1.常山交流センターで準備体操と準備
岡山駅から伯備線新見行きで1時間足らず、備中高梁駅に到着した。新駅舎が完成して、駅周辺の様子もすっかり変わっている。駅の南側に移転した高梁バスセンターに移動して、備北バス「有漢インター」行きに乗り込む。
40分ほどで茶堂(ちゃどう)バス停に着いた。川を挟んで右上に県道49号が見えている。
バスの進行方向に進み、橋を渡って県道に上がって行く。
県道を右手にとると「左・広域農道」の道路標識があり、その先を左折する。角には、石の風車がついた有漢町の大きな案内板が立っている。
県道と見紛うほどの広域農道が延びている。ジワリと足に効いてくる傾斜の道を上って行くと、「← うかん常山公園、石の風ぐるま」「常山交流センター →」の標識が見えてきた。
右折して常山交流センターに向かい、準備体操などをしてスタートする。
2.王子権現宮を経て大平山登山口へ
さわやかな好天の休日、ツーリングのバイクが列を成してやって来る。ソロツーリングのバイクもチラホラ。ゴーゴーと迫る騒音に驚いていたら、岡山自動車道の跨道橋に差し掛かる。
しばらく歩くと右に分岐路があり、「大平山」の道標が現れた。ここは池側の分岐だろう。
地図で位置を確認して右を上がると、右手に池があり予想通りだ。すぐ近くの農家に高齢の女性を見つけて挨拶。この道のことを尋ねると、「うねうねウネウネしているから、下の道の方が近いョ。ここを行っても下道に出るけ~ど」と教えてくれる。「この道だと、下道に出合うまでどのくらい時間がかかるでしょうか?」「計ったことがないんでわからん!」、ごもっともです。車の少ない道を歩いてみたいから、とお礼を言って別れる。
平坦で長閑な道を行くと、舗装の上に栗がいくつも落下している。
両側がヒノキ林の道を進むと、遠くの山に電波塔が見えている。あれが目指す山頂に違いない。
右の視界をチラリと美しい模様が通り過ぎて、足が止まった。ヤマホトトギスが咲いている。
ヒヨドリバナの白い花。ヨウシュヤマゴボウが赤黒い実を付けている。
トンネルのような木立の門をくぐり抜けると、チョン・チョ~ン! 大平山の登場だ。
広域農道との合流点に来た。
道端にレッドクローバー、別名をムラサキツメクサやアカツメクサと呼ばれる丸いのが咲いている。その先には、小さな舟を吊り下げたようなツリフネソウの花。
緩やかに左へカーブしたあたり、左に細道がありその先に神社が見えてきた。
細道の坂を下りると素朴な拝殿があり、山行の無事を願って参拝する。どうやら神社の裏側から入り込んだようで、「王子権現宮」の扁額がかかる石鳥居からもとの道にもどる。
7~8分ばかりで道が左にカーブするあたりに「大平山」の道標があり、右に「大平山 山頂入口」の標識が立つ。ここが登山口だ。
3.山頂に向かって
ツーリングのバイクを見送って右折する。登山口は「大平の森」への入口でもある。なんと、ここから先もアスファルト舗装のようだ。
薄紫の花をつけるイヌヤマハッカ。しばらく登るとせせらぎの音が大きくなり、コンクリート管から水がほとばしる手洗い場がある。
緩やかな坂をひたすら登って行く。時折車の音がして身構える。路肩によって行き過ぎるのを待つ。こんな岩がむき出しになっていて、山の誕生の謎かけをされているように感じてしまう。
左の林が途切れると山頂が見えている。やや道幅が広くなった道辺に車が停まっている。遠くで人の声らしきものが聞こえてくる。一帯の左側にはビニールテープが張り巡らされているので、もしかすると松茸林なのかも知れない。
ところどころに道標が立っているので、道を間違える心配はない。その先に分岐があるが、道標にしたがって左上へと進んで行く。
岩に刻まれた「大平の森」の標石があり、左に道路が分岐している。ここは大平山山頂へと直進する。
山の地形は実に複雑である。山頂が近づいて穏やかな道を歩いているのだが、突然このような断層に出くわす。一見しっかり根を張っているような林だが、この部分の木々は、粘土質の山土を覆う岩の表層に貼りついているに過ぎないことがわかる。
ほとんどフラットになった道の左に、山頂からの斜面が見えてきた。桜と思われる木々がひと足早く紅葉している。
道端には、ハナニガナとタンポポを交配したようなコウゾリナ。似た花が多くて見分けにくいシラヤマギク。
初々しいススキの道を行くと、花とも実ともわからないのが生えていた。
小さな青紫の花を付けるのはヤマハッカだろうか。これはまた、先のシラヤマギクによく似たシロヨメナ。下の方から車の音がして、同年代の二人連れが車内から会釈して通り過ぎる。
かよう展望広場への分岐に着いた。山頂まで残すは500m、左折して少し傾斜した道を登って行く。
複雑な形状の電波塔が建っている。中国電力の大平無線中継所である。
山頂のすぐ手前で道が分岐している。右に取ると東側山腹に位置する天福寺へ下りる。ここは直進する。
ヒノキ林を過ぎると林道大平線の終点標識があり、その向こうが山頂だ。
4.大平山山頂風景
常山交流センターから約1時間50分で山頂に到着した。山頂には車が3~4台ほど駐車できそうな広場があり、先に追い越していった車が停まっている。お二人はご夫婦で、時々車で訪れているとのこと。山並みを眺めながら話していると、幼い子供二人を連れた若夫婦がやって来て停車。続いて農作業風の男性が軽トラックを乗りつけて、展望所はにぎやかになった。東側に2基の電波塔が建っている。
西側すぐ近くには、有漢富士と言われる権現山(600m)の美しい姿。少し遠のいて秋葉山(591m)、その右には以前に出かけた祇園山(550m)が見える。条件がよければ大山まで見えるようだ。
権現山の山頂にズームで迫ると電波塔が林立している。南の696mピークにも大きなアンテナが見える。これはNTTドコモのものらしい。
皆さんは、ほんの数分でそれぞれ車で下山して、山頂はすっかり静かになった。弁当を取り出して、山並みや黄金色の棚田、高速道路を往来する米粒ほどの車などを見ながら昼食をとる。
山頂の北面には沢山の桜が植樹されていて、いっせいに紅葉が始まっている。棚田にズームで寄ると、もう半分近くは刈り入れが終わっているようだ。
電波塔の付近に一等三角点があるらしいので、少し引き返した位置から回り込んで出かけてみた。しかし、電波塔はフェンスで囲まれ、その周囲には草が茂っていたので確認を断念。予定より早く12時10分に山頂を後にする。
5.常山公園に立ち寄り帰路に
往路では気づかなかったワレモコウとツリガネニンジンの姿。かよう展望広場まで足を伸ばすと、大和山など南東方向の眺望を得られるらしいのだが、今回はパスすることにした。
復路は下りの連続なのでとても楽なのだが、底の硬い靴が舗装路を打つので、足の裏や足首の負担がきつい。すぐに紅葉桜の下まで戻ってきた。
ガマズミが紅い実をつけている。桜並木の斜面の真下あたりに突然大きな岩が現れた。花崗岩の露出したもののように思われるのだが。
聞き耳を立てながらどんどん下りる。車の音で3~4回も立ち止まり、待機して対向車をやり過ごす。道中、歩く人にはまったく会わず、これだけの車と出合ったので、「大平山はマイカー登山の山」と勝手に断定する。
山頂の電波塔がしだいに遠のき、40分ほどで登山口まで下りてきた。
バス時間の調整を兼ねて「うかん常山公園」に立ち寄る。ちょうど野外ステージでライブ演奏をやっていて、大勢の聴衆が集い楽しんでいる。しばらく腰を下ろして楽しんだ。
ふり返ると石の風ぐるまがゆるゆる回り、遠くに大平山の山頂が見える。舗装路面を蹴りすぎたためか、少しばかり足の裏がジンジンして足首が痛いなぁ。
広域農道を県道まで下り、彼岸花と黄花コスモスの川原に沿ってバス停へと戻ってきた。隣接した一畑薬師如来にお賽銭を供え、御堂の縁側に腰を下ろしてバスを待つ。