氷ノ山でもっとも心の安まる道だ。木道が終わったあたりが五合目になる。
氷ノ山越の避難小屋前に着いた。ここでベンチに腰を下ろして小休止する。
あまり手の加わってない杉の木が立つ。あらためて自然の不思議なバランスを観察する。10分少々休んで下山を再開。
すぐに四叉路で道標が立つ。そのまま進めば起点の駐車場がある若桜方面、逆に進むと親水公園の登山口へ出る。右折すると鉢伏山で、赤倉山から小代越と高丸山を経て鉢伏山に至る分岐点だ。
この道は、鳥取から若桜を経て氷ノ越の険しい峠を越え、但馬へ抜ける旧伊勢道である。江戸・明治時代には徒歩によるお伊勢参り(現在の福知山市の元伊勢)に利用されたそうである(写真右の解説板より)。ここには天保14年(1843年)につくられた地蔵が建っている。
「ツキノワグマ」の解説板だ。あろうことか、その解説板の支柱にはツキノワグマのものと見られる引っ掻き傷が付いている。これって本物?
一合目に着くと害獣避けの電気柵出入口が設置されている。昼間は電気が通っていないらしいが気味悪い。フックを外して通り抜け、通過後はフックをかけ直して再確認。
こうして全員無事に氷ノ越コース登山口に着き、駐車場へ帰着することができた。
この後、車で氷ノ山高原の宿「氷太くん」へ移動して温泉で汗を流す。帰りも同じHさんの車で語らいながらの移動、大変お世話になりました。またみんなで元気に出かけられますよう!