1.地下鉄東西線・醍醐駅から醍醐寺へ
岡山から新幹線と新快速を乗り継ぎ、JR山科駅から地下鉄東西線・山科駅に乗り換えて醍醐駅へ向かう。今回は地下鉄をフルに利用するので、山科駅で地下鉄ワンデイパス(800円)を購入した。
醍醐駅から地表に出るとこんな立て看板が立っている。しかし「左の階段」がどこのことかわからない。
隣接しているアル・プラザで尋ねると、同所のエスカレーターで2階へ上がればよいとわかる。2階では、東に延びた道に大勢の人が歩いている。
人の流れに沿って進むと右に「京都市醍醐東市営住宅」の石碑があり、この道で間違いなし。きれいな舗装道に枝垂れ桜が美しい。この道路は最近できたものだろうか、前回とはまるで様子が変わっているのに驚かされる。
道なりに進んで突き当たりを左折する。
最初の角を右折して府道36号のガードをくぐると、醍醐寺の総門が見えてきた。
2.醍醐寺の伽藍/霊宝館/三宝院エリア
枝垂れ桜に彩られた総門の内は満開の桜と花見客があふれている。
国宝の三宝院唐門は桃山時代を代表する建築物。豊臣秀吉が催した「醍醐の花見」の翌年、慶長4年(1599)に造られたそうで、写真撮影する観光客が入れ替わり立ち替わり状態だ。
平安時代に造立された金剛力士像を両脇にかかえる仁王門。ここが伽藍エリアの入口になっていて拝観券を購入する。この季節は三宝院庭園・伽藍・霊宝館庭園の三箇所がセットになっていて1,500円也。
伽藍エリアへのアプローチは観光客の行列だ。少し進んだあたりの荒んだ風景は、平成30年の台風ですべての木がなぎ倒された跡地である。何とも荒涼とした風景だが、植樹による復興が計画されているそうだ。
清瀧宮は醍醐寺の総鎮守清瀧権現(せいりゅうごんげん)を祀る鎮守社。大きな枝垂れ桜が美しい。
清瀧権現を祀る拝殿と本殿。
国宝の五重塔。醍醐天皇の冥福を祈るため天暦5年(951)に建立されたもの。ここではヤマザクラが咲き誇っている。
醍醐寺の本尊である薬師如来坐像が安置されている金堂。これも国宝である。延長4年(926)に創建されたが焼失し、現在の建物は豊臣秀頼の時代・慶長5年(1600)に再建されたものである。
不動明王を中心に五体の明王を安置した不動堂。堂前には不動明王石仏が立ち護摩道場になっている。
真如三昧耶堂(しんにょさんまやどう)。法華三昧堂として天暦3年(949)に創建されたが焼失し、現在の堂は平成9年(1997)に建立されたもの。
日月門をくぐって伽藍エリアの東詰に移動すると枝垂れ桜の巨木がある。
この一帯には写真左の観音堂を中心にして弁天堂や鐘楼などが広がる。先の日月門とこれらの諸堂は、醍醐天皇一千年御忌を記念して昭和5年(1930)に寄進されたものである。音楽などの学芸や知識の女神である弁才天が祀られた弁天堂は、朱塗りの堂と橋が池面に映えて美しい。
仁王門へ戻って雨月茶屋周辺を散策する。昼食をとる人、弁当などを買い求める人で賑わっている。
霊宝館に着いた。塀の外の桜のトンネルを大勢の人が行き来している。
霊宝館エリアの拝観券売場には待ち行列ができている。すでに購入済みなので即入園、お先に失礼!
これが館内の様子。写真右は豊臣秀吉像の掛け軸の一部。霊宝館には本館、平成館、仏像棟があるが、大半が撮影禁止なので写真はこれだけ。国宝や重要文化財に指定された素晴らしい仏像彫刻や工芸品が展示されているが、写真で紹介できないのは残念!
枝垂れ桜を背景にご機嫌な相棒。ふわふわのハクサンオオテマリ(白山大手毬)が咲いている。
三宝院エリアも拝観券売場の混雑をよそに即入園する。大玄関から書院へ入れるが、ここは庭園を散策することに。
大玄関付近の枝垂れ桜と内側から観る唐門。
慶長3年(1598)に豊臣秀吉が「醍醐の花見」に際して自ら基本設計をしたとされる三宝院庭園は、国の特別史跡・特別名勝になっている。寝殿造りの表書院は、桃山時代の建造物で国宝に指定されている。
三宝院を出ると拝観券売場にはなお長蛇の列。醍醐寺の拝観と散策はこれで終わりとして随心院へ向かう。
3.随心院~勧修寺(かじゅうじ)
随心院へは醍醐寺三宝院エリアの外壁に沿って北へ進む。この道を直進すればよかったのだが、途中の交番で道を確認した際に、歩道がある安全な道路を行くように勧められたのが裏目に出て遠回りすることになった(マップに回り道は記載していない)。
醍醐寺から12分ほどで到着できるはずを、倍以上かけてたどり着く。石柱には「小町御苑 大本山 随心院」とある。随心院の所在地は山科区小野で、かつて小野氏の根拠地であったとされる。そのこともあって、随心院は小野小町ゆかりの寺として知られている。
境内に入ると右手に「小野小町の化粧井戸」の案内板がある。ここは小野小町の邸宅跡であり、この井戸の水を使って化粧をしていたそうである。
正面の薬医門は閉じられていたので、右側の「文塚・清瀧権現」の道標の方へ進む。
その一帯から文塚の近くまで、数多くの句碑や歌碑が立てられている。
残り火が こころの奥で 鈴を振る 安冨節子
舞ひ上げて 法悦に入る 春の宵 大森美智子
ふ~む、女性の句はなかなか艶っぽいですなぁ。
文塚は本堂の裏の竹林のあたりに建つ。小野小町の「百夜通い」で知られる深草少将(ふかくさのしょうしょう)をはじめとする、多くの貴公子から寄せられた千束の文が埋められているとされる。凄いね~! そこから南へ数十メートルのところに清瀧権現社がある。雨乞いの神様だが、一説には、真言密教の祖・空海を追いかけてきた善女龍王が祀られているとか。
総門から見える大玄関の方へ進むと、右手に小野小町の歌碑がある。
花の色は 移りにけりな いたづらに
我が身世にふる ながめせし間に
平安の女流歌人にして絶世の美女として知られる人物だが謎多き人でもある。
今日はこうしてにこやかに満開の桜を愛でているが、これは間もなく散っていく儚い美しさを愛おしんでいるのでもあり、それを思うと、この歌は切なく感じられるねぇ。
門跡宣旨800年の記念事業として本堂は改修工事中なので、ここで随心院をあとにする。随心院から北に100mほど歩いて信号を左折し、桜並木の山科川を渡って進むと勧修寺への道標がある。
勧修寺は醍醐天皇が生母の菩提を弔うために創建されたと伝えられている。門の手前の受付で拝観料400円を払って入門する。
入ると右の立派な宸殿(寝殿)を見て庭園へ移動する。
庭園は氷室池(ひむろいけ)を中心とする池庭と、書院南の平庭の二つの部分から成り立っていると解説板。季節外れで氷室池の蓮は枯れていて、睡蓮も花がないので早々と通り過ぎる。
花に囲まれて美しい姿の観音堂は昭和初期に再建されたもの。屋根には鳳凰が飾られている。反対方向には桜の庭園が広がり、背景に醍醐の山並み。
閑かな佇まいの本堂。近くに濃いピンクの桜が咲いているが種類は判らない。
観音堂の裏には修行中の空海の像が立つ。このあたりには桜とヤブツバキが競い合っている。
午後2時を回っているのに食事できそうな店が無くて、そのまま地下鉄東西線・小野駅へ移動する。
地下鉄に乗ると6分ほどで山科駅に到着する。ここで昼食をとることにするが適当な店を見つけるのに手間取り、1時間を費やしてしまう。JR山科駅方面の道路に「旧東海道(旧三条街道)」の解説板が設置されている。
4.琵琶湖疎水を歩く
道路を踏切が遮っている。向こうに見えるのは京阪山科駅で、踏切を渡ってすぐに右折する。右側に毘沙門堂への道標がある。
突き当たりの踏切にも毘沙門堂への道標があり、左折して直進する。
しばらく進むと安朱橋(あんしゅばし)に着く。直進すると毘沙門堂だが、時間の関係で毘沙門堂は諦めることにする。安朱橋の周辺には桜と菜の花の競演が繰り広げられていて、小休止方々しばらく観賞する。
15時45分、安朱橋から琵琶湖疎水ウォークを開始する。この水路の曲線美は最高だ。
橋を渡った向こう岸には京都府立洛東高等学校。遊歩道に設置されたベンチにはくつろぐ人たちの姿。
両岸が桜で飾られたカーブを過ぎると、絶品のヤマザクラが目を惹く。
次の飾り気の無いカーブを過ぎると、アセビ(馬酔木)が真っ白な花をつけている。
対岸にも遊歩道が現れて橋で結ばれている。
天智天皇陵分岐に到着だ。8分ほど下ると天智天皇陵なのだが、すでに16時過ぎなので、往復時間を考えて今回もパスする。
東山自然緑地ジョギングコースに進入する橋だ。対岸を歩いていた人が渡って来た。
日蓮宗大本山の本圀寺(ほんごくじ)参道に架かる正嫡橋(しょうちゃくばし)を通過する。この先は水路が直進していて第2隧道が近い。
第2隧道の手前にかかるアーチ橋。その上から第2隧道東口をカメラに収めて、ここから御陵駅へショートカットすることに。
この道標に従って御陵駅へと急ぐ。
5.第3隧道西口を確認してゴール
御陵駅からは1駅、たった2分で蹴上駅に到着する。ところが、地下鉄の出口を間違えてしまい、インクラインの「ねじりマンポ(鉄道の下をくぐるトンネル)」の反対側へ出てしまった。再度引き返して「1番出入口」から出る。その出口からは最短コースで「ねじりマンポ」を通ることができる。
インクラインは、斜面にレールを敷いて動力で台車を走らせ、船舶や荷物などを運ぶ装置である。そのインクラインの引き込み線路は桜と人が溢れかえっている。傾斜した線路を上って大神宮橋に到着する。
その位置から琵琶湖疎水の第3隧道西口を確認する。ここで一連の水路はいったんフィックスされている。
かつて、蹴上船溜りで船は荷物共々インクラインの台車に乗せられ、引き上げられてレール上を南禅寺船留りへと運ばれたのだ。今はレールの上を自由に歩くことができる。
これで今回の全ての旅程は終わりだ。かつて歩いた京都一周トレイルの「東山・31」の標識にタッチして、ゴールの蹴上駅へ戻る。ここから地下鉄東西線で烏丸御池(からすまおいけ)へ出て、地下鉄烏丸線で京都駅に帰る。