1.布引ロープウェイでハーブ園山頂駅へ
新幹線新神戸駅2Fから案内板にしたがって「神戸布引ロープウェイ山麓駅」へ移動する。乗り場は4Fにあり、新神戸駅からゆっくり歩いて10分足らずである。
しゃれた形のゴンドラが数珠つなぎになって待機している。出発すると眼下に神戸の街並みや港が広がり、静かに引き上げられる。まるで空中散歩の世界だ。この眺望と風景には相棒もご機嫌である。
山頂駅までの所要時間は10分。「風の丘中間駅」を通過して山頂駅が近づいてくる。わずかな時間だったが相棒も大満足のようで、よかった。山頂駅の標高は397mで下界が遠く霞んで見える。
ドイツの古城をモチーフにしたレストハウスがあり、城門に囲まれた広場にはテーブルと椅子が並ぶ。持ち込みの昼食でランチタイムにした。ちなみに持ち込んだのは、新幹線新神戸駅2Fの売店で買った「六甲山縦走弁当」。おにぎり2個とやや小食向きだが、おかずが多彩で実に旨かった。
2.ハーブ園山頂駅から市ヶ原へ
ハイキング道への出口はロープウェイ乗降口と反対方向、ハーブ園の最も奥にある。イノシシ対策の鉄の扉を開けて出ることができる。扉のロックを確認して山道を進む。
山道と階段を下りて行く。
7~8分進むと分岐の道標に出合う。直進すると摩耶山への道、ここは左折して市ヶ原へと向かう。
道の大半は明瞭であるが、草に覆われている部分もある。ヘビを踏まないように気をつけて進む。
ヒヨドリバナとヤブランが咲いている。
これはどちらもミズヒキだろうか。米粒のような小さい花がまばらに付いている。
ひたすら下りて行くと、やがて渓流のせせらぎが聞こえてくる。ハーブ園から30分少々で六甲全山縦走路に出合い、左折して桜茶屋方面に向かう。ここから市ヶ原を経て大龍寺までのルートは、以前に菊水山~鍋蓋山と摩耶山を歩いた際のお馴染みの道だ。
桜茶屋に着いた。以前に何度も訪れた場所だ。ベンチに腰を下ろして小休止する。ここには清潔なトイレがある。
桜茶屋の脇にある階段を下りると市ヶ原だ。標高およそ250mの川原を歩き、板橋を渡って広場に出る。広場の取りつきに道標があり、右の階段を進むと高尾山へ至る。「大竜寺・再度公園・鍋蓋山」の方向へと進む。
3.大龍寺へ向かう
山道を少し進むと道標があり、間もなく舗装道路に出る。
左手に、ダム作業用に使われたらしいアーチ型のトンネル入口が見える。草むらにはハギやツユクサが花をつけている。
15分ばかり進むと右側に再度公園への道標があるが、これは直進して大龍寺に向かう。
すぐ先の山の斜面が大きく崩落している。土嚢を積んでいるので通行には差し支えない。その先にも小さな土砂崩れがあった。
傾斜の増した舗装道を登って行くと、再度山ドライブウェイと出合う。神戸市バスの「大龍寺」バス停があるが、平日は運行していない。
4.大龍寺~再度山山頂
バス停から見える朱塗りの美しい山門(赤門)に向かうと、「別格本山 再度山大龍寺」の石柱が建つ。門を入って坂道を行く。
大龍寺下の広場に出ると上方に再度山が見えている。左手にある石段を登る。
仁王門に着いた。門をくぐると分岐になっていて、直進する石の階段と赤鳥居の並ぶ道に分かれている。
赤鳥居の坂を登ると鐘楼の脇に出た。
正面に本堂(大師堂)があり、左には毘沙門堂。
本堂の右には不動堂が建つ。奥の院へは、本堂の右を奥に進んで石段を登る。
数分で奥の院大師堂に着く。参拝して右の細道を進む。
「貴姫大御神」があり、山頂へはその先を左にとって登る。急坂を登るとハシゴがある。
ハシゴの先はさらに急になり足場が悪い。登るも下るもできなくなりそうな相棒が、「ここで待つ!」。しかしそれはムリなので、ストックを畳んで手を使って登るようアドバイス。「下りられなくなるよ~」と言いながら、ロープをつかみ岩に手をかけて天狗岩・亀の石まで辿り着く。
注連縄に飾られた天狗岩。磐座の右上端に見えるのが亀の石で、弘法大師自らが岩に刻んだものとされる。
山頂に着いて、先ほどとは打って変わって元気を取り戻した相棒。山頂には神戸市道路公社の基準点があるだけで、展望はない。さ~て、これからどう安全に下りるかが問題だ。
5.山頂を西へ下りて再度公園へ
周囲を眺めると西側に道が見える。登ったルートを下りようと思っていたので気づかなかったのだが、地図上にも西側へのルートが載っている。やはり急坂はあるが、ロープが設置されていて楽に移動できる。
下り立ったのは再度越(ふたたびごえ)と呼ばれる峠で、北に進むと再度公園(ふたたびこうえん)が近い。ルートを変更したことが幸いして、再度公園へ立ち寄ることになった。修法ヶ原池(しおがはらいけ)周辺に造られた公園は国の名勝にも指定されている。
持参の両肘つき椅子に身を預けて読書をする人、簡単な折りたたみ椅子に座って釣り竿を操る人、池の北の方には外国人の二人連れがベンチでくつろいでいる。我々もベンチに腰を下ろして湖面に映る風景に見入る。遠くの山は摩耶山だろうか、山頂に何本もの電波塔が見える。しばらく、時間が停止する。
6.大龍寺方面へ戻って猩々池へ
再度越のあたりで菊水山・鍋蓋山からの六甲全山縦走路に出合う。
大龍寺方面へと道を急ぐと、15分足らずで赤鳥居と仁王門の屋根が見えてきた。
大龍寺下の広場に出て、最初に登ってきた道とは反対方向の下り階段へ足を進め、急な木段を下りて行く。
続く急階段の下に民家の屋根が現れ、下りきると再度水掛地蔵が祀られていた。
鯰学舎(ねんがくしゃ)は知る人ぞ知る会席料理の店。その隣りは「はなれ家ガーデン」で、軽食やドリンクを楽しむことができる。
で、その下が有名な「はなれ家」。といっても、自分は今回の山行の下調べで初めて知ったのだが、ジャズ・トランペッターの片岡学さんがやっているカフェである。美味しい珈琲を飲みながら音楽談義を楽しんでもらおうと開いた店だそうで、外観を眺めただけで頷ける店である。ただし土日祝のみの営業なので、今日は見テルダケである。
200mばかり下ると「猩々池の碑」という説明板があり、その脇を進むと猩々池に出る。
東屋で休憩する。先の説明板によれば、この池は土地の位置が高くて水が乏しく、毎年のように水に困っていた下流の村人たちが造った貯水池だそうである。完成を祝って「猩々」の謡曲で宴に興をそえたことから、猩々池と命名されたと記されている。
7.ヴィーナスブリッジ~諏訪山公園を経て下山
大師道をさらに下って行くと滝に出合った。
石垣に神戸市治山事業で作成された「標高 257.1m」の石板が埋め込まれている。すぐ近くには諭鶴羽砂防ダム。
何度も川を渡り、砂防ダムを見ながら下りて行く。
「十四丁」の丁石と道標が並んでいる。右折すると燈籠茶屋と再度山荘がある。燈籠茶屋は「毎日登山者」やハイカーが立ち寄るスポットだが、あいにく本日木曜は定休日なので直進する。
間もなく別の道標があり、この位置から左に上がると再度山ドライブウェイに出られるらしい。これも直進して、右の谷側に民家を見ながら諏訪山公園方面へと歩く。
石垣が現れて間もなく、南側がぽっかり開けてベンチが設置されている。眩しい風景に見とれていると、同年代と思われる男性がやって来てベンチに腰を下ろした。この方と30分近く話し込み、風景を見ながらビルや場所のあれこれを教えていただく。ヴィーナスブリッジがすぐ近くなので、そこからの眺望をぜひ見ると良いと勧められる。
わざわざ同行してこの道標の場所まで送っていただく。「諏訪山展望台・ヴィーナスブリッジ」側へ登ると再度山ドライブウェイに飛び出した。そこに「展望ポイントすぐそこ」の道標があり、再び急坂を登りにかかる。あまり人が通らないのか、滑りやすい急坂に手を焼き息が上がる。着いたのは4~5人が立てるほどの狭い場所だが、たしかに展望は抜群である。
元に戻り、南の高台に登ると「諏訪山ビーナステラス・愛の鍵モニュメント」がある。
そこから下方に続く8の字形のループ橋がヴィーナスブリッジで、南を中心に東西に広がる神戸の街並みや神戸港、遠くは和歌山や淡路島方面を見渡すことができる。
素晴らしい風景を楽しんで諏訪山公園で小休止した後、薄暗くなった路を山本通まで下りる。
兵庫県庁から元町駅へと歩き、さらに三ノ宮まで歩いてサンチカの「味ののれん街」で落ち着く。2万5千歩を超えた歩数計に呆れながら、相棒と「かんぱ~い!」。